中野セントラルパークを“麻辣”がジャック!「四川フェス2022」報告

サブカルチャーの聖地・中野。文化系の人間が日夜集うこの街で、5月13日、14日の2日間、「四川料理フェス2022」が開催されました。

会場となったのは中野駅から徒歩3分の中野セントラルパーク。普段は芝生が広がる気持ちのいい公園は、この2日間に限っては四川の街角に変貌。強烈な麻辣の香りが充満し、多くの来場者が麻婆豆腐に舌鼓を打ちました。

青島ビールを片手に芝生でくつろいでいた4人組の大学生は、中国・成都からの留学生と日本人の友人グループ。郷里と変わらない味わいの麻婆豆腐を楽しみながら、梅雨入り前の休日を満喫していました。

また、愛犬を連れて訪れていた男性は、キャンピングチェアを持参。キョトンとする愛犬を尻目に麻婆豆腐を頬張り、「めっちゃ辛い!けど止まらない!ビールがうまい!」と汗を流していました。

思い思いの仕方で来場者が中国の空気を楽しんでいたこの「四川フェス2022」、2年ぶりの開催となった今年は「麻婆豆腐」がテーマでした。

個性的な名店が自慢の麻婆豆腐を提供し、本場の味を食べ比べることができたのです。日頃から中華料理を食べ歩いているという来訪者の女性は「日本人にも馴染みのある麻婆豆腐に絞ったことで、ハードルが下がったのかもしれませんね」と嬉しそう。

都内の中華料理店を日夜取材しているわれわれ“東京ディープチャイナ研究会”も、このイベントに参加しないわけにはいきません。実行委員会の好意で、ブースを開設させていただき、『攻略! 東京ディープチャイナ』を販売したり、研究会のチラシを配り、多くの方に手にとっていただきました。

また、代表の中村は会場内でのラジオ放送にも参加し、都内の「ガチ中華」事情について解説しました。

今回のフェスに出店したのは、老舗の名店から気鋭の個性派まで、計11店舗。そのすべてを取材することは残念ながら叶いませんでしたが、多くの店からそのこだわりや熱い気持ちを伺うことができました。研究会メンバーが辛さに汗を流し、たくさんのビールを飲み干し、(お腹を壊しながら?)食べ比べたガチンコレポート、ぜひ御覧ください。

香辣妹子(シャンラーメイズ)

四川出身オーナーが作り上げる、ごま油にこだわった香り高き一皿

ひときわ濃厚なテクスチャーが印象深い麻婆豆腐を提供していたのが、香辣妹子。ディープチャイナの聖地・友誼食府にも出店している人気店です。自らも四川人であるというオーナーが作る一皿は、やはり容赦ない痺れと辛みが特徴的ですが、最大の特徴は「香り」だとオーナーは語ります。

「うちの麻婆豆腐は四川の伝統的な作り方を踏襲しています。美味しさの秘訣は、辛さ・痺れに負けない香りを出すこと。秘伝のごま油と山椒の組み合わせで、最高の香りが出るんです。それから、うちの店はよだれ鶏も絶品ですよ」

陳家私菜

原価割れ上等! 売上no.1の「頂点麻婆豆腐」は7年熟成させた豆板醤がキモ

赤坂をはじめ都内に7店舗を構える名店「陳家私菜」は、3種類の麻婆豆腐を提供。なかでも圧倒的人気を誇ったのが、25年の歴史を持つという「頂点麻婆豆腐」です。社長の陳龐湧さんは「最高の麻婆豆腐を届けたいから、原価は気にしていない」と胸を張ります。

「うちの特徴は、すべてに妥協しないこと。『最高の食材』『最高の技術』『最高の香辛料』の三拍子がそろって初めて、最高の四川料理が提供できるのです。特に麻婆豆腐に欠かせない豆板醤は、7年間熟成させたこだわりの一品。「今日の価格だと原価割れですが、皆さんに最高の味を知ってもらえるなら気にしません(笑)」

山椒の苦味と強めの塩気が特徴の「重慶麻婆豆腐」も圧巻の味わいで、またたく間にビールが空になりました。

華美

青山椒と青唐辛子が作り上げる麻婆豆腐界のブルーインパルス

料理と装飾で中野セントラルパークを真っ赤に染め上げた四川フェスの中でひときわ異彩を放っていたのが、華美の青い麻婆豆腐。

「うちの麻婆豆腐は青山椒と青唐辛子を使っているから、結構辛いよ」というシェフの言葉通り、フレッシュな痺れと辛さが特徴的です。トッピングされた葉ニンニクの香りがさらに味にパンチを加えます。見た目に反して刺激的な一皿ですが、喉越しは滑らかであと引く旨味がたまりません。

