昨年6月、当研究会が「攻略!東京ディープチャイナ」(産学社)を刊行してから1年、「ガチ中華」こと「ディープチャイナ」の世界が少しずつ世の中に知られるようになってきました。
研究会のメンバーも増え、みなさんが都内各地のみならず、横浜や川崎、大阪などのディープチャイナの店をレポートしてくださるようになり、当サイトのコンテンツもかなり充実してきました。各メンバーはそれぞれ得意なエリアやジャンルをお持ちの方も多く、これまで中国由来の料理から、海外各地のご当地中華にまで話題が広がり、その奥深さに驚く日々です。
こうしたみなさんが提供してくれる新しい知見や情報とともに、何人かのメンバーには執筆に参加していただき、このたび(5月26日)学研から地球の歩き方「旅の図鑑シリーズ」の一巻として「世界の中華料理図鑑」が刊行されました。
地球の歩き方のリリースによると、同書は「中国各地の代表的なメニューに加え、日本人にはこれまでほとんど知られていなかったものまで349品の料理を紹介。国内で本格中華料理を食べることができる選りすぐりのレストランもピックアップしました。さらに、日本の「中華丼」のような、中華料理が世界に伝播する過程で現地化されたことにより生み出された中華料理にも着目し、「世界の中華」として解説」しています。
いわば、昨年刊行した「東京ディープチャイナ」の進化発展形、2020年5月現在、われわれが発掘した日本と世界に存在する中華料理を総まとめした内容ともいえます。
単なる図鑑として読むだけではなく、リアルな「ガチ中華」案内書となっており、いま東京で、あるいは日本の各地で起きている「ディープチャイナ」の世界を訪ね、食べ歩きをするうえで役立つ内容になっていると思います。なぜなら、同書に写真入りで紹介される多くの料理は、そのまま「ガチ中華」の店でメニュー代わりに使えるからです。
さて、この本には読んでいただきたいポイントが大きく3つあります。
それは「中国本土の各地方料理」「海外のご当地中華」「(今日の中華料理事情を伝える)コラム群」です。
「中国本土の各地方料理」については、以下の分類で料理を紹介しています。
中国本土の各地方料理
- 四川料理 ― P.22
- 上海料理 ― P.44
- 北京料理 ― P.58
- 広東料理 ― P.68
- 湖南料理 ― P.76
- 福建料理 ― P.88
- 東北料理 ― P.100
- 雲南・貴州料理 ― P.114
- 地方料理(西北料理、延辺朝鮮族料理)― P.120
- 麺料理 ― P.126
- 小吃 ― P.142
四大料理(北京、上海、四川、広東)以外の地方料理が注目です。また驚くほど種類の多い麺料理や小吃(中国の軽食)も面白いですよ。なぜなら、ここで紹介した、まだあまり知られていない麺料理や小吃を食べられる店が都内に増えているからです。
また「グルメトピックス」というコーナーでは、料理以外の楽しい題材を扱っています。
グルメトピックス
- 中国茶の世界 ― P.40
- 中国の朝食グルメ ― P.54
- 中国の珍料理 ― P.74
- 中華スイーツの甘い誘惑 ― P.84
- 中国&台湾ビール ― P.96
- 中国&台湾 お酒とソフトドリンク ― p.98
- 中華調味料&スパイス ― P.110
- 中華菓子みやげ ― P.176
そして「海外のご当地中華」。中国由来の料理が海外に伝播されたのち、それぞれの土地で現地化され、生まれ変わった個性派グルメといえます。
海外のご当地中華
- 台湾料理 ― P.156
- 香港料理 ― P.166
- マカオ料理 ― P.178
- 韓国の中華 ― P.182
- 日本の中華 ― P.184
- シンガポール・マレーシアの中華 ― P.194
- タイの中華 ― P.198
- ベトナムの中華 ― P.200
- インドの中華 ― P.202
- アメリカ・カナダの中華 ― P.204
- オーストラリアの中華 ― P.206
- マダガスカルの中華 ― P.208
そこには、日本の中華も含まれます。たとえば、日本の町中華の定番のひとつ、天津丼は中国、そもそも天津にはないことをご存知ですか。
韓国にはチャンポンという麺料理がありますが、中国と違ってトウガラシを大量に入れるので、スープは真っ赤です。こういうのが現地化の代表例といえるでしょう。
なかでも面白いのがインド中華。見た目はまあまあ中華風ですが、味つけがチリソースベースとなり、まったくの別物。地元では人気だそうです。
3つめが「(現在の中華料理事情を伝える)コラム群」です。いくつか紹介します。
(現在の中華料理事情を伝える)コラム群
- 中国鉄道の食事の今昔 ― P.57
このコラムでは、1980年代から今日に至る鉄道食の変遷を手短に紹介しています。この写真は2000年代の中国の夜行寝台の食堂車の写真ですが、このようなプレートにいくつかの料理が定食のように提供されていました。2010年代以降は、高速鉄道化が急速に進み、食堂車は高速鉄道に敷設された簡易食堂を除くと、激減しています。
- 夜市で味わう全国各地の小吃 ― P.67
中国の夜市は圧巻です。とにかく巨大。あらゆる地方の小吃が食べられます。
- 便利なスマホ決済が普及 ― P.83
中国のキャッシュレス化のスピードは日本より早く、2010年代半ばには飲食店などでのスマホ決済が一般化していました。店の予約から注文、決済までできてしまうところが便利です。
- 少林寺で食べる精進料理 ― P.147
最近、ヴィーガン中華というジャンルを耳にすることがありますが、もともと中国には素菜(精進料理)の歴史があります。有名な少林寺でいただいた精進料理のレポートです。
ほかにも、巻頭のグラビア「中華料理のふるさとを訪ねる」(P.12)では、四川料理の味の決め手となる豆板醬の産地を訪ねています。
中国と世界各地でさまざまな中華料理に出合えるシーンが詰め込まれた一冊です。
ぜひご一読ください。
【追記】
おかげさまで「世界の中華料理図鑑」は、売れ行きが良好のようで、発売から1週間足らずで重版になりました。ありがとうございました。
(東京ディープチャイナ研究会)
W16 世界の中華料理図鑑
地球の歩き方編集室(編)
定価 1980円 (税込)
奥深すぎる中華料理を、中国と世界を歩き続けてきた地球の歩き方が徹底解説。本場中国の多彩な料理から、世界に広がった中華ルーツのメニューまで一挙紹介。現地の食文化を掘り下げる雑学や、取材先で知り得た旅コラム、国内のガチ中華レストラン情報も!