池袋と上野にある延辺朝鮮族料理店「千里香」のメニューを解説します

前回、前々回と延辺朝鮮族料理(以下、延辺料理)について詳しく解説しましたが、韓国料理と中国料理のそれぞれの特色を併せ持った延辺料理は、独自の歴史と風土が生んだ中国の朝鮮族の人たちが供する料理です。

そのようなユニークな料理が東京で味わえるのは、実に興味深いといえないでしょうか。

都内にある延辺料理店としては、千里香(池袋、上野)と延吉香(新大久保、御徒町)、四季香(池袋)の3つがよく知られています。どの店がいいかは、それぞれ人によって評価が違うと思いますが、それらの店で食べられるのは、延辺料理と東北料理です。

なぜなら、延辺朝鮮族自治州は吉林省にあり、その地方で食べられるのは東北料理だからです。さらにいうと、たいていのディープ中華の店がそうであるように、人気の四川料理もメニューに入っているようです。

今回は千里香(せんりこう)のメニューの中身をなるべくわかりやすく解説していきましょう。この記事を読めば、ご自身で料理を注文できると思います。

同店のメニューの表紙には、延辺を象徴する長白山のカルデラ湖「天池」と羊肉串の写真ともに「東北料理」「延邊(延辺)料理」「四川料理」「羊肉串」と書かれています。つまり、この店で食べられるジャンルはこの4種です。

まず羊肉串ですが、メニューを見ると、実に多くの具材があります。

羊肉串の中にも、麻辣味(ピリ辛)や羊赤身、羊排串(骨付き)があります。

イカやエビなどの海鮮や豚や鶏のハツなどのホルモン系、豆腐やシイタケ、ニンニクの芽などの野菜もあります。

羊腰子(羊マメ=腎臓)や豚マメ、トウモロコシやパンの串もあります。中国の人たちはパンを串で焼いて食べるのが好きです。

延辺らしいのは、冷麺や石焼ビビンバ、スンデがあることです。シメの選択肢もなかなか豊富です。

「黒餃子(土豆餃子)」というのはジャガイモの皮の餃子で、モチモチ、プリプリとした厚みのある皮は延辺の特色です。海鮮チジミは韓国料理の定番ですが、延辺料理にもあります。

トッポギが入っているのは、韓国料理の影響でしょう。

トウモロコシ麺や自家製餅、ジャガイモチヂミは延辺の特色料理ですが、韓国風のキンパもあります。

次に「東北料理」を見てみましょう。

東北料理では野菜の中華風サラダをよく食べます。たとえば、これはキュウリのニンニク辛味和え(拍黄瓜)。前菜の定番です。

ほかにも野菜の前菜がたくさんメニューに並んでいますが、延辺風にトウガラシで和えたものが多いです。

以下の三品は、東北料理の定番メニューです。

これは「東北大豊収(ドンベイダーフェンショウ)」と呼ばれる東北風野菜と豚肉の煮物です。トウモロコシパンが付いています。これは鍋で煮るとき、鍋のへりにトウモロコシ粉のパンをくっつけて焼きます。鍋のスープを付けて食べるとおいしいです。

これは「酸菜白肉鍋(スアンツァイバイロウグオ)」と呼ばれる、白菜を発酵させた酸菜入りの酸っぱい豚肉と豆腐鍋です。

これは「地三鮮(ディサンシェン)」と呼ばれるナスやジャガイモ、ピーマンなどの季節の野菜3種を素揚げして、醤油で炒めたものです。素朴な味わいで、ご飯によく合います。

延辺料理ではありませんが、麻辣風味の羊鍋もありました。「麻辣羊蝎子锅(マーラーヤンシエズグオ)」というのは、羊の背骨肉の鍋です。「蝎子(シエズ)」というのはサソリのことですが、羊の背骨肉のかたちがサソリに似ているのでそう名付けられました。北京などでも人気の鍋です。

日本人にはかなり抵抗がありますが、カイコを揚げて炒めた料理「干煸蚕蛹(ガンビァンツァンヨン)」もあります。カイコは串焼きにしても食べます。

韓国酒のチャミスルやマッコリが飲めるのも、延辺料理店ならではです。

ところで、千里香は卓上自動串焼機があることで有名です。「日本初」と自らうたっています。この店に行くと、串が自動的に回ることで肉がほどよく焼ける光景を見ることができるでしょう。

これが卓上自動串焼機です。左右に動く無数の穴の空いたマシーンに鉄串に付いたギザギザの突起が噛み合うことで、串たちがくるくる回る様子はのどかでもあり、和めます。

ぜひ千里香を訪ねてください。

※ちなみに、千里香という同じ名前の延辺料理店は新大久保にもあるのですが、オーナーが別だそうです。こういうことは、ディープ中華の世界ではよくあることです。もちろん、もしよければ、こちらの店もどうぞ。

料理の写真:山端拓哉

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

千里香池袋店

豊島区西池袋1-21-1 YKDビル7F
03-5992-8171

千里香上野店

台東区上野4-2-6 上野西田ビル B1F
03-5807-1761

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