175°DENO担担麺

担担麺専門店が織りなすシビれほとばしる麻婆

普段は担担麺専門店だという人気店「175°DENO担担麺」も、オリジナルの麻婆豆腐を携えて参戦。こちらの麻婆豆腐は自家製ラー油を使用することでコクと旨味を引き出しています。本場四川から買い付けた花椒は香り高く食をそそります。

「うちの麻婆豆腐には、私が辛いのが苦手だったので、そんな私でも食べられる自家製ラー油を使いました。麻婆豆腐はただ辛いのではなく、コクや香りそして痺れを大切にしてます。」と語るのは、今回の四川フェスでは珍しい日本人のオーナー。

麻婆豆腐発祥の地・成都にも行き、最高食材が集まる市場に赴き、花椒を仕入れる徹底したこだわりが光る、マニアックな仕上がりです。

四川小吃 雲辣坊

話題性ナンバーワン!「変態」麻婆豆腐の真面目なこだわり

衝撃的なネーミングが話題をさらったこちらの麻婆豆腐。なにが”変態”なのか気になるところですが…。

「『変態』というのは、中国ではよく使われる辛さの程度を表す言葉で、『激辛』という意味なんですよ(笑) この『変態麻婆豆腐』は辛味の強い四川料理を出すうちの店でも一番辛い料理です」と教えてくれたのは、オーナーの鈴木さん。

辛さへのこだわりは唐辛子を仕込む工程にも表れており、香り高い細挽き唐辛子をつくるために、生から手作業で刻んでいるそう。その名にそぐわず真面目に作られた、唐辛子の旨味を感じられる一皿でした。

品品香

味の要は自然発酵の自家製醬! 麻婆以外も大人気だった四川料理の名店

激戦区・池袋で20年間愛される「品品香」。麻婆豆腐や麻婆肉まんをはじめ、8品の料理を販売していました。オーナーが自信たっぷりに語ります。

「この麻婆豆腐は、自然発酵の自家製醬を使っているんです。他の店とは香りも旨味も全然違いますよ」

一口食べれば、自慢の自家製醬と香辛料の複雑な風味に圧倒されます。

「今回は提供できませんでしたが、池袋の店舗で出している烤魚(魚を香辛料と煮た四川料理)もお客さんから大好評なんです。今日は、肉まんや塩水鶏(塩味の茹で鶏)もよく売れています」(オーナー)

陳麻婆豆腐

中国の本店も認める味!160年の味を受け継ぐ「麻婆豆腐発祥の店」

「麻婆豆腐発祥の店」と書かれたのぼりが目を引くのは「陳麻婆豆腐」。日本に12店舗を構える、言わずと知れた有名店です。

「中国本店は今年で創業160年です。日本の店舗は中国の本店からも実力を認められているんですよ」と話すのは、成都出身の料理長。

「麻婆豆腐の味の決め手となっているのが、四川省成都市の郊外・郫県(ピーシェン)で作られる高級豆板醤。普通の豆板醤とは一味違うコクが出るのです」

また、具材のひき肉は豚ではなく牛を使用しており、豚には出せない肉の旨味が際立ちます。本場成都の由緒正しい麻婆豆腐を受け継ぐ、伝統を感じさせる一杯です。

味坊

ラムの名門が羊の旨味を120%引き出した、個性際立つ麻婆豆腐

羊肉串で有名な「味坊」も、得意のラム肉を使った麻婆豆腐で参戦。有名店だけあり、行列の長さは圧倒的でした。

「うちのラム肉は物がいいので、臭みとりなどは特になし。塩をふって火を入れるだけで、抜群の旨味が出るんだよ」と語るのは、鉄鍋を振るうシェフ。

醬とラー油の強い香りにラム肉のしっかりとした旨味が加わる、味坊にしか出せない一皿。定番の羊肉串とともに、ビールとの相性が抜群でした。


会場には酒類を提供するブースもあり、青島ビールや白酒のほか、ワインの販売も。イタリア産ワインを輸入しているというMONACAは、「中華料理にピッタリのワインを持ってきました。今日は暑いので白ワインがよく売れていますが、おすすめは赤のメルロー。四川料理の味に負けず、タンニンの苦味が口をさっぱりさせてくれます」と教えてくれました。実は、近年中国ではワインの製造が盛んになっているそう。

以上、活況に湧いた四川フェスの模様をお届けしました。あなたの“推し”麻婆豆腐をぜひ当研究会まで教えてください。

          (撮影/佐々木遼、取材アシスタント/山田一衣、陳星)

Writer
記事を書いてくれた人

佐々木遼

プロフィール

Amy松田さんからひとこと

四川フェス会場に一緒にいたAmy松田さんも以下の報告をしてくれました。

緑の味覇(ウェイパァー)って何?

