今回訪れた「アリヤ(阿麗婭)」は、歩いているとなんだかキョロキョロ、ソワソワしてしまう、池袋北口のトキワ通りから1本外れたビルの2階にある。(気になる方は歩いてみて)
青を基調とし、イスラム建築を彷彿とさせる看板がひと際目を引く。実はここ、街歩きツアーに参加してからずっと気になっていたものの、池袋に来るとどうしてもマーラータンや牛肉麺をサクッと食べがち&大皿料理が多い印象でひとりだとなかなかチャレンジできず。
今回は中村さんに加えて、友人2人が強力な助っ人として参加してくれたので、心置きなく色々な料理をたらふく食べられるということで念願叶ったり。
さて、ここで提供される料理は「ハラール中華」。
みなさまはご存じ? 簡単に言えばイスラム教徒(ムスリム)が食べることを許された中華のこと。店名にもなっている「清真(せいしん)」とは、「汚れのない」という意味で、「清真料理」とは、中国在住のイスラム教徒、回族やウイグル族などのムスリムが食べる料理(=ハラルフード)のことを指す。
詳しくは以下のレポートを読むと分かりやすいかも。
豚肉やそれ由来食材、一部魚介もNGであったり、イスラム教徒(ムスリム)はおおよそ無宗教の私たちには想像ができないほど食べ物の制限がある。
中華系ではないが、ムスリムと私の個人的な出会いは小学校低学年の頃、エジプト人の同級生がいたのだ。兄弟で同じ小学校に通っていて、よくお兄ちゃんが妹(私と同じクラス)を心配して教室を訪ねて来ていた。
特に給食の時間は神経質になっていた。なぜなら当時は特別給食がなく、豚肉などが入っていたらセルフで避けるような対応をしていた。私自身もその当時卵アレルギーだったので、同じように食べられないものは自分で避けるようにしており、今考えると全く別ものなのだが、好き嫌い関係なく食べられないものがあることになんとなくシンパシーを感じていた。
でも、私は卵がとっても食べてみたいけど、宗教上の理由だと禁じられたものを食べてみたいだなんて思いもしないのかな?と彼らの頭の中を覗き見してみたくなったりしたことをぼんやりと記憶している。
昔話はさておき、入店すべく、豪華なシャンデリア? 照らされた真っ青な階段を上っていく。よく青は食欲を減退させる色だと言われがちだが、階段下でメニューをみてしまった私たちの食欲には太刀打ちできまい。
何を食べようかと期待を膨らませながら入店すると、内装も青で統一され異国感が凄い。アラビアンナイト?
今回はおすすめの料理を見繕っていただいた。最初に登場したのは、「千枚とラムハチノス盛り合わせ」。
一口大にざく切りにされた真っ黒なラムのハチノスを濃厚なごまだれにつけていただく。弾力があるものの薄いので、食べ疲れせず口いっぱいに頬張ってむしゃむしゃと食べ続けてしまう前菜だ。
「アリヤ板春雨の胡麻たれ和え」は千切りにしたきゅうり、にんじんなどの野菜、干し豆腐、板春雨にごまだれをよく和えていただく。同じごまだれ味と言っても、こちらの方が黒酢などは入っているのかすっきりした味わい。例えればバンバンジーのような味がする。
衝撃だったのが、板春雨のもちもち感。きな粉かけたら普通にわらび餅だと錯覚するかも。シャキシャキの野菜との食感コントラストが楽しい。
個人的に中華料理の牛肉の使い方は、水煮のようにスパイスで味付けしたり、角煮のように濃く味付けして煮込んだり、細切りにして炒めるようなイメージだったが、今回いただいた「薄切り牛肉の炒め煮」はあっさりとした味付けで、イメージしていた牛肉料理たちのように重くなく、ペロリと完食できた。
スパイスがよく効いた「ラムのスペアリブ焼き」はとにかく柔らかい。
クミンなどのスパイスが塗り込まれており、そのまま焼いているのでかなり香ばしい。お好みでクミンと唐辛子の効いたスパイスやタレ(海底火鍋のきのこタレのような印象)をつけて食べる。
