今回は「家飲み支援」企画。お家で本格チャイナ飲みができる食材と蒸留酒を紹介します。
とりあえずビール、じゃなくて種!?
チャイニーズ中華の店で誰かと飲むとき、「とりあえずこれ食べてて」と出てくるのが、軽く炒めて塩を振ったピーナッツです。これはお通しとして出てくるのですが、油でツルツルしたピーナッツを長い箸でつまむもどかしさを経験した人は多いかも。
では、中国のお宅で「ちょっとこれでもつまんでて」と出されるのは? それが種モノです。
ヒマワリの種やウリ類の種をゆでて味つけしてローストしたものが袋入りになっていて、中国ではスーパーマーケットはもちろん、駅や観光地の売店でも売られています。なかでもポピュラーなのはヒマワリの種。
そう、ハム太郎も大好きな、日本ではハムスターの餌としておなじみのものですが、中華食材のヒマワリの種は加熱済みで塩味、中華スパイス味、ココナッツフレーバー、キャラメル味……と種類も豊富です。実はヒマワリの種は抗酸化作用やメタボ予防に役立つ栄養が豊富で、人間の身体にもいいんです。お酒のお供はもちろん、お茶うけにもおすすめです。
ここで問題は、どうやって食べるのか。一粒ずつ殻を剥いて中身を取り出すのでは、揚げピーナッツをプラスチック箸でつまむ以上のイライラでしょう。
これにはコツがあります。私は20年近く前、初めて太極拳の修行のために中国に行ったとき、北京から河北省の海辺の避暑地の町まで行く特急列車の中で、連れて行ってくださった太極拳の先生にヒマワリの種を片手で剥いて次々に食べる特訓を受けました。
当時はまだ高速鉄道は走っていなくて、鉄の塊のようなごつい列車でした。窓には竹の柄のレースのカーテンがかかっていて、狭い通路を車内販売のワゴンを押した車掌さんがいろいろ売りにやってきました。4人掛けのボックス席には跳ね上げ式の小さなテーブルがあって、ナッツなどのスナックを入れるアルミのお盆が置いてある……、そんな時代でした。ちなみに現代の高速鉄道は車内が賑やかな以外はほとんど日本の新幹線のようです。
さて、具体的な食べ方には、いろいろな説があります。私が習ったのは、種の太い方を親指と人差し指でつまんで、殻を歯で縦に割り、種の先が開いたと同時に指でひねると殻が開いて真ん中に食べる仁の部分が出てくる。これを舌に張りつけて取るという方法です。
殻ごと数個まとめて口に入れて、すべてを口の中でより分けて殻をペッと吐き出すツワモノもいますが、私のやり方のほうが品がいいと思います、最初はこれだってイライラしますが、何でも練習です。
慣れれば豆をつまんで口に入れるくらいのペースでできるようになり、そこまでスムーズにできるようになると、中国人のお友達にも「あ~、これができる日本人に初めて会った!」と一目置かれるかもしれません。目指せ、達人!
このほかに、ちょっとしたおつまみやおやつにいい種モノの中華食材としては、クルミがあります。殻付きのはもちろん、こちらもいろいろな味があります。
むかし、教え子の結婚式に招待されて上海に行ったとき、ご実家でお茶うけに「小核桃仁」というシュガーコーティングされたクルミを勧められて、「これからご飯に行くから、クルミはそのくらいにして」とご家族にたしなめられるほど止まらないおいしさでした。それ以来、上海人に「お土産は何がいい?」と聞かれると「阿明の小核桃仁」とお願いしています。阿明は上海の有名なスナックブランドだそうで、なかでもこのローストしたクルミは人気商品だそうです。いまは日本で買えるかな?
