大阪、京都、東京にフランチャイズ出店中の「甘蘭牛肉拉麺」の新しさとは

今回ご紹介するのは、いまノリにノッている蘭州拉麺チェーンの「甘蘭牛肉拉麺」です。

蘭州拉麺チェーンの「甘蘭牛肉拉麺」

中国でラーメンといえば、いちばんポピュラーに食べられているのが蘭州拉麺でしょう。

蘭州拉麺は、甘粛省蘭州市のいわば特産品です。清朝の時代(1799年)に甘粛省の少数民族である東郷族の馬六七が、河南省懐慶府清化の陳維精から教えてもらった調理法を蘭州に持ち込んだものと伝えられています。

のちに陳和音、馬宝仔らが

  • 一清 透き通ったスープ
  • 二白 白い大根
  • 三緑 パクチーとニンニクの葉
  • 四赤 唐辛子
  • 五黄 黄金の麺

を蘭州拉麺の基本とし、標準化しました。

その後、200年以上の長い年月の間に、蘭州拉麺は世界的に有名になり、たくさんの国で食べられるようになりました。どこの国に行っても、基本は変わらないので、見た目はほぼ一緒です。

日本でいちばん最初に出店した蘭州拉麺は、中国で有名な老舗店の名を冠した東京神保町の「馬子禄」ですね。オープンしたのは2017年8月のことです。

私は上海での留学時代には、よくお昼は、蘭州拉麺を食べに行っていました。当時1元か2元で食べていた気がします(1杯15円から30円 激安。。。)。日本にできたと知って、わざわざ東京まで食べに行きました。

東京神保町の「馬子禄」
東京神保町の「馬子禄」の店内

甘蘭牛肉麺の創業者である張鉄林シェフは、甘肃省蘭州市の出身です。蘭州牛肉面の匠である王安全に弟子入りし、北京で甘蘭香湯麺店をオープンしました。現地では知らない人はいないほど有名店になりました。

あるとき、彼は繁星グループ代表取締役の谷町洋さんと知り合い、日本に甘蘭牛肉面を出すことを決めたそうです。

で、ここからがすごい展開。知り合った相手がよかった? 悪かった?

谷町社長は1984年山東省生まれの5人兄弟。3人のお姉さんと1人の妹さんがいるそうです。1984年生まれなのに5人も兄弟がいるのはなぜか。一人っ子政策は? もちろん、どんな田舎にいても一人っ子政策はあり、彼の家は貧しかったと本人は話しています。なにしろ大学に入るまではご飯粒を食べたことがなく、麺類で育ってきたそう(信じるか信じないかはあなた次第「信不信由你」)。

ですから彼にとって拉麺は主食ですので、日本のラーメンも大好きだそうです。でも、日本の牛肉はこんなにおいしいのに、なぜ牛肉、牛骨ダシのラーメンがないのか。豚骨や鳥ガラ、魚介や醤油味噌のラーメンは沢山あるのにと不思議に思ったのです。

彼は牛骨ダシの牛肉麺である蘭州拉麺を日本のラーメンの中のひとつのカテゴリーとして定着させたいと思い、このチェーンを始める決意をしたそうです(野望が大きいですね)。

2020年10月に1店舗目の大阪日本橋店をオープンしてから次々と店舗を出しています。

大阪の本場市にある「甘蘭牛肉拉麺」の一号店

以下は現在の出店状況です。

  • 大阪日本橋店(2020年11月)
  • 京都三条店(2021年7月)
  • 大阪難波エディオン店(2022年4月)
  • 京都四条河原町店(2022年3月)
  • 東京渋谷店(2022年8月)
  • 東京新宿西口店(2022年9月)
  • 東京十条銀座店(2022年10月)
  • 大阪道頓堀店(2022年12月)
  • 東京飯田橋店(2023年2月)
  • 大阪天王寺店(2023年4月1日)※オープン予定

「そんなにいいところにばかり出店して大丈夫?」と聞いたところ、「コロナの時しかこんないい場所は、見つからない。とりあえず前に進む。旅行客が帰ってくるまで耐えられるかわからない。でも進むしかない」とのこと。バイタリティーにあふれていますね。

