新宿東口すぐ近くに今年2月にオープンしたガチ重慶火鍋屋「天府火鍋巷子(てんふひなべしゃんず)」に取材に行ってまいりました。今回はオーナーの黄斌さんにもお店の誕生秘話を聞けるとのことで、ワクワクドキドキ。
駅から3分ほど歩くとあるこちらのお店、入った瞬間からそこは異世界、80-90年代にタイムスリップしたかのようなオシャレトロ空間。店の奥へ進むと地下に続く階段があり、そこを抜けると……。
現れたのは吹き抜けの巨大地下空間。なんと総床面積は750平方メートル、吹き抜け地下3フロア、まるで新宿の秘密の地下帝国に迷い込んでしまったかのよう!
店内はキャッチーでカラフルなデザインで埋め尽くされていて、テーマパークさながらの情報量。こんなところで食べられる火鍋はどんなのかしら……! 期待が高まります。
中華民国時代を彷彿とさせるテーブルや、夜の屋台のようなネオンが至るところに。火鍋の本場、重慶で流行しているレトロで写真映えするデザインを、オーナー自身が中国現地のデザイナーと共に1年間をかけて練りに練って作り上げた渾身の内装だそうです。
しかしこのお店、見た目がイケてるだけじゃない。火鍋のスープからタレ、具材の鮮度まで、こだわりがハンパじゃないんです。
本場の食材へのこだわり
まず驚いたのが、火鍋のスープへのこだわり。こちらの火鍋のスープのもとは辛味脂なのですが、その割材に、重慶の本場と同様「老鹰茶 lǎo yīng chá」というお茶を使用。スープにお茶っぽい味はそれほどせず、美味しくいただけます。
中国火鍋の草分け的存在、海底捞をはじめ、火鍋のスープはほとんどのお店が植物性の油を使っている中、こちらは【日本で唯一!】ちゃんと通関した中国の牛脂を使っているのだそう。
オーナー曰く「日本の牛脂でも試作してみたが、本物の味が出せなかったので、半年かけてなんとか中国の牛脂を通関できるようにした」とのこと。そのパッションに敬服いたします……!
多くのお店が植物性油脂を使っているのは、牛脂だと火鍋を食べ慣れていない人にとって刺激が強すぎてお腹が痛くなってしまうことがあるから、とのこと。こちらのお店では牛脂と植物油から選ぶことができますが、ガチ中華ファンとしては、お腹の調子を犠牲にしても本物の牛脂のスープを味わってみたくなってしまいますね(笑)
比べると、植物油の方がさらっとした軽めの味わいとのこと。
溢れるほど豊富なメニュー
続いて圧倒されたのが、食材の種類の多さ。
中国火鍋定番の丸まって積み上げられたラム肉やセンマイだけでなく、鴨の腸やマメ(豚の腎臓)など、このお店でしかお目にかかれない食材がたくさん。
肉類は一度も冷凍されていないものを提供しているので、鮮度も鮮味も抜群です。オーナーのイチオシだけで、テーブルが溢れそうなほど!
そして驚かされたのが、ドリンクやサイドメニューの豊富さと美味しさ!
本場のミルクティー、その名も「鸭屎香奶茶(ヤーシーシャンナイチャー)」やレモネード、お店で手作りのドリアンパイや糍粑(四川の揚げ餅)が食べられるので辛党も甘党も満足できること間違いなし。
オーナーの黄斌さんによれば、今後メニューが完成次第、ワンフロアをできたて中華スイーツ専門エリアとしてオープン予定だそう!
どれも甘すぎずとても美味、オープンしたら絶対このためだけに来ようと決意……!
ガチ中華店初心者にもおすすめ
今回取材に伺った際にまず思ったのが、「こんないい便利な場所にこんな綺麗なガチ中華のお店があるのか!」ということ。新宿東口から徒歩3分ほど、歌舞伎町の手前にあり、池袋や新大久保のいかにもディープそうなガチ中華店に尻込みしがちな方も、気軽に訪れやすいお店です。
よくある、ちょっと年季の入ったガチ中華店とはかけ離れたSNS映えするお店として、アクティビティの一種として訪れてみるのも◎
本場の火鍋、辛さが心配……という方も、スープの辛さは選べるのでご安心を!
