岳陽出身シェフの本格湖南料理、池袋「湘聚」で何を食べるべきか

岳陽出身シェフの本格湖南料理、池袋「湘聚」で何を食べるべきか

今年2月、西池袋にオープンしたのが、湖南料理店「湘聚 湖南菜館」です。池袋ではほとんど唯一の本格的な湖南料理店といえます。

湖南料理店「湘聚 湖南菜館」

湖南料理といえば、中国一辛い味つけといわれています。日本ではまだ数少ない湖南料理店ですが、これまで都内にあるいくつかの店を紹介してきました。

さらには、横浜中華街に湖南料理の店があることも報告されています。あの中華街に「ガチ中華」の店が現れているとは興味深い発見でした。

この横浜中華街の湖南料理店を紹介してくれたのは、ディープチャイナのライターで、食いしん坊日中カップルの川雲さんです。

ご主人の「川」さんは「中国留学時代に本場の中華に目覚めて以来、中国大陸各地、台湾、香港、マカオ、東南アジア、北米、ヨーロッパで中華料理(と現地料理)の「酸苦甘辛鹹」を食べ歩いてきた」だけあって、中華料理に詳しく、Facebookではガチ中華メニューのレシピをたくさん投稿している方です。

そこで、池袋の「湘聚」で何を注文すべきか。参考になるように「川」さんに湖南料理について解説していただきました(以下の内容は湖南出身の友人、盛波さんの教示によるところが大きいそうです)。

湖南料理の3つのエリア

湖南料理は“湘菜”と称され、中国の八大料理(浙菜、蘇菜、湘菜、川菜、閩菜、粤菜、徽菜、魯菜)の一つです。湖南料理は長い歴史を持ち、漢の時代から既に一つの料理体系が形成され、調理技術もかなり高いレベルに達していました。

湖南料理は主として「湘江流域(湘中南)」「洞庭湖地区(湘北)」「湖南省の西部山岳地区(湘西)」の3エリアの料理によって構成されます。

湘中南

湘江流域(湘中南)は、湘江流域の省中南部の盆地、丘陵区、一部山岳区で、主な地域は省都の長沙や湘潭、衡陽、株州、邵陽などです。稲作地帯で、豚肉や鶏肉、湘江流域の魚を多用。味付けが多彩で、酸辣、香辣を好みます。「毛氏紅焼肉」「黒臭豆腐」などが有名。香り、新鮮さ、酸味、辛さ、やわらかさを重視して作られています。

湘北

洞庭湖周辺の地域で、岳陽や常徳、益陽など。洞庭湖及び澧水、沅水、資水などの河川の新鮮な水産物、アヒル、豚肉、鶏肉も多用。蒸す、煮る、燻すなどの料理が得意。椒魚頭」が有名。

湘西

西部山岳地域。主な地域は張家界、懐化、湘西土家族苗族自治区。少数民族(苗族、侗族、土家族、瑶族)料理や山の珍味、燻製(腊肉,腊魚)、塩漬け肉(腌肉,腌魚)、漬物、乾物が多い。煙で肉を燻製にしたり、塩漬けにしたりします。味の特色といえば、塩辛くて香りが良く、一般的には酸味があります。「湘西腊肉」が有名。

これらの解説によると、湖南料理とひと口に言っても、3つのエリアごとに特色があることがわかります。その違いを認識しながら料理を注文するのは簡単なことではありませんが、実はこの店のオーナーシェフの許星さんは湖南省岳陽出身です。となると、湘北の料理が得意なのでは。そんなことを頭に入れて、注文してみるのは楽しいかもしれません。

オーナーシェフの許星さん

この店の注文はタッチパネル式です。とにかくいろんな料理があって、何を注文したらいいかわからないかもしれませんので、昨年東京ディープチャイナ研究会がつくった「世界の中華料理図鑑」の湖南料理のページなどを参考にしながら、実際にこの店でいただいた料理を紹介したいと思います。

