火鍋に絶対欠かせない寛粉(クワンフェン)って何?

いまではすっかり日本人にもおなじみになった中国の鍋料理、「火鍋(フォグオ)」。料理名からしてむちゃくちゃ辛い鍋料理だと思っていませんか? 

中国では、火鍋とは真っ赤に煮えたぎるスープで煮るような辛い鍋だけでなく、鍋料理全般を指します。「涮羊肉(シュワンヤンロウ)」のようなまったく辛くないしゃぶしゃぶも火鍋の一種です。

 「火鍋」の文字だけを見ると、食べると火を噴くように辛い鍋のような気がしますが、辛さは関係ありません。鍋なら何でも火鍋の一種と言えます。こんな煙突鍋で煮る涮羊肉は北京を代表する火鍋です。

  これは人気の「鴛鴦鍋(ユエンヤングオ)」。辛いスープと辛くないスープの両方を楽しめます。個人的な意見ですが、カリフラワーやレンコン、カボチャなどは、辛いスープで食べるほうが美味しい気がします。

 こちらは1980年代に四川省成都で生まれた火鍋、「串串香(ツァンツァンシャン)」。串に刺した具を入れることからこの名がつきました。2000年代はじめ、私が成都に留学した頃は、まだ中国西南部にしか広まっていませんでしたが、いまや中国全土どころか、日本でも食べられる大人気の火鍋です。

さて、火鍋の具は日本と同様に野菜、肉、豆腐など何でもオッケー。違いは、ごはんや麺を入れないこと。若者向けのチェーンの鍋店ではインスタントラーメンを入れることもありますが、一般的に中国では火鍋のおともといえば、春雨です。

それも「寛粉(クワンフェン)」と呼ばれる幅が1cm以上もある超幅広タイプ。中国では寛粉が入っていない火鍋なんて、想像できません。入ってないと何か足りない、そんな気持ちになります。

寛粉は緑豆春雨と違い、ジャガイモのでんぷんが原料。南部では、サツマイモのでんぷんで作った「紅薯粉(ホンシューフェン)」も使いますが、これも春雨の一種です。寛粉も紅薯粉も煮ると、ものすごい弾力があります。噛むと、うにゅっと押し返されると言ってもいいぐらい。それでいてもちもち。普通の春雨とはまったく別物。この弾力ともちもち感にはまること間違いなしです。

中国で食べ放題の火鍋屋に行くと、こんな風に具が並んでいます。肉やかまぼこ類は冷蔵庫に入っています。写真前列右側の灰色がサツマイモでんぷんでできた寛粉、その上の白いのがジャガイモでんぷんでできた細めの寛粉、前列中央も寛粉の一種。とにかく中国人は寛粉好きです。

 串串香のお店では具は、串に刺されています。棚から好きな具をとって鍋に入れ、串の本数で代金が決まります。私の留学時代、四川の女子大生ならひとり平均80~100本食べると言われていました。多いと思いませんか? でもこれは本当。私も最初は30本ぐらいでおなかいっぱいでしたが、数か月もすると普通に100本近く食べるようになっていました。

 四川留学時代、私は少なくとも週に1回は火鍋か串串香を食べに行っていましたが、毎回誰かがつきあってくれるわけでもなく、ひとりのときもありました。こんなときにぴったりなのが「麻辣燙(マーラータン)」です。「冒菜(マオツァイ)」とも呼ばれる麻辣燙はひとり用火鍋です。麻辣燙は専門食堂があります。そこに行くと、棚に肉や野菜の具が並んでいます。ボールに好きな具をとって、重さをはかってもらうと、代金が決まります。あとは真っ赤なスープで煮てもらうだけ。ここでも寛粉は人気の具です。

 麻辣燙屋では、こんな真っ赤なスープで具を煮てくれます。注文するときに一応好みの辛さを聞いてくれます。私は「微辛(ウェイラー)」という「やや辛い」でお願いしますが、できあがりはほぼ毎回激辛です。麻辣燙屋ではご飯を注文する人が多いのでマネして注文してみましょう。一緒に食べると辛さが和らぎます。

 私の麻辣燙は毎回、こんな感じです。寛粉たっぷり! あとはレンコン、カリフラワー、ほうれん草、白菜、シメジ、ジャガイモ、湯葉など。肉類を加えると、値段がはね上がります。麻辣燙は中国全土で食べられる国民的料理。日本では中国と違い、専門食堂ではなく、中国人経営の中華料理店で食べられます。

 最後に鍋に寛粉を入れるタイミングですが、どうも中国人にはシメという考え方や習慣がない気がします。日本人はシメの麺のような感覚で寛粉を食べがちですが、中国人にとっては単なる具のひとつ。鍋の中盤からどんどん寛粉を入れていきます。もちもち食感だけにおなかに来るので、もう少し後で食べたいと思いつつも寛粉が煮えて、透明になってくると、つい食べてしまいます。寛粉って、あの美味しさを知ると、食べずにはいられない。そんな食べ物です。

 手前にあるのが寛粉です。火鍋屋さんに行ったら、周辺のテーブルをチェックしてみてください。絶対、寛粉がありますよ!

私は中国から帰国するとき、「超市(チャオシー)」と呼ばれるスーパーで寛粉を買いだめしていました。そんな寛粉がいまでは日本で買えるようになりました。東京や大阪などの大都市では日本在住の中国人のために中国人が開いた中国物産店が増えています。中国物産店は、中国食品スーパーのようなところ。そこに行けば、寛粉が普通に売られています。

簡単に火鍋ができる火鍋の素もここで手に入ります。寛粉が日本でも買えるって、幸せ。鍋の季節が待ち遠しい!

 「手工(ショウゴン)」とは手作りのこと。関西で売られていたのは、だいたいこれ。日本のお鍋にも合います。

 袋から出した状態の寛粉。水につけて約20分、約5分煮ると透明に変わり、もちもちの食感になります。

  これは中国の人気火鍋チェーン「海底捞(ハイディーラオ)」の火鍋の素です。中国物産店ではいろんなメーカーのものが手に入ります。お湯に溶かすだけで使えますが、ショウガなどを加えるのがおすすめ。私は牛骨スープや鶏ガラスープに火鍋の素を加えています。簡単そうで意外と美味しい味を作るのは難しいかもしれません。

寛粉が買えるお店

友諠商店大阪店

大阪市中央区日本橋1丁目4-4日本橋グリーンハイツ105

友諠商店池袋店

東京都豊島区池袋1-28-6大和産業ビル4階

特別珍しい商品ではないので、ここ以外の多くの中国物産店でも手に入ります。

Writer
記事を書いてくれた人

浜井 幸子

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