ラムの脂はくどくないので次々と食べ進めてしまう。そしてかなりビールが欲しくなる。ちなみに、ムスリム自体はアルコール禁止ではあるものの、ここのお店はアルコールを提供しているので、スペアリブとビールを存分に楽しめる。
「アリヤシュウマイ」は牛肉のシュウマイ。
個人的には今回いちばんのお気に入り。皮は肉まんと通常のシュウマイの間くらいでなかなか分厚く、ギュッと成形せず、軽く包まれてラフなビジュアル。牛肉のシュウマイ自体はじめて食べたのだが、牛の旨味が一口でここまで堪能できる料理はないかもしれない。ここに来たら是非注文して欲しい一品だ。
最後にいただいたのは「羊もつのスープ」。
羊のもつがゴロゴロと入っており、羊の旨味がガツンとくる。
メニューには中国語で、「このスープは、温感、冷気を分散する効果があり、定期的に飲むと気と血を補い、体を強化する効果がある。体を温め、栄養を与えるのに最適。手足の冷え、悪寒、貧血のある方に最適」というような内容が記載されていた。確かにこのスープは英気を養うタイプかも。
一通り食べ進めたところで、周りを見渡してみるとあまり日本人のグループはいなさそうだ。
日本語を話している方々に声をかけてみると、会社の送別会でムスリムのマレーシア人の方が食べられるようにここをチョイスしたそう。様々な国の方が所属する多国籍企業が増えている中で、そういった部分での需要もアリヤにはあるようだ。
また遼寧省、湖北省、湖南省、河北省(北京)出身の4人組にも話を聞いてみると、このお店は中国人コミュニティの中ではかなり有名だよと教えてくれた。中国も省によって、辛いものを好んだり、そうでなかったりするが、ここに来ればどんな人でも美味しいと感じる料理を食べることができるので重宝しているという。
メニューをよく見ると、ハラール中華とカテゴライズされる料理の他に、魚の頭の唐辛子煮込みや麻辣香鍋(マーラーシャングォ)のようなものもあるので、そういった部分でも便利なんだとか。
たらふく食べて大満足の私たち。たくさんのお料理を楽しませてもらったなあと思いメニューをみると、それらはほんの一部に過ぎない。お料理の種類が豊富で、何度来ても飽きずにリピートできそう。
気になった方は豪華絢爛な外装に怯えることなく、是非一歩踏み入れて欲しい。本格ハラール中華を思う存分楽しんで!
(Honoka)
店舗情報
アリヤ(阿麗婭)
豊島区西池袋1-43-3
日精ビル2F
Writer
記事を書いてくれた人
Honoka
代表からのひとこと
Honokaさんが取材してくれたように、この店は日本在住の中国語圏の人たちに強く支持されている店です。オープンは2018年1月28日。ハラール中華という新ジャンルを池袋でいち早く提供したところ、ムスリム以外の人たちをも虜にしたのでした。
オーナーの王爽さんは、遼寧省瀋陽出身のバイタリティある女性で、池袋にここだけでなく、ジャンルの異なるガチ中華の店を何軒も経営している人です。中華風バーべキューで有名な「太陽城」もそう。彼女は次々と人気店を送り出す凄腕のオーナーなんです。
ぼくもこの店は何度も足を運んだことがありますが、店内にはさまざまな国籍の人たちがいます。やはり多いのは、ウズベキスタンとかマレーシアとか、ムスリム圏の人たちのようです。Honokaさんも書いていましたが、ムスリムの人たちが日本で暮らすとき、食の問題は敏感です。
その点、中国には回族というムスリムの人たちが多く住んでいるので、ハラール食はかなり日常的な存在で、ムスリムでない一般の中国の人たちも好んで食べています。そういう普遍性がみられることは、いまの池袋にはよく似合っていると思います。