日中をまたにかけて活動している俳優の黒木真二さんは、ご自身のYouTubeチャンネルで、東京で食べられる本格中華を紹介しています。
その楽しい動画を紹介しつつ、黒木さんが話すディープな中華料理について、さらに突っ込んで解説しようというこの企画。その2回目です。
テーマは日本人に親しまれている餃子です。ところが、本場中国では、日本の常識は非常識のようなのです。
どういうことなのでしょうか?
まずは黒木さんの動画をご覧ください。
【餃子】中国の水餃子と日本の焼き餃子を食べ比べ!水餃子の本当の食べ方!
この動画で、開口一番、黒木さんはこう話します。
「日本で食べられている餃子は焼き餃子がほとんどですが、中国では基本的に水餃子です」
それはどういう意味なのか、彼は動画の中でわかりやすく解説しています。
動画の中では3種類の餃子が出てきます。
まず焼き餃子。中国語では「煎餃(ジエンジャオ)」あるいは「鍋貼(グオティエ)」です。
日本人にはおなじみの味です。アツアツを口に入れると、肉汁が油と一緒にあふれ出てきます。
黒木さんは言います。「醤油、お酢、ラー油のタレでいただきます。パリパリの皮にジューシーなお肉が美味!」
そして、水餃子。中国語では「水餃(シュイジャオ)」です。最近、日本の中華料理店でも食べられるところが増えてきたように思います。
「(水餃子の包み方は焼き餃子と違い)具を入れた皮をギュッとつまんで丸っこい形に包みます。タレはトウガラシと黒酢。皮はもっちり、肉はジューシー、しかも大きめ」
3つ目はエビ餃子。中国語では「蝦餃(シアジャオ)」。
ただし、これは餃子の本場の中国北方から遠く離れた広東料理の点心のひとつです。そして、調理法としては蒸し餃子。
「皮はもちもち、中はプリプリ」と黒木さん。
焼き餃子に長く親しんできた日本人には意外なことですが、中国では黒木さんの話すように水餃子が主流なのです。だから、都内のチャイニーズ中華の店では、日本人の口に合わせて焼き餃子も用意していますが、本当は水餃子を多くの日本人に食べてもらいたいと思っているのです。
では両者の違いは何か。ひとくちでいうと、皮の厚みです。日本の焼き餃子は、皮の薄さがポイント。中の具を包んで、肉汁がこぼれ出さないようにするのが皮のメインの役割で、食感はそれほど求められないというのか。要は、ご飯と一緒に食べられるような餃子です。
一方、水餃子は少し厚みのあるもちもちした皮が特徴です。そして、中国ではご飯とは一緒に食べません。それ自体が主食という位置づけだからですし、たいていの中国人は「このぷるぷるした皮がおいしいでしょう」と言うように、日本人が考えるようなご飯と一緒に食べるおかずというような世界観ではなく、まったく別物といっていいでしょう。
というのも、水餃子に入れる具材の種類は実に豊富で、中国の人たちは具材の好みで水餃子を選ぶのが常識です。
都内の中国食材店に行くと、冷凍水餃子が売られていますが、具材の中身の種類は豊富です。
並んでいるものをざっと見るだけでも、「白菜」「ニラ」「香菜(パクチー)」「セリ」「ナズナ」などの野菜と豚肉入りや、「三鮮」といってニラと炒りタマゴ、エビ入りの水餃子があります。
ところで、前述したように、水餃子は中国北方の料理ですが、都内の中華料理店の経営者は東北出身者が多いことが知られています(その理由については、あらためて解説する予定です)。
今回の動画を撮影した東京メトロ半蔵門線水天宮前の近くにある「餃子酒家 旭」の料理長の姜さんも中国遼寧省大連出身だそうです。
中国語堪能な黒木さんは、動画の中で姜さんにインタビューしています。それによると、中国では餃子を旧正月の春節によく食べること。東北料理の定番である酸菜(スアンツァイ)を餃子の具として使うこと。ダイコンやトマト、ピーマンなども具として使うことなどを話しています。
さらに、同じ東北地方でも北と南では食文化が違って、姜さんの出身の大連は海に面していることから、具材に魚や貝類などの水産物を使う海鮮餃子があることも話していました。
日本では信じられないほど多様な具材を使うのが、中国の水餃子なのです。こうなると、同じ餃子といっても、焼き餃子とはまったく異なる食の広がりが感じられるのではないでしょうか。
都内には、海鮮を使った多種多様な水餃子を出す店があります。その話はまた別の機会にお話しましょう。
店舗情報
餃子酒家 旭
東京都中央区日本橋箱崎町19-24
050-5488-8890
https://gcfy409.gorp.jp/