火鍋の進化系?「串串香(ツァンツアンシャン)」を高田馬場で実食!

2019年の夏、四川省成都でいくつかの世界遺産を訪ねたのですが、旅程の半分を過ぎた頃、現地の知人から夕食の誘いを受けました。

日が暮れたのち、連れて行かれたのは、清代の町並みを再現した観光地「寛窄巷子(クアンジャーシャンズ)」の北に位置する奎星楼街(クイシンロウジエ)という通りでした。

長さ400mほどの狭い道ですが、両側にはレストランが並び、店内だけでなく、店の前の歩道まで簡易式テーブルが設置されており、多くの人でにぎわっていました。あとで調べてみると、奎星楼街は最近の成都で人気のフードストリートだということでした。

この通りのレストランはほとんどが火鍋屋で、「さすがは激辛料理の本場四川だな」と感心させられましたが、私たちが入店したのもそのひとつでした。

その店は「冷鍋串串(ロングオツァンツァン)」と呼ばれるタイプの火鍋店で、まず竹串に刺した具材を客が選び、店員に渡して鍋で煮てもらい、火が通ったら席に置かれた冷たいスープに入れてもらうスタイル。つけダレも自分でアレンジしていきます。

実はこれまで何度も四川省の本場の火鍋を食べる機会があったのですが、あまりの辛さに辟易として、好んで食べようとは思ってもいませんでした。

ところが、そこは庶民的な店で、客が自分の段取りで進めていくという気ままな雰囲気がそうさせたのか、スープが辛さ抑えめだったのか、はたまた冷たいスープにつけて食べるからなのかもしれませが、それまで食べた火鍋と比べると、とても食べやすく、知人との会話も弾みました。これは初めての経験といっていいかもしれません。中国でも辛い味つけで知られる四川、湖南、貴州各料理で使われるそれぞれのトウガラシの違いなどを教えてもらったことも、いい思い出です。

締めは「冰粉(ビンフェン)」というデザート。これは知人が他店で買ってきたものを店に持ち込んだのですが、店員は何も言わず、中国的なおおらかさに苦笑。

あとで調べてみると、「冷鍋串串」は「串串香(ツァンツアンシャン)」という火鍋の派生形とのこと。「串串香」は1980年代中期に登場した火鍋料理のこれも派生形で、人の多い市場や映画館の前などの屋台で提供されていたものです。1990年代以降、具材や味つけ、調理法などが全面的に改良され、爆発的に広がっていったといいます。

ところ変わって2020年の秋のこと、東京のチャイニーズ中華事情に詳しい友人から「高田馬場に新しい火鍋の店ができたので、行ってみないか」と誘われ、高田馬場に出かけました。10数年ぶりに駅を降りた高田馬場でしたが、驚かされたのが早稲田通りの変貌ぶり。通り沿いには中国語の看板を掲げた店がずらりと並んでいたのです。

チャイニーズ中華があふれる池袋の状況はある程度知っていたし、早稲田大学に中国人学生が増えていることも知っていたのですが、ここまで変わっていようとは!

連れて行かれたのは、「老四川名小吃 小郡肝串串香(シャオジュンガンツァンツァンシャン)」という「串串香」を提供する店。成都で食べた「冷鍋串串」の原型といえる「串串鍋」を東京で味わうことになるとは思ってもみませんでした。

「冷鍋串串」と「串串香」の違いを簡単にいうと、「串串香」がテーブルに置かれた熱々スープに具を入れて火を通して食べる点。具材選びやタレ作りを客がやるスタイルは共通で、特別難しい手間がかかるわけではありません。このときは3680円で食べ・飲み放題というお得なコースを注文しました。具がなくなったら自分たちで勝手に冷蔵庫まで補充に行き、酒がなくなったらスタッフに頼むだけ。楽しい食事でした。

高田馬場に行った際には、みなさんも立ち寄ってみてください。

(東京ディープチャイナ研究会・碓井正人)

店舗情報

老四川名小吃 小郡肝串串香

新宿区高田馬場1-6-15 荒井ビル 3F
03-6883-3667

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