「小小辛」を選べば、辛さを抑えながらも香り高い本場の火鍋スープを体験できます。それでも辛いなら、ミルクティー「鸭屎香奶茶」を一緒に頼むのがおすすめ。辛さをまろやかに和らげてくれます。
オーナーの思い
こちらのお店のオーナーである黄斌さんは、上海出身で来日20年、日本で今まで30店舗を超えるタイプの異なる外食店を経営し、他にも不動産や教育関連等、幅広い事業を営んでいる若干40歳の凄腕実業家。
今回の取材を通して、黄斌さんのこのお店に対する並々ならぬ質へのこだわりを言葉の端々から感じることができました。様々な業態を経て知見とリソースを蓄積してきた方だから実現できた、食材の品質・本場の味・内装どれをとっても一切妥協なしのお店。
慣れ親しんだ味を求める在日中国人でお店が溢れかえるのも時間の問題ですが、黄斌さんは「中国人コミュニティを越えてローカルの日本人に広まってこそ意味がある。ぜひこだわり抜いた本物の火鍋を味わいにきてほしい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
以上、本場の味が本場以上の安心品質で楽しめる、全方面にイケてる火鍋屋のご紹介でした。
お話を聞かせてくださったオーナーの黄斌さん、一緒に取材してくださった中村さん、ありがとうございました。皆さんもぜひ訪れてみてください!
(東京のちえ←上海)
店舗情報
天府火鍋巷子
新宿区新宿3-22-7
B1F-B2F
03-6380-6112
Writer
記事を書いてくれた人
東京のちえ🔚上海
代表からのひとこと
「東京のちえ←上海」さんとの出会いは、昨年の夏、まだ彼女が学生さんだった頃、高田馬場で開催された白酒をみんなでたらふく飲もうという、それはそれは大変な食事会に参加したときのことでした。
店にいたのは若いみなさんばかりで、中国に留学した経験のある人たちが多かったです。「東京で中華を食べる」の阿生さんもいました。最近の若い人はあまりお酒を飲まないといいますが、彼らはなかなかどうして……ぼくはとてもかないませんでした。
その後、しばらくして彼女は東京ディープチャイナのライターになってくれることになりました。留学体験もあるので、中国の事情に詳しいです。いま東京で起きていることを一緒に体験する新しい仲間がまた増えて、ぼくはうれしかったです。
その第1回目の取材ということで、今春オープンした噂の火鍋屋「天府火鍋巷子」に彼女の大学の友人2名と一緒に行きました。
この店のオーナーの黄斌さんは上海出身のイケメンオーナーで、実をいうと、都内でここ数年増殖している、いわゆる“ギラギラ系”「ガチ中華」の草分けである「撒椒」のオーナーでもあるのです。
これまでTDCでも新大久保店と渋谷店を取材しています。あと池袋や上野にもありますね。
ギラギラ系はとにかく店の内装がド派手で、ネオンがギラギラしています。それも日本的なセンスとは少しかけ離れていて、異文化モード、ガチガチといった感じで、まさに海外にいるような気分が味わえます。
メインの料理は、中国でずいぶん前から流行している白身魚の麻辣煮込みの「烤魚(カオユィ)」や中華風バーベキューの「焼烤(シャオカオ)」です。
黄斌さんは、いまの中国の最新外食トレンドをそのまま東京に持ち込んだ仕掛け人といえます。その彼が満を持してオープンさせたのが「天府火鍋巷子」でした。
この店の特徴は、なんといっても内装デザインのユニークさで、モデルにしているのは、重慶の洪崖洞にある複合観光施設だと思われます。
長江の支流のひとつの嘉陵江沿いの斜面に作られた「吊脚楼」と呼ばれる、重慶の伝統建築を利用したユニークな観光施設で、飲食店やお土産屋、劇場、ホテルがひしめいています。
あの麻辣連盟の中川正道さんが今年そこを訪ねたそうですが、これまたなんとド派手な世界ではありませんか。「千と千尋の神隠し」の世界に似ているのでは、なんて言われたこともあります。
確かに「天府火鍋巷子」の店内は、ギラギラネオンサインでみちみちています。
ただそれだけではありません。現在の洪崖洞がそうであるように、レトロチャイナな意匠がこれでもかというほど店内には盛り込まれています。
こういう飲食店またはフードコートのスタイルは、中国では「城市集市」と呼ばれています。2020年代の上海に生まれたものです。
興味深いことに、「城市集市」には、いまの30代くらいの中国人が幼少期を過ごした1990年代とともに、中華民国時代の1930年代や香港映画の世界など、さまざまな郷愁が表現された、まさにテーマパークのような空間です。
「天府火鍋巷子」は、それらすべてのミックスした世界。ありとあらゆる時代の懐かしいアイテムや意匠を一つの空間にできる限り詰め込んだというような混沌とした印象です。
たとえば、このような世界が広がっているのです。
こんな感じで、火鍋はもちろん、内装を見て回るだけでも面白過ぎる店です。ぜひ訪ねてみてください。