東大島の福州出身一家が営む「河童軒」の好奇心と期待を裏切らない味

緊急事態宣言も明けた10月のとある週末、会食のお誘いをいただき、江東区東大島にある「河童軒」を訪れました。

以前、東京ディープチャイナ研究会の Facebook ページhttps://www.facebook.com/groups/221804216373299 に河童軒の美味そうな料理を投稿されている方がいて興味を持っていたところに、実は研究会に学生として参加し、ライターをしている林正羽さんのご実家の店ということを聞き、近いうちに行ってみたいと思っていました。

お店を営む林さんご一家は福建省の福州市のご出身とのこと。私自身、先日、研究会で福建バーガーについての記事を書かせていただいたのですが、記事執筆にあたり福建省について調べ、私の住む横浜にある何軒かの福建料理店に足を運んでいたので、福建料理の奥深さに関心も深まっていたところでした。

緊急事態宣言解除で少人数とはいえ、お酒を楽しみながら会食ができる喜びも相まって、お誘いに二つ返事で参加させていただきました。

お店に入り、明るい店内の比較的入口から近い4人掛けのテーブルに案内され周りを見回すと、開店直後にも関わらず、既に店内はほぼ満席。棚に並んだ常連さんキープのボトルの数からも人気店であることがうかがえます。テーブルの上のメニューの他に、壁面にも美味しそうな料理名が並んでいました。

お店の方のアドバイスも得ながら、美味しいお酒と料理をいただきました。メニューの中のほんの一部ですが今回はその料理をご紹介します。

最初にオーダーしたのは、壁掛けのメニューから目に飛び込んできた「焼丸鳥の素揚げ」。

鳥の素揚げは福建省のみならず、中国の各地で広く食されている料理のようですね。パリっと揚がった鳥はビールにピッタリの食感。クリスピーな食感と適度な塩味の利いた美味しい一品ですが、甘さと酸味のあるソースをつけると違う風味が楽しめ、一皿で2度美味しいお料理でした。

次にいただいたのは「香酥山药(長芋の拍子木揚げ)」です。拍子木のようにまっすぐに揚げられた長芋で、中の芋のシャキッとした食感はしっかりと残っていて、衣の食感と塩味が相まって、こちらもビールに合う一品でした。

「虾炒茭白(マコモタケとエビの塩炒め)」は秋の旬の食材、マコモタケを使います。他にもレンコンや瓜、イカにエビなど、風味や食感が異なる様々な食材が使われていて、口に楽しい料理でした。

「虾米炒丝瓜(沖縄ヘチマと桜エビの炒め)」です。ヘチマはあまり口にした経験がないのですが、油で炒め熱が通った後もしっかりとした歯ごたえがあり美味しかったです。また、桜エビの醸し出す磯の風味が絶妙でした。お聞きしたところ、ヘチマと桜エビの組み合わせは非常に合うのだそうです。

「酥炸冬笋(冬タケノコ揚げ)」です。写真からはわかりにくいですが、揚げた後でもこれタケノコ?と思ってしまうぐらい柔らかい食感が新鮮でした。日本ではタケノコは春の食材ですが、気候が温暖な中国の南方では、冬にもタケノコを収穫するそうです。冬タケノコ、こんな食感が楽しめるのですね。

「炖排骨汤(昆布とスペアリブのスープ)」です。これからの寒い季節に嬉しいスープ。味付けは少量の塩と砂糖だけだそうですが、スペアリブやレンコン、昆布といった材料からの出汁がたっぷりとスープに出ていて、具材も柔らかで、スープの味が程よく染みていました。

一緒に河童軒を訪れた研究会の松田さんが、当日お店の方から教わったこのスープの秘伝のレシピを記事として近々ご紹介いただけるとのこと。お楽しみに。

さて、ビールを 2 杯ほどいただいた後、少し紹興酒が飲みたいなと思っていたところ、お店からお勧めいただいた黄酒「梦里水乡」は私の好みの味でした。

その澄んだ水質から銘酒の故郷としても知られる浙江省の鏡湖、そのほとりにある紹興県東方醸酒有限公司の十年ものの紹興酒とのこと。十年ものながら口当たりはスッキリ、それでいて味わいにはしっかりとした深みがあって、料理とも良く合いました。

実際に調理を担当されている、一心さん(正羽さんのお兄さん)にお話をお聞きしたのですが、河童軒の料理には旬の食材を積極的に取り入れ、食材そのものの味わいやうま味、食感を大切にしているとのこと。

確かにいただいた料理には冬タケノコやマコモダケなどの食感を活かし、また味つけにも繊細さを感じられるものが多く、私が福建バーガーの取材時に訪れた横浜の福建料理のお店の味付けとも一線を画していましたし、私の中にあった中華料理・福建料理のイメージを変え、拡げてくれるものでした。

海に面し比較的気候の温暖な福建省の食文化は、海に囲まれた日本のそれに通ずる一面もあるのかもしれません。

また、福建省ではスープは本当に身近で、一度の会席に複数回、種類の異なるスープが出されることもあるそうです。

日本ではなぜかあまり知られておらず、河童軒でもメニューにも載ってはいませんが、福建省のスープとしては世界的に有名な「仏跳牆」(仏陀がその美味しさから驚いて垣根を飛び越えた、として知られる面白い名前のスープです)も事前に予約すれば作っていただけるとのこと。
是非、食べてみたい!と思いました。

中国語圏の人たちが営んでいるディープ中華は、雰囲気も独特で言葉の不安からも少し敷居が高く感じてしまうお店が多いですが、河童軒は日本人のお客さんも多く(最近は約 9 割が日本人とのこと)、気軽に入りやすいお店です。

こんな料理が食べたい、といった要望も親身になって聞いてくれて、提供される料理も好奇心と期待を裏切らないものばかりでした。是非また、近いうちに訪れたいと思います。

店舗情報

河童軒

江東区大島9-3-12
03-5875-3844
https://www.instagram.com/kappaken_s16/

Writer
記事を書いてくれた人

青木 邦彦

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