日本の80年代ポップスが”シティ・ポップ”として世界中の若者に大人気となったり、バブル期の広告映像がvaporwaveとしてもてはやされたりと、レトロブームはワールドワイドのトレンドとして留まるところを知らない。
現代の若者にとって、“レトロな感じ”は“エモ”くて“チル”くて“かっこいい”のだ。
池袋西口に新たにオープンした「破店 Broken Shop Sweet and Spicy」は、そんな懐古趣味を前面に打ち出した、ディープチャイナのシティ・ポップのような店だ。プレオープン期間の「破店」に、一足先にお邪魔させてもらった。
西一番街とロマンス通りが交差する一角には「聚福楼」や「熊猫火鍋」といったディープチャイナの名店が数多く立ち並ぶが、そんなエリアにある池袋YSステージビルの3階に「破店」はオープンした。ビルの前には、開店を祝うたくさんの花束が飾られている。
エレベーターを降りると、お店を切り盛りする美人マネージャーの叶(イェ)さんが、大きなやかんを持って早速出迎えてくれた。聞くと、このやかんはお通しの羊のスープ(羊肉湯)だという。
「『破店』という店名は、ボロボロの店という意味ですが、うちの内装やスタッフの衣装は、戦後間もない頃の中国をイメージしているんです。最近の中国の若者は、そういう懐かしい雰囲気が大好きですからね。出しているメニューも、そんなレトロな味わいを、現代の若者に向けてアレンジしたものです」
中国のトレンドがふんだんに散りばめられた店内は、むき出しの配管やボロボロの壁といった雰囲気たっぷりの内装で、若者たちがスマホで写真を撮りながら思い思いに食事を楽しんでいる。フロアの中心にはカラオケが設置されており、歌まで楽しむことができる。
そんな「破店」の看板メニューは、ピリ辛のアサリのスープ「甜麻肥蛤(ティエンマーフェイハー)」。「甜」は甘い、「麻」は痺れる、そして「肥蛤」は大きなアサリという意味だ。
たくさんのスパイスや根菜類とともに大量の貝類が盛り付けられた深皿を直接火にかけていただく豪快な一品は、魚介の旨味がたっぷり染み出たスープで、日本人には馴染みのない「甜麻/ティエンマー」の斬新な味付けに驚かされる。揚げパン(炸馒头)をスープに浸して食べるのが、この店のスタイルだ。
叶さんいわく、この「甜麻」の味付けは、辛いものを好む中国東北地方出身の社長が「他の店にない味を出したい」と試行錯誤して作り上げたものなのだという。
「こういう貝類のスープは、もともとはおもに中国東北部の沿海地方で好まれている料理なんです。最近は、これを辛い味付けで食べるのが現地では流行っているのですが、新しいもの好きの社長が『より若者の印象に残る味付けにできないものか』と考えた結果、『麻』だけではなく『甜』の甘さを加えることを思いついたんです」
甜麻肥蛤と並んでメニューを彩るのは、やはり「若者に好まれるものを」という視点でセレクトされた、様々な地方料理だ。湖南料理でピータンとナスの青トウガラシ和えの「剁椒皮蛋擂茄子(ドゥオジャオピーダンレイチエズ)や、滝のようにやたらと長いジャガイモの千切りの「紅油瀑布土豆絲(ホンヨウプーブートゥドゥスー)」など、辛い物好きの東北地方出身の社長らしい品選びが光る。
売り切れにつき取材日にはいただくことができなかったが、ラムのスペアリブ焼きの「羊排(ヤンパイ)」も、甜麻肥蛤と並ぶ名物だという。
東北地方の豪快な肉料理が、現代風にアレンジされるとどのような味わいになるのか、気になって仕方がない。こちらは要予約とのことなので、訪れる際には忘れずに予約を入れたい。
「破店」の正式なオープン日は2月23日。ディープチャイナの最新トレンドを象徴する「甜麻」の味わいを、ぜひ体験してはどうだろう。
この店のオリジナルメニュー「甜麻海鮮鍋」は、ほかにもエビやザリガニ入りなどがあります。
同店のプロモーション動画はこちら。
店舗情報
破店
豊島区西池袋1-38-1 池袋YSステージビル3F
03-5904-8678