四川フェスの会場でひときわ目を引いていた味覇(ウェイパァー)の黄緑色のトラック。中華食材販売会社の廣記商行さんのテントには見慣れない黄緑色のウェイパァーの缶が山積みでした。

味覇(ウェイパァー)といえば赤い缶がおなじみ。これさえあれば炒飯も野菜炒めも本格中華風になるという味の王様のペースト状中華調味料です。その色違いということで、会場では2度見する人や缶を手に取ってみる人がたくさんいました。

緑の味覇(ウェイパァー)の正体は、今年4月に発売されたばかりの「VEGAN味覇(ヴィーガン ウェイパァー)」。動物性の原料を一切使っていない味覇なのです。ちなみにヴィーガンとは卵や乳製品も食べない厳格な菜食主義のことで、このVEGAN味覇(ヴィーガン ウェイパァー)は長い歴史のある英国ヴィーガン協会からペースト調味料として世界で初めて認証を受けたのだそうです。

味覇(ウェイパァー)には、コクとうまみが濃い赤い缶と、化学調味料を使っていないプレミアム、青い缶の「海鮮味覇」がありますが、新発売の黄緑色の缶のVEGAN味覇(ヴィーガン ウェイパァー)は動物性原料不使用かつ化学調味料無添加のヘルシーな味覇というわけです。

私も一缶買ってきて味見をしました。

封を切ると、ごま油と植物系スパイスの香りがして、ずっとクンクンしていたい感じ。缶に書いてあるいちばん簡単なレシピ通り、VEGAN味覇(ヴィーガン ウェイパァー)小さじ1杯を200ccのお湯で溶いただけのスープは、菜食主義じゃなくてもラーメンのスープはこれだけでいいかなというくらいのおいしさでした。

廣記商行オフィシャルレシピ

https://koukishoko.co.jp/weipa/recipe.html

白酒ファンは結構多かった。

中国酒の日和商事さんのブースには白酒をはじめ、紹興酒や梅酒までさまざまなお酒がありました。話題の新感覚の白酒「江小白」はそのままはもちろん、割って飲むという新しい飲み方を提案しています。

ここでも「江小白」のジンジャーエール割りにレモンスライスをたっぷり入れたものを作っていました。炭酸割りは飲みやすくて私の周りでも大好評でした。

このブースの魅力は、普段はお値段的にもなかなか注文しにくい高級白酒も1杯から試せること。お値段も格安でしたが、さらにTwitterをフォローすると無料で1杯プレゼント!

ブースには行列が途切れませんでした。私もここを通るたびに白酒を飲まずにはすまない状態でしたが、会場のラジオ出演が終わったばかりの中村編集長と、『世界の中華料理図鑑』(学研)でお世話になっている碓井さんと3人で日和さんのブースの中に呼んでいただき(実は拉致……)。

超高級白酒の2台巨頭「五粮液」と「貴州茅台酒」を椀子そばならぬ椀子酒状態で継いでいただき、アハハ!おいしいねえ!とかなり飲んだところでまだ午後2時前でした。ご機嫌な酔っ払い3人はなんと四川フェスを取材していたCCTV(中国中央電視台)のお昼のニュース中継にもちらりと映ったらしいです。

「14億人に見られたな」と大笑いでした。たくさんの白酒を一度に試すチャンスはなかなかないので、貴重な経験でした。白酒はウォッカや焼酎と同じ蒸留酒なのでアルコール度数が高いものが多いため、中国でつぶされた経験を持つおじさまも少なくないでしょう。 でも、自分のペースで飲めばとてもおいしいものだし、蒸留酒はその場で酔っても二日酔いしにくく、体にも優しいお酒なんです。そして楽しくなる! 東京ディープチャイナでは日和商事さんと一緒に白酒を知ってもらうイベントを企画中です。お楽しみに。

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