中医師・村木のディープチャイナ漢方 Vol.8「夏バテ回復にとろろ」イメージ画像

中医師・村木のディープチャイナ漢方 Vol.8「夏バテ回復にとろろ」

皆さんこんにちは、中医師の村木です。

土用の時期と立秋が過ぎ、暦の上では秋になりましたが、暑い日が続いています。

※2022年の土用の入りは7月20日。立秋は8月7日。

今年は夏が来るのが早かったので、夏バテが来るのも早かった!という方も多かったのではないでしょうか。

実は村木もその一人。前回(7回)のイラストで、冷たいものを飲みすぎて足がだるくなっている絵を描きましたが、まさにそんな夏の始まりでした。そこで今回は、土用と夏バテ対策の話題をお届けしますね。

まず、土用の話から始めましょう。土用の丑の日、土用波、土用餅、梅の土用干しなど、土用という言葉は我々の生活になじんでいますが、意外と知らない「土用とは何か?」。

とあるところで土用について話をしておりましたら、それを聞いた人が「商業主義に乗せられやがって」とつぶやいていましたが、いえいえ、商業主義は最近の話。どうやらその人は「土用の丑の日の鰻」に踊らされていると思ったようです。

土用とは、立春、立夏、立秋、立冬の前日までの18日間をさします。気学などでは、旅行や引っ越し、土いじりなど「土」に関することはしてはいけないといわれていますが、一般にその時期は「季節の変わり目」なので、身体に気を付けてすごしましょう。そういう昔の人の知恵の一つとお考え下さい。

漢方を知るきほんのき その8のイラスト-1

夏の土用は暑さもピークに達する頃。夏バテで体調を崩しやすい時期なので、栄養価の高い鰻を食べるのも理にかなっているというわけです。

夏に鰻が売れないので平賀源内が「夏の健康に鰻を食べようキャンペーン」をおこなったのが、夏の土用の丑の日の鰻を食べることになったというのが定説ですが、実際には万葉集にも登場するほど古い話ですからねー。

平賀源内と土用の鰻の話


ウェザーニュースの記事 >

昔の人は我々以上に夏バテに気を付けていたのかもしれません。そこから病気になったら大変ですから。

でも、もう夏バテになっちゃってます~という声も多く聞くので、次に中医学から見た夏バテの回復に役立つ話をしましょう。

夏バテといっても原因はさまざま。現代では、エアコンを効かせすぎて冷えて体調が悪い方も増えていますが、基本的には暑さと湿気にやられて夏バテを引き起こします。

夏の暑さは、汗をかかせて水分を奪い、私たちの体力を消耗させます。運動した後をイメージしてみてください。へとへとでダルダルですよね。

そこに外から湿邪がやってくるので、身体の中に要らない水分がたまって身体が重くなります。

暑く寝苦しいことで体力の回復ができないし、湿気がたまると脾胃に影響して食欲不振や下痢など消化器系の不調、手足がだるくなるなどの症状が出てきます。

消化吸収を担当する脾は湿気が大嫌い、そして冷えるのも嫌いです。私たちのエネルギーや栄養の製造工場の稼働率を下げるもの、それは湿と冷え!

この二つを遠ざけることが元気の秘訣。しっかり食べてエネルギーを作り出し、それが全身に行き届いてこそ元気に過ごせるというものです故。

冷えて体調の悪い方、冷えると我々の身体の中でエネルギーや栄養を運んでいる道が狭くなって渋滞を起こす話を以前しましたね。

そうすると必要なエネルギーや栄養が全身に届かなくなってしまいます。冷房は必要に応じて使うべきな今年の夏ですが、バランスをとることも忘れずに。

漢方を知るきほんのき その8のイラスト-2

夏バテに鰻もよいですが、更に手軽にとなれば、おすすめは山芋つまり「とろろ」です。

中医学では「山薬」といって、エネルギー不足の時に摂るとよいとされている食材です。ねばねば成分が身体にいいといわれていますが、中医学では元気を補う生薬であり食材であるという認識です。

すりおろしてとろろご飯やとろろそばは一番簡単。それ以外は食べ方がないかと思いきや、お好み焼きに入れてもいいですし、刻んで梅和えにしてもいいですし、炒めても実は美味しいのです。

意外なところでは油で揚げて「大学芋」にすると、ほっくりして美味しいのだとか。アレルギーのある方以外は山芋を活用して夏バテ対策してみてくださいね。

なお、夏バテの回復には食べることが大事ではありますが、胃腸が弱っているときには無理に食べずに、胃腸を休ませることも養生の一環です。無理しないことも養生です。

さて、今回のズボラ薬膳は「山芋ときゅうりの梅和え」です。

材料


材料はまずこれ。山芋ときゅうりとみょうがです。

山芋ときゅうりとみょうが

それから、友達が作ってくれた昔ながらのしょっぱくて酸っぱい梅干し。お好みで甘めのものでも可。

ながらのしょっぱくて酸っぱい梅干し

作り方


きゅうりとみょうがは千切りに。


いつもはきゅうりの食べ応えに期待して乱切りにしますが、今日は私も夏バテしていますのでなるべく食べやすく。

きゅうりの千切り

山芋は、小さく切ってビニール袋に入れて、硬いもので叩きます。

山芋を入れたビニール袋
山芋を硬いもので叩く

梅干しは種を取ってまな板で叩き、ペースト状に。


山芋、きゅうり、みょうがを混ぜたところに梅干しペーストを混ぜてできあがり。

山芋、きゅうり、みょうがを混ぜる
梅干しペーストを混ぜる

大葉を載せてみました。そうめんにこれを載せてもいいかも。

それぞれの食材の効能は以下のとおりです。

きゅうり「甘」「涼」「帰経心脾」。身体の熱と湿をとるはたらきがあるので、ほてりやむくみに。
みょうが「辛」「温」「帰経肺腎」。身体を温め、発汗や血行促進のはたらきがある。
山芋「甘」「平」「帰経脾肺腎」。滋養強壮に良い食材として有名、老化防止や慢性の下痢などに。
紫蘇の葉「辛」「温」「帰経脾肺」。発汗を促し、冷えをとる、また、胃腸の調子を整えるはたらきもある。
「酸」「平」「帰経肝脾肺」。のどの渇きを潤し、汗のかきすぎに。

※漢方では「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹」は「五味」と呼ばれ、各食材が持つ5つの「はたらき」を意味しています。「涼」「温」「平」は、その食材が身体を温める食材か冷やすかをさします。詳しくはこちら。

次回もどうぞお楽しみに~!

Writer
記事を書いてくれた人

村木亜ゆみ

プロフィール

中医師・村木のディープチャイナ漢方 Vol.8「夏バテ回復にとろろ」イメージ画像
最新情報をチェックしよう!