蒸気石鍋魚

上海で大人気の未知なる雲南名物「蒸気石鍋魚」を食べてみた

20年近く上海に住んでいても、私には食べたことがない中華料理はまだまだ無限にあります。

住んでいるといっても毎日外食はしないですし(私の場合は7割自炊)、友達との食事や飲み会は洋食やアジア系、和食が選択肢に入ってくることが多いからです。

今回ご紹介する「蒸気石鍋魚(ジェンチーシーグオユィー)」も、これまで食べたことがなかった料理のひとつ。

同行してくれた友人ふたりは、生粋の中国人キャリア女子(海外在住経験なし、言語は中国語と英語のみ)。
流行には詳しいほうですが、彼女たちもこの「蒸気石鍋魚」は食べたことがなかったそう。

上海市内では「蒸気石鍋魚」のチェーン店はどこも混み合っているようです。

人気の理由としては、旅好きの上海人にとって雲南省はいま圧倒的な人気があるということ。
食、ライフスタイル、文化など、さまざまな雲南カルチャーが上海人を魅了中です。

メインの食材が魚とキノコなのでヘルシーだということも、もうひとつの理由。上海では麻辣よりも素材の味系火鍋が人気だということは、このコラムでもたびたび紹介しているとおりです。

あとは、テーブルに置かれた珍しい石鍋と天井まで吹き上がりそうな蒸気が食事を盛り上げてくれること。特に子供連れやカップルは楽しめると思います。

今回訪れたのは、上海市内に9店舗を構える「哈尼石鍋魚(ハーニーシーグオユィー)」。
店名の「哈尼」は、雲南省に住む少数民族「ハニ族」を意味しています。

※ハニ族は、雲南省西南部の紅河の西側にある山間部を中心にミャンマー、ラオス、タイなどの周辺国にまたがって暮らす民族です。ハニ族の最大の祭りは「六月節」と呼ばれる陰暦6月24日から始まります。チベット・ビルマ語族に属し、この祭りも火の信仰と深い関係があります。

オープンは2015年。上海に数ある「蒸気石鍋魚」チェーンの代表的なお店で、女性オーナーが「雲南旅行時に出合った本場の味を上海に」との思いオープンさせたのだそう。

この日は金曜夜の雨の日でしたがほぼ満席でした。インテリアは和風、北欧、雲南ミックス。客層は20〜30代の会社帰り風がほとんどでした。

シックなインテリア×LEDモニター。上海の店舗内装の流行をこれでもかと取り入れた雰囲気

ところで、そもそも蒸気石鍋魚とは何なのでしょうか。

調べてみると、おおもとのルーツは四川料理のようで、その後、湖南省で「石鍋魚(金福魚)」として広まり、江南地方で清朝の康熙帝が食べ、気に入ったという説が有名だそうです。

が、ここから雲南省に直接つながる説が出てきません。なので、そのほかの情報を組み合わせて想像するしかないのですが、雲南省の瀘沽湖(魚の産地。この地の旅行情報を見ると、蒸気石鍋魚の店舗が多数紹介されています)周辺で「石鍋魚」のお店を誰かがやり始め、これを食べた旅行者が「哈尼石鍋魚」のオーナーのように「雲南名物」として都市部に紹介した、という感じなのではないかと思います。

特徴はテーブルに備え付けられた石鍋。
取り外しはできない形です。直径50cmほどで、テーブルの下には170度の蒸気が出る管がつながっています。開け閉めはスイッチではなくバルブハンドル。

席についた時点でもうどうしたらよいかわからない状態になりますが、店員さんにすべてお任せでOKです。

まずは「開鍋」。バルブを開けて蒸気を出し、鍋を高温殺菌します。

石鍋を高温殺菌。取り外しができないので、こういう洗い方になる

その後、スープと魚を投入。

魚はこの時点でまだ生きていてときどき動く。量り売りで、写真は2斤(1kg)のもの


今回、スープは「雲南菌菇鲜鍋(ユンナンジュングーシェングオ/雲南産キノコスープ)」、魚は「江団(ジャントゥアン/イノシシギギ)」をチョイス。
生簀から出してすぐのもので、鍋に入れた時点ではまだ生きています。

ほかにも「木瓜原味鮮鍋(パパイヤスープ)」「牛油果番茄鮮鍋(アボカドトマトスープ)」など、創作系が5〜6種類ありました。
魚はほかに鮰魚(ナマズの仲間)が選べます。

蓋をして蒸気で魚を蒸し煮にします。この間5分ほど。
店員さんがテーブルにタイマーを置いていきます。

蓋と枠を取り付けて一気に蒸す。本場雲南省では、藁で編んだタジン鍋のような形の蓋が主流だそう

すると一気に蒸気が上がり、こんな感じに。向かいに座っている友人が見えなくなってしまいます。

天井まで蒸気が吹き上がる

その間に店内に設置されたつけダレコーナーへ。内容は一般的な火鍋店と変わりません。同行した友人は「味、絶対薄いよね。だったら辛いタレにしたほうがいい」と、辛い系のものを大量に取っていました。

つけダレコーナー。私は普段の火鍋と同じく、山盛りの香菜にピーナッツダレとラー油をかけるスタイル

蒸し上がるとスープが乳白色に!

店員さんが魚を切り分け、スープとともに取り分けるところまでやってくれる


魚のタンパク質、脂質、コラーゲン、骨に含まれるレシチンなどが一気に高温になることで白濁するのだそう。
魚の旨味が凝縮されたスープでした。皮のままいっしょに煮込むライムが味を引き締めています。魚の身もふっくら。臭みもなく、淡水白身魚のおいしさに目覚めてしまうことうけあいです。

オレンジ色の具材は「金耳菌(ジンアールジュン/日本語名なし)」。どう考えてもキノコとは思えない、魚介類のようなプルプル感にびっくりしてしまいました。

ひととおり食べ終わったら、スープを足して普段の火鍋のように具材を追加します。
今回は牛肉、雲南省産の猴頭菇(ヤマブシタケ)、雲南式の手作り豆腐三種盛り。あとは野菜数種類をオーダー。

好きな具材を追加オーダーし、普段の火鍋タイムに突入
もともとのスープがおいしい火鍋には、スープがたっぷり染み込む猴頭菇がマスト
雲南式の手作り豆腐、黒豆の豆腐、ちくわぶのような食感の豆腐の3種盛り

普段の火鍋タイムという感じですが、時間が経つとスープに牛乳のような膜が張ってくるのがいつもと違う点。魚のコラーゲンがたっぷり出たスープなのだということがわかります。

「普通の火鍋にしようよ」「タイ料理でもいい」「酒が飲みたい」などとごね、最初はあまり乗り気ではなかった同行のふたりも、結果的には「まあ、健康的な食事だったと思う」と満足そうでした。

メニューを見てみると、ほかにも雲南料理ならではの昆虫メニューがあったり、今回追加できなかっためずらしいキノコがたくさんあったりと、また来たくなる要素も。

未知の料理には積極的に挑戦していくべきだと、あらためて思いました。

店舗情報

哈尼石鍋魚(長寧来福士店)

上海市長寧路1123号
長寧来福士広場東区4F

Writer
記事を書いてくれた人

萩原晶子

プロフィール

蒸気石鍋魚
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