地域ごとにさまざまな名物料理がある中国ですが、いまいち何が名物なのか、地元の人は何を食べているのかわからない地域というのもあります。
その代表格は、以前このコーナーでご紹介した景徳鎮市(江西省)。行くまでどんな料理があるのかわからない街でした。
今回は、そんなテーマの旅の第二弾。湖北省の武漢市です。
「でも、熱干麺(ルーガンミエン)は有名ですよね」という方もいるかもしれません。でもそれを知ったのは、武漢に滞在したことがない方であれば、皆さん2020年以降ではないでしょうか。熱干麺以外の武漢名物、思いつくでしょうか。私も、中国に長く住んでいるのに2019年まで熱干麺さえ知りませんでした。
ということで今回は、武漢で開催されたアートブックフェアの出展のために滞在した4日間、知り合った地元の出版関連の人、ライターさんなどのお勧めを参考にしながら武漢市内の話題店を食べ歩いてみることに。そこで印象に残った武漢名物をまとめてみました。
![漢口の駅舎。上海からは高速鉄道で約4時間](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-a.jpg)
まずご紹介するのは「藕湯」。レンコンと豚骨のスープです。
街を歩くと藕湯を煮込む鍋や甕が並んでいる様子が目に入るので、知識ゼロの状態で来ても「武漢名物はこれなのか」とわかるほど。
![湖北料理店の店の入り口には、厨房とは別にレンコンを煮込むためのこんなスペースがある](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-b.jpg)
何時間も煮込まれたレンコンはぐずぐずの食感で甘みたっぷり。繊維の糸を納豆みたいに箸に巻きながら食べます。豚骨は、軟骨や肉が箸でほろっとくずれるほどの柔らかさ。スープは白濁していてとろみがあります。
![旨味が全部溶け出した濃厚なスープ](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-c.jpg)
その後、「湖北省の特産はレンコンらしい」ということが徐々にわかってきました。
前菜の定番は「酸辣泡藕帯」。レンコンの苗(根っこ)の唐辛子入り酢漬けです。上海にもありますが、本場が武漢とは知りませんでした。上海に戻ってからスーパーでパック入りを買ったところ、産地はやはり湖北省になっていました。
![青唐辛子の辛さと甘酢の風味。シャキシャキの食感](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-d.jpg)
「干煸藕絲」はフライドポテトのレンコン版。
花椒で炒め揚げしているので、味は四川料理の辣子鶏系です。武漢で最初に入ったお店で食べたため、同行者と「味、四川料理だよね。これは武漢料理じゃないのかも……」と話したのですが、どの地元料理店にもあったので、現地で親しまれている料理なのでしょう。
![レンコンの縦細切り揚げ。家でも作りたいかも](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-e.jpg)
レンコン料理の最後は「蛋白焼藕元」。
刻んだレンコン入りの肉団子と、ゆで卵の白身だけを炒めた料理です。味付けはまろやか系醤油味。おいしかったですが、「なぜ白身だけなのか」「このゆで卵の黄身はどうしているのか」が気になってしまいました。
![調べてみると、江西料理の系統だそう。なぜ白身だけ使うのかは不明](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-f.jpg)
武漢初日、インスタで「武漢料理がわからない」というような投稿をしたところ、アジアの食に関するZineを作っている日本人の知人が「揚げたドーナツみたいなもの」と書き込んでくれました(第一声が熱干麺ではないところ、さすが)。
調べると「小面窩」という伝統的な点心で、いろいろな風味のものがあるようです。
私が食べたのは、上海でよく見る朝食の油条(揚げパン)をドーナツ状にしたようなプレーンタイプ。ピリ辛料理のお供にぴったりでした。
![プレーンのドーナツをさらに軽くした感じ。](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-g.jpg)
お店で聞いて初めて知った湖北省の名物は、中華の定番食材・ピータンでした。
ピータンの郷と呼ばれる鐘祥、トロトロ食感の「松花皮蛋」で有名な広水、有名な生産拠点がある天門など、湖北省各地にピータンを推す街があるとのこと。全部聞いたことがない地名だけど、行ってみたくなります。
定番料理は「焼椒皮蛋茄子」。
かなり辛い青唐辛子にピータンとナスを混ぜて食べる前菜で、お店の人がすりこぎで混ぜてくれます。ビールにぴったり。揚げ物、焼き物以外でビールに合うものといえば、枝豆よりピータンだと思うのですが。
![見た目では想像できない辛さ。でも、ビールには必ず必要](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-h.jpg)
最後は魚。武漢は長江のある街なので、長江で採れる武昌魚(和名はダントウボウ)が有名だそう。それを使った「清蒸武昌魚」が代表的な料理とのことでした。
が、ちょっといろいろ頼んでしまったあとで、食べきれないかも……と思いオーダーしたのが「涼拌脆皮魚」。魚の皮を黒酢系の甘口のタレと香菜で和えた前菜です。淡水魚の皮なので好き嫌い分かれそうですが、意外に臭みはゼロでおつまみにぴったりでした。
![キクラゲをさらに歯ごたえよくした感じ](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-i.jpg)
もちろん、熱干麺も食べました。現地の人は朝ご飯として食べるようで、専門店は朝5時半オープン、お昼過ぎ閉店というサイクル。座席は基本的に路上です。
ピリ辛のピーナッツだれと香菜、酸豆角の食感と風味をまぜて食べる麺で、量たっぷりで6元ほど。ハマってしまい、滞在中毎朝食べていました。
![器はホーロー。ピーナッツとゴマの香ばしさに香菜の風味がぴったり](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-j.jpg)
以上、武漢で食べたものをご紹介しましたが、個人的にいちばんおいしかったのは「藕湯」。あの濃厚なスープの味が忘れられず、上海市内で湖北料理店を探して行ってみたのですが、あの感動は得られませんでした……。
私のまわりの地方出身の友人たちは自炊派が多く、「上海の○○(その友人の出身地)料理店は全然おいしくない。だから自分で作るしか」と言う話をよく聞きます。
地方に行ってその地の料理を食べると、そんな友人たちの言うことは本当なんだな、と。武漢で「藕湯」を食べて、「もっといろいろな地域のものを現地で食べないとな」と改めて思わされました。
(萩原晶子)
店舗情報
※食べ歩いた中で、お勧めしたいと思ったお店は以下2店です。
老宅藕香
![老宅藕香](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-k.jpg)
武漢市武昌区民主路71号
10:30-21:30
来菜・湖北頭牌藕湯
![来菜・湖北頭牌藕湯](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2024/07/no320-l.jpg)
武漢市江漢区江漢路187号3階75号
11:00-20:30
Writer
記事を書いてくれた人
![](https://deep-china.tokyo/dc_wp/wp-content/uploads/2021/10/no69k.jpg)