辛いけど発酵食材で胃ももたれずヘルシー料理が続々、新小岩「貴州火鍋」

辛いけど発酵食材で胃ももたれずヘルシー料理が続々、新小岩「貴州火鍋」

今日は中国一辛いと言われる中国南西部、貴州の辛さに挑戦してくれる強者5人と新小岩の「貴州火鍋」に来ました! 「孤独のグルメ」や「マツコの知らない世界」でも取材があり、連日お客の絶えないお店です。

メンバーの中のSさんとは以前、上野でも貴州料理を一緒に食べました。貴州の基礎知識も載せた記事があるので、読むとより理解が深まると思います。

ミャオ族オーナーのドクダミ&発酵料理に魅せられた御徒町「王さん私家菜」

今回の取材時(2026年2月)に現在の店に移転が決定し、多分移転前の最後の取材だと思います。

このお店は、まず外観が素敵なんです!一見中華料理店には見えないけど、なんかカッコよさもあります。

旧店舗の入口。自然の姿の木を活かしたデザイン

店長の髙橋さんは貴州生まれです。貴州は少数民族が多いことで有名ですが、髙橋さんは中国で9割を占める漢族で、生まれた地域も漢族が多いそうです。結婚を機に1997年に来日、2019年にお店を開業。日本の古民家や居酒屋の雰囲気が好きで、このような内外装にしたそう。

左から髙橋さんの旦那さん、髙橋さん。とても仲の良いご夫婦です。
そして調理師の載(ダイ)さん

椅子の座布団は、貴州の少数民族ミャオ族の刺繍だそうです。古民家の店内になじんでいます。開店当初は中国人客が2割程だったそうですが、「孤独のグルメ」放映後から急増し、今は4割程いるそうです。

私は思わず聞き返しました。ガチ中華店は開店当初だと中国人が多いことが一般的だからです。「孤独のグルメ」は中国人にも大人気で、実際、今いるアルバイトの中国人留学生もこの番組がきっかけで働いていると聞きました。

店内奥の座敷。このような壁に短冊で一品料理が書かれた居酒屋ありますよね
座布団。丁寧な刺繍が施されている

さて、貴州料理は、唐辛子や大豆、トマト等を発酵させて調味料として使うのが特徴です。

山岳地帯の貴州はその昔、塩が作れなかったので食べ物を発酵させて長持ちさせた経緯があります。現在はその他に塩、生姜、にんにくをよく使います。

まず、唐辛子とその調味料について紹介します。

唐辛子は髙橋さんの故郷、貴州省遵义(ズンイー)市のもので、子弹头(ジーダントウ) 、朝天(チャオティエン)、 二莉条(アーリーティァオ)の3種を使用しているとのこと。二莉条が辛さを和らげる役目をもち、それがないとただ辛いだけになってしまうそうです。貴州でも北にある遵义の唐辛子が一番辛く、味付けも貴州の中でも辛いそうです(!)

髙橋さんはそれらの唐辛子で6種類の調味料を作っています。

― 唐辛子調味料 ―

  • 糟辣椒(ザオラージャオ): 生唐辛子を発酵させた、まろやかな酸味と旨味が特徴。
  • 糊辣椒(フーラージャオ): 乾燥唐辛子を香ばしく煎って挽いたもの。少数民族の調理法。
  • 糍粑辣椒(ツーバーラージャオ): 唐辛子をにんにく、生姜と挽いたペーストで風味豊か。
  • 筒筒辣椒(トントンラージャオ): 唐辛子を油で炒めたもの。料理に香ばしい風味を加える。
  • 泡椒(パオジャオ): 生唐辛子を塩水で乳酸発酵させた、酸味のある調味料。
  • 酸椒(スアンジャオ): 青唐辛子を発酵させた、エッジの効いた酸味が特徴。
メニューでの調味料の説明
メニューの頭文字でどの唐辛子調味料を使用しているかがわかる

料理の前に飲み物を注文します。特徴は豆乳が注文できること。最初から少し甘めで、辛い料理の後に飲むと辛さが和らぎ、避難所のような役割を果たすことが後でわかります(笑)

カンパーイ!

では料理を紹介します。どの唐辛子調味料を使用しているか、調味料の頭文字をメニューの頭に表示しています。

糊 お通し

大根が唐辛子で赤く染まったと思いきや、元から赤い赤大根を糊辣椒で味付けしたものだそうです。糊辣椒が6種の調味料の中で一番辛いそうです。

お通しから辛いとも聞いていましたが、今回は思ったより辛くなかったです。少し固めでよく噛むので、食べながら料理を待つのにちょうどいいです。

糟 「笋子炒腊肉(日本語名なし)」

店長お勧めの筍と燻製肉炒め。筍は貴州の干し筍を使用。

メンマよりもはっきりとゴリゴリした食感で歯ごたえがあり、それでいて筋っぽくなく食べやすいです。糟辣椒の酸っぱ辛さがよくわかる炒め物です。糟