自社で開発した発券機でメニューを選びお金を払います。現金やPayPayでも支払うことができます。

自社で開発した発券機
自社で開発した発券機の支払い画面

基本のメニューは、甘蘭牛肉面(手延べらーめん)890円

甘蘭牛肉面(手延べらーめん)

蘭州牛肉麺は10種類以上の漢方薬などを煮出したスープで、あっさりしています。何時間も煮込まれた牛肉、大根、パクチーと葉ニンニク、ラー油がのっています。

パクチーや葉ニンニクを抜いてもらうことも、メニューを決めるときに選べます。食べ方も途中でお酢をいれて、味の変化を楽しめます。

麺の種類も選べます(お店によって4種類だったり、7種類だったり)。

  • 毛细(極細麺)
  • 细(細麺)
  • 二细(中太麺)
  • 荞麦棱(三角麺)本当に三角の形をしているので面白い。
  • 韮叶(平麺)韮ぐらいの太さです。
  • 宽(太平の麺)

汁なし麺もあります。

甘蘭牛肉拉麺 甘蘭彩り混ぜ麺(拌面)と甘蘭牛肉面のメニュー
甘蘭彩り混ぜ麺(拌面)890円

冷たい麺と熱い麺が選べます。牛肉、人参、きゅうり、パクチーの具材と醤油ベースのたれがついています。ショウガが入っていて、日本人に合う味だと思います。

炒めそばもあります。

甘蘭炒面1290円
甘蘭炒面1290円

大阪日本橋店以外では今のところ提供していないようです。トマトベースの味がついていて、中国の新疆ウイグル料理のような味です。

小菜(小皿料理)もいろいろあります。

牛筋どて煮 390円 
牛筋どて煮 390円
中華風牛筋コラーゲン290円 
中華風牛筋コラーゲン290円

これも漢方が入ったもので、少し癖がありますが、私は好き。

なかでも私がいちばん好きなメニューは「セロリとピーナッツの中華風和え(110円)」。私は中国に留学してからセロリが食べられるようになりました。セロリを炒めたり、スープにしたりとレパートリーが広いですね。匂いのある野菜を多く使うところが中華らしい気がします。

それからサクサクじゃなくて、シャキシャキの「サクサクじゃが芋千切り和え(110円)」。 お酢とラー油がきいていておいしい「がりがり木耳(110円)」など、気軽に頼めます。

店舗によって違いますが、麺を延ばしているところを見ることもできます。

お店で麺を延ばしているところ

働いている方の中にはベトナム人も多いようです。入社前に拉麺の研修制度を取り入れています。カリキュラムにまじめに参加すると誰でも麺が打てるようになるそうです(現在スタッフ募集中!)。

中国の方の中には、日本に来てラーメンを食べるとスープが很咸(しょっぱい)と感じる人が多いそうです。でも、蘭州拉麺のスープは漢方が入っているので少し複雑な味がしますが、あっさりしていて、私はとても食べやすいと思います。このチェーンは店内も清潔なのが魅力です。

オーナーの谷町さんは、実は私のお友達です。京都在住の有名華僑のユーチューバーのひとり、五岳散人さん繋がりで7年ほど前に知り合いました。

彼は頭の回転が早すぎて私はついていけません。年上の私からみると少し生意気なところもありますが、本当は心が広く、こういう人が大老板になるんだろうなといつも思います。現在彼が経営する繁星株式会社には100人ぐらいの従業員がいて、不動産開発、販売、管理、ホテル経営等多角化経営をしています。

現在は蘭州拉麺事業に相当な力を入れているようです。今後の展開に期待しています。

このところ、東京や大阪には蘭州拉麺の店がたくさん出店していますが、各店それぞれ少しずつ味が違うので、ぜひ食べ比べてみてください。

店舗情報

甘蘭牛肉面 大阪日本橋店

大阪の本場市にある「甘蘭牛肉拉麺」の一号店

大阪市中央区高津1-10-20
06-6796-9727

営業時間 11時ー21時 年中無休

https://kanran.co.jp/

日本橋駅7番出口徒歩10分。谷町九丁目駅1番出口徒歩7分。お店で麺をのばしているところが見られます。スタッフは中国の方、ベトナムの方が多いです。日本語が話せる人と話せない人がいます。

