上海に住む1990年代〜2000年代生まれの若い世代の間で、ここ1〜2年雲南ブームが続いています。
雲南省は、アウトドアやバックパッカー旅を楽しむ、雲南コーヒーの産地をめぐる(背景にカフェブーム)、異国的な少数民族文化に触れる、ボランティアに参加する(貧しい地域が多いため)など、ただ観光するだけでなく、意味のある旅ができる場所。
中国を代表する第6世代の映画監督・張楊も雲南省に移住し、雲南ドキュメンタリーを撮り続けています。おすすめは『猫猫果考試記(Mao Mao Cool)』(2018年)。ここ数年の街の雰囲気や住民たち、雲南省に集う人たちの様子がわかる映画です。

そんな、雲南省に夢中の上海人たちが通っているのが「小衆(大衆の対義語)」な滇菜(ディエンツァイ/雲南料理)のお店。ちょっと隠れた位置にあって、商業的な匂いがしない料理店です。
代表格は、大理市が拠点の自家農場系ダイニング「柴米多」(烏魯木斉中路318号烏中市集2階)。
雲南省出身の女子たちが経営する「Slurp&Sip」(延平路98号-11臨)や、ひとりで気軽に入れる「雲里」(長楽路1235号)、2021年秋オープンのリノベーションビル「沙美大楼」内の「滇Fu」(北京東路190号)なども人気です。

小衆な滇菜のお店の代表的メニューといえば、今回ご紹介する「銅鍋米線(トングオミーシェン)」。1人前サイズの銅鍋に入った米線です。
調べてみると、本場昆明市では100年間同じ銅鍋を使っている店、連日1時間待ちの店などもあり、昔からの定番メニューのよう。
上海でのブームの背景には、旅先で昆明人の地元ソウルフードに魅了された上海人が増加中なこと、映える小鍋入り、安さなどの理由があるようです。
まずは専門店「雲里」の銅鍋米線から。
「雲南臨滄銅鍋米線(ユンナンリンツァントングオミーシェン)」にミントの葉のトッピングでオーダーしてみました。独特な酸っぱ辛さはタイ料理よりもマイルド。酸菜とひき肉のスープが味に深みを出しています。

同じく「雲里」の「芝士銅鍋米線(ジーシートングオミーシェン)」です。なんとたっぷりのチーズ入り。チーズ系韓国料理的な、狙ったものかと思ったのですが、もともとあるものなのだそう。雲南省は、「乳餅(ルービン)」「乳扇(ルーシャン)」など、中国のなかでもめずらしいチーズ料理文化がある地域なのです。
ちなみに、先ほどのトッピングミントもおしゃれを狙ったものではなく、「雲南薄荷」としてよく料理に使われているものです。

こちらは、音楽やサブカル好きの若い子たちに常連が多い「Slurp&Sip」の「伝統小鍋米線(チュアントンシャオグオミーシェン)」。
いかにも手作りっぽい、田舎っぽい豆板醤の味が効いたスープにひき肉がたっぷり。昆明の街角食堂の味に近い、素朴な風味でした。


お供には雲南省産の大理ビールクラシック「風花雪月(フォンホアシュエユエ)」を。
ほんのりジャスミンが香る軽い飲み口で、辛口スープによく合います。このビールは、「淘宝」のカールスバーグ旗艦店でもトップページで紹介されている銘柄。人気があるのもうなづけるおいしさです。

自家農場を持ち、丑蔬果(チョウシューグオ/自然のままに育った、見た目の悪い野菜やくだもの)やカボチャ豚、トウガン豚(カボチャやトウガンを食べて育った豚)、自家製チーズ、自家製ビールなどにこだわる「柴米多」は、上海市内のとある野菜市場の2階にある隠れ家店。
店内では、現地で使われている銅製品なども販売されています。やっぱり、銅鍋自体がブームなのかも。


こちらのおすすめは、雲南省産のマツタケを使った「松茸鶏湯米線(ソンロンジータンミーシェン)」。
マツタケと鶏ガラ、烏骨鶏ガラのだしスープ入り米線です。スープだけをじっくり味わうと、化学調味料はもちろん、醤油や塩の味さえも一切しない! だしだけのうまみで勝負していることがわかります。一口に米線といっても、本当にいろいろな味わい方があるのだと思わせてくれるお店です。

お供にはこれ。昆明市のビールメーカー「九吋精酿」と「柴米多」が、大理市雲龍の塩を使って作ったビール「諾鄧井塩(ヌオデンジンイェン)」です。
しっかりビールなのに塩レモンソーダのようなさわやかさ。取材などで1日歩きまわった日に飲むと、体にしみわたるおいしさです。
絶対にみんなが好きな味なので、「今度の帰国時のお土産はこれ!」と温めて続けているのですが、まだまだ帰国できそうにありません……。

塩ビールブームも到来?
店舗情報
柴米多 | 上海市徐匯区烏魯木斉中路318号烏中市集2F |
Slurp&Sip | 上海市静安区延平路98号-11臨 |
雲里 | 上海市長寧区長楽路1235号 |
滇fu | 上海市黄浦区北京东路190号 沙美大楼1楼 |
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