メニューをみているだけで、辛さを想像してしまい、鼻の頭から汗が出てきます。発酵食品が多く使われているのも、湖南料理の特徴です。

長沙臭豆腐

長沙臭豆腐

台湾の夜市などでもおなじみの硫黄臭で知られる豆腐を発酵させた「臭豆腐」。本場は湖南省だといわれます。なかでもこの見た目もインパクトのある真っ黒な臭豆腐はこの店で食べられます。見ためは黒くてカリっとしていますが、中は白くてやわらかいです。

農家煎豆腐(湖南風油焼き豆腐)

農家煎豆腐(湖南風油焼き豆腐)

豚肉とピーマンなどの野菜を豆腐と一緒に炒めた農家風の料理です。中国の豆腐料理は実にうまいですね。

小炒黄肉(牛肉の湖南風炒め)

小炒黄肉(牛肉の湖南風炒め)

最も基本的な湖南料理で、牛肉とトウガラシなどを炒めて、パクチーを添えたもの。豚肉でつくるほうが一般的かも。「小炒」とつく料理はシンプルですが、ご飯がモリモリ食べたくなります。

酸豆角肉沫(ササゲの漬物とミンチ肉の炒め)

酸豆角はササゲを塩水に漬け、酸味が出るまで醗酵させたもの。見た目よりずっとガツンとくる辛さがあります。

黄喉炒腰花(ハツモトと豚マメ炒め)

黄喉炒腰花(ハツモトと豚マメ炒め)

湖南風ホルモン炒めで、この店では人気メニューだそう。ガチ中華でホルモンを食べると、どうしてこんなにやわらかいのでしょう。

ところで、湖南料理にも辛くない料理があるという話の流れで必ず出てくるのがこれ。

毛氏紅焼肉(湖南風豚の煮込み)

毛氏紅焼肉(湖南風豚の煮込み)

湖南省出身の毛沢東がこよなく愛した料理と言われます。やわらかくプルプルした豚肉が口の中でとろけるような食感です。

そして、岳陽出身の許さんの地元料理がこれ。

剁椒魚頭(魚の頭とトウガラシの蒸しもの)

「刴椒(ドゥオジャオ)」は湖南料理で最もポピュラーな調味料で、細かく刻んだトウガラシに塩やショウガ、白酒などを加えて発酵させたものです。四川料理や貴州料理でも使われますが、湖南のものには酸味があります。

この刴椒で白身魚の頭を蒸し焼きにしたもので、白身を大方食べたら、米線を入れて煮汁に付けて食べます。ご飯にかけてもおいしいです。

許さんによると「湖南省には3つの料理の体系があり、湘中南では醤香、岳陽を含む湘北では香辣、湘西では酸香が味の特徴といわれます。主に使われる食材も少し違います。食べ比べてもらえるとうれしい」とのこと。

ほかにもたくさんのメニューがあるので、ぜひ試してみてください。

デザートもいろいろあります。代表的なのは冰粉(ビンフェン)。

冰粉(ビンフェン)

もともと四川省発祥の夏のデザート。ナス科の植物の種からつくられた寒天のようなゼリーですが、フルーツやクコの実、餅など、いろいろ入っています。ゼリーのプルプルした食感がクセになります。

ゴマ団子のような定番デザートもあります。辛さで口の中がヒリヒリしたあとに食べる甘いデザートは癒しそのものです。

ゴマ団子

店内にはカーテンを仕切ることで個室として使えるこんな席もあります。なんというか不思議なセンスです。

カーテンを仕切ることで個室として使える席

ランチメニューをみると、この店はほぼ湖南料理の直球で、辛さとボリュームがハンパじゃなさそうです。いつかは挑戦してみたいものです。

ランチメニュー

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

湘聚 湖南菜館 

豊島区西池袋1-38-5
池袋西口セイコービル2F

03-5962-0668

営業時間 11:00~23:00(L.O.22:30)
無休

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