Writer
記事を書いてくれた人

阳子 YANGZI

プロフィール

代表のひとこと

最近、蘭州拉麺の店が首都圏や関西で急増中ですね。こんなに増えて大丈夫かしら、そんなことも思ったりしますが、今回阳子さんが紹介してくれた甘蘭牛肉麺は「ガチ中華」の新しいシーンを生み出し始めているように思います。

今年1月中旬、池袋のサンシャインシティ文化会館で「居酒屋JAPAN2023」という展示会があったのですが、そこには甘蘭牛肉麺のフランチャイズを募集するブースがありました。

「居酒屋JAPAN2023」での甘蘭牛肉麺のフランチャイズ展開を呼びかけるブース

先日、甘蘭牛肉麺新宿西口店(新宿区西新宿7-1-4)を訪ねてみました。

甘蘭牛肉麺新宿西口店

阳子さんのいうとおり、この店の注文は、入口にある販売機を使いますが、カードはNGでもPayPayやウイチャットペイは使えるようです。麺のかたちやパクチーの有無、牛肉の枚数などをカスタマイズして注文します。

「撮影OK」と書かれた厨房で麺を一から延ばしている様子を撮らせてもらいました。注文してからその場で麺を延ばす作業が始まります。

基本メニューは890円ですが、牛肉を2枚にしたら690円でした。煮タマゴを入れるところが日本人の好みに合わせていますが、味は洗練され、食べやすかったです。「ガチ中華」が日本に現地化していく新しいプロセスをみるようで面白いと思います。

甘蘭牛肉麺新宿西口店のメニュー

阳子さんの友人でもある繁星株式会社の谷町洋さんにご自身のプロフィールや蘭州拉麺チェーンを立ち上げるまでの経緯をうかがいました。

谷町洋さんの来日から起業なさるまでの経緯を教えていただきたいです。日本の大学では何を勉強され、いつ頃どんな動機で起業されたのでしょう。

私は、2011年3月に発生した東日本大震災の後、多くの在日中国人が帰国する中、5月に来日しました。福岡の語学学校で日本語を学び、京都大学経営管理大学院に入学。在学期間中、彼は創業コンテストに参加し、準優勝を果たしました。その後、最初に貿易会社を起業し、起業家としての活動を始めました。

なぜ谷町さんは数ある「ガチ中華」の中からあえて蘭州拉麺を日本に出店しようと考えたのでしょうか。

日本でラーメン店を開くにあたり、蘭州拉麺を選んだ理由は2つあります。

1つ目は、日本では和牛が有名なのに、なぜ牛骨ラーメンがないのかと思ったことがきっかけです。豚骨ラーメンは有名ですが、牛骨ラーメンがないのであれば、自分で作ってしまおうと思いました。

 2つ目は、豚骨、醤油、魚介など、既に日本で存在する分野で競争しても意味がないと思ったからです。まだほとんど店舗のない牛骨ラーメンを提供することで、日本一になれると考え、中国でNo.1のラーメンを日本で展開することが大きな商機だと感じました。

甘蘭牛肉麺の創業者である張鉄林シェフは、甘肃省蘭州市の出身だそうですが、どういう経緯で日本に出店することになったのでしょうか。

甘蘭牛肉麺の創業者である張鉄林シェフは、甘肃省蘭州市の出身で、北京で「甘蘭香湯麵」という蘭州ラーメンの名店を20年以上にわたって経営していました。この店は人気が高く、多くの人々がその味を愛していましたが、中国の都市再開発の政策により閉店を余儀なくされました。

こうしたなか縁があり、張シェフは谷町洋さんと出会いました。私は閉店したままにするのは惜しいと考え、また中国No.1のラーメンを日本で展開することも大きな商機だと感じていました。

張シェフと谷町洋さんは何度も話し合いを重ね、最終的に日本で共同出店することを決意しました。

繁星株式会社


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