先日、秋葉原に味坊グループの9店舗目の「香福味坊」がオープンして話題になっていますが、同グループの個性あふれる各店のうち、どこに行こうかなと思うとき、酒飲みの人たちが足を運んでしまうのは、やはり御徒町の北京風居酒屋「老酒舗(ろうしゅほ)」ではないでしょうか。
ここはグループ4店舗目の店ですが、1号店の神田「味坊」と同様、JR高架下にあります。
モダンな香福味坊に比べると、店内は雑然としている感じですが、こちらは酒さえ飲めればいいので、うまいつまみさえあれば……。
そんな思いを存分に満足させてくれる店です。
「老酒舗」の特徴は、ほかの味坊グループの店に比べても、メニューの種類が多いこと。黒龍江省出身の梁さんが居酒屋としてオープンさせた店だけに、中国北方の小皿料理を中心にさまざまなメニューがあります。
「菜単(メニューの中国語)」を模した店の看板は梁さんの手づくりだそうですが、店内の壁に貼られた中国語表記の菜単も、北京風の居酒屋のイメージを演出してくれています。ただ中国語だけなので、何の料理かわからない人も多いと思います。
もちろん、テーブルの上に置かれた紙のメニューには、料理名に簡単な日本語が添えられていますし、続々と新しいメニューが導入されるこの店では、壁に日本語のメニュー名がたくさん貼り出されているので、まったくわからないわけではありません。
でも、常連さんでもないかぎり、日本語のメニュー名だけではどんな料理かよくわからないかもしれません。そこで、老酒舗の数あるメニューをなるべくたくさん写真付きで紹介したいと思います(あまりに多いので、すべてを網羅とはいかないことはご了承ください)。
老酒舗のメニューは大まかに「涼菜(冷菜)」「小吃(軽食や点心、水餃子など)」「炖菜(煮込み・鍋)」「炒菜(炒め物)」「炸菜(揚げ物)」「麺」「甜点(デザート)」「酒」に分かれます。前編は、酒飲みにはたまらない「涼菜」から「小吃」「炖菜」までを紹介しましょう。
涼菜(冷菜)
老虎菜(青トウガラシとパクチーのサラダ)
東北地方の涼菜を代表するメニューのひとつで、キュウリやパクチーのシャキシャキ感が楽しめますが、青トウガラシがガツンときます。
腐竹芹菜(湯葉セロリ)
湯葉のほんのりした甘さとセロリがよく合います。
重炝干絲(燻製干豆腐和え)
最近日本でもよく見かけるようになった中国の干豆腐の細切りで、これは濃い味つけです。
涼拌双耳(きくらげ黒酢)
黒いきくらげは中国吉林省にある長白山山麓でよく採れるので、東北地方のおみやげとして有名ですが、白いきくらげとの食感の違いが楽しめます。
白斬鶏(蒸し鶏塩葱味)
これはおなじみの蒸し鶏です。
ほかにもこんな涼菜があります。
涼拌土豆絲(ジャガイモの細切り冷菜)
これも東北料理の涼菜としてよくあるもので、ジャガイモのシャキシャキ感がたまりません。
涼拌拉皮(板春雨冷菜東北風)
「拉皮(ラーピー)」も東北料理でよく使われる食材で、ジャガイモや緑豆を素材とした平たい春雨で、キュウリやニンジンなどの生野菜と和えて酸味のあるゴマダレをかけて食べます。
涼菜には「醤卤(醤油煮込み)」もあります。酒のつまみとしてはサイコーのラインナップですね。
醤牛肉(醤油煮牛肉冷製)
牛肉の冷製です。
醤肘花(アキレス腱冷製)
食感が変わるアキレス腱の冷製です。
吞兵衛の玉手箱(日替わり冷製肉詰めボックス)
これは冷製肉やチャーシュー、ローストポークなどをアルミのお弁当箱に詰めたセットで、日によって中身が変わるそうです。このアルミのお弁当箱というのが、東北地方の農村っぽいレトロさを感じさせます。梁さんおすすめのメニューです。
「鴨脖(ヤーボー)」は、鴨の首(頭や爪、鎖骨、舌なども)をトウガラシや中華山椒の花椒(ホワジャオ)と一緒に煮込んで燻製にしたもので、中国の若者の好物です。老酒舗では、都内でも鴨脖専門店が数多く出店していることから、トレンドを採り入れているのだと思います。
鴨脖(ヤーボー)
鴨の首のぶつ切りです。
鴨頭(ヤートウ)
見た目のとおり、鴨の頭です。珍料理の一種ですが、意外にイケる味です。
小吃(軽食や点心、水餃子など)
次は「小吃」です。
東北料理といえば、まず「水餃子」。茹でて水切りして出すスタイルですが、厚みのある小麦の皮に包まれた具材は日本の餃子と違って新食感。具の中身は見えないので、まず東北水餃子の代表的な一品から。
酸菜猪肉水餃子(豚肉と発酵白菜入り)
「酸菜(サンツァイ)」と呼ばれる発酵白菜は東北料理の定番食材です。豚肉と酸菜の組み合わせもまさに定番。東北の味です。
ほかにも「素三鮮水餃子(タマゴ、ニラ、エビ入り)」や「牛肉萝卜水餃(牛肉とダイコン入り)」のようなユニークな具材の組み合わせが味わえます。
味坊グループでは、足立区六町にあるセントラルキッチンで点心をつくり、各店で提供しています。
蝦餃(エビ水餃子)
ぷりぷり食感がうれしいです。
広東風海鮮焼売
これもうまい。
ただし、老酒舗のスタッフの崔さんによると、最近大型店舗である秋葉原の香福味坊がオープンしたばかりで、どうしてもそちらに点心類を供給しないといけないため、老酒舗まで回ってこないことがあるそうで、そのときはごめんなさい、とのこと。崔さんは、目のくりっとした美人で、日本語も上手なので、メニューがわからないときは、彼女に尋ねるといいですよ。詳しく教えてくれます。
ほかにもこんな「小吃」があります。
韭菜饅頭(ニラ饅頭)
ニラがたっぷりのアツアツ饅頭です。
萝卜糕(大根餅)
これは台湾料理によくあるダイコン餅。
肉夹馍(ロウジャーモー)
ビャンビャン麺とともに有名になった西安名物の中華ハンバーガーで、新メニューだそうです。
あと写真はありませんが、「乾菜包子(干し野菜と豚肉まん)」のような東北風肉まんもあります。
前編の最後は、やはり東北料理ならではの「炖菜(煮込み・鍋)」です。
炖菜(煮込み・鍋)
酸菜白肉鍋(発酵白菜土鍋煮)
先ほど水餃子のところで書きましたが、東北料理といえば、この酸菜と豚肉の鍋です。心地よい酸菜の酸味が豚バラ肉と春雨などに溶け出し、体にもよさそうです。
ほかにも「咸菜白肉豆腐砂鍋(青菜の漬物と豚バラ肉の土鍋煮)」や「ハルビン土鍋煮」などがあります。
また豚肉ではなく牛肉入りの「牛肉麻婆(牛肉の麻婆豆腐)」は人気メニューだそうです。
ひとまず前編はこんなところで。そのときどきのおすすめメニューは黒板に手書きで書かれているので参考にしてくださいね。
※後編はこちら
しっかり食事になる御徒町「老酒舗」のガチ中華と酒を詳しく解説【後編】
https://deep-china.tokyo/restaurant-info/8795/
(東京ディープチャイナ研究会)
店舗情報
老酒舗
台東区上野5-10-12
03-6284-2694
https://www.ajibo.jp/okachimachi2.html