今回お買い物したのは、池袋西口のロサ会館ビルの隣にある「海羽日光池袋店」。ビルの2階から4階までが中華食材店です。2階はスナックやカップ麺、ドライフルーツなど、3階は冷凍・冷蔵食品、乾物、お茶など、4階は肉と魚の生鮮食品売り場です。
ここの2階で今回見つけたのが「山核桃瓜子」(1袋350円)。なんとクルミフレーバーのヒマワリの種です。種自体が大粒でサクサクしていて、なかなかのおいしさでした。
北京オヤジか四川BOYで白酒デビューしてみる?
さて、何を飲むか……。もちろんビールでも紹興酒でもいいのだけれど、今回は白酒(バイジウ)。
米や高粱(コウリャン)が原料で、ウォッカや焼酎と同じ蒸留酒ですからアルコール度数が相当高いですが、中国では割らずにそのまま飲みます。チェイサー代わりにお茶もたくさん飲みますが、ウーロン茶割りなどにはしません。私は中国の宴会で白酒をトマトジュースで割って「ほとんどブラッディマリーだよね」なんてやって、ものすごく怒られたことがあります。
そんなアルコール度数の高いお酒は身体に良くないんじゃない? と言われますが、むしろ糖質制限やダイエットなどの理由で、最近は蒸留酒を選ぶ人が増えています。私も中国のお医者さんでもある兄弟子に「蒸留酒を飲みなさい。あなたの身体には醸造酒は良くない」と言われてから、ずっと蒸留酒です。
確かに酔いますが、私の場合、蒸留酒しか飲まないようになってからお酒ではほとんど気持ち悪くなりません。現地の宴会で50度くらいの白酒を小さなグラスになみなみ注いで、何回も乾杯することになったら大変ですが、日本で家飲みするなら、氷を入れてもジュースで割ってもいいですし。
白酒は安いものから何万円もするものまでいろいろです。今回お買い物した海羽日光池袋店でも、お酒の棚のいちばん上の段には何万円もする高級白酒が並んでいました。
これらの高級品はふつう、接待か贈答用とされていて、家飲み用ではありません。数万円もするような高級品は箱を開けないまま贈答品としてたらい回しにされることもあると聞きます。ごくたまに私のところにも回ってきて、私の場合は横流ししないで封を切ってしまいます。あとからお店で値段を見てびっくりしても、おいしくいただきますよ。
でも、今回は家飲み支援なので、お手軽で有名な白酒を2種類紹介します。伝統的な「二锅头」(アールゴウトウ)と最近人気のおしゃれな「江小白」(ジャンシアオバイ)です。
「二锅头」はアルコール度数56度。高粱と水だけで作った北京のおじさんのように武骨で潔い白酒です。映画やドラマでつらいことがあった登場人物がヤケになって飲んで、「もうやめなさいってば」などと言われるシーンがぴったりの、安くて強いお酒の代表です。
一方の「江小白」は四川発の若者をターゲットにした白酒で、アルコール度数は40度。こちらも原料は高粱と水だけですが、甘くてフルーティで、すっきりしています。クセがないので炭酸で割ってもおいしいし、「露露杏仁露」というアーモンドミルクや、ココナッツミルクで割るのもおすすめです。「江小白」は100ml入りの小瓶で550円。
そしてこの小瓶には、ポエムが書かれたカバーがついているのが特徴です。日本で売られているものにはちゃんと日本語の訳もあります。食材店のお酒の棚の前でポエムを読んで小瓶を選ぶなんてちょっと面白いですね。ちなみに今回選んだ「江小白」には「人生、重要的时刻就是现在。人生で重要な時はいま」と書いてありました。
日本でも中華のお店では食べきれなかった料理の残りを気軽にお持ち帰りにしてくれますが、お酒をボトルで注文して残った場合も、たいていビンごとお持ち帰りができます。そうやって持ち帰った白酒を、私は料理にもよく使います。
次回は白酒を使った簡単レシピを紹介する予定。「二锅头」か「江小白」をちょっと残してお待ちくださいね。
店舗情報
海羽日光池袋店
豊島区西池袋1-37-2
竜崎ビル
電話:03-3988-0575
営業時間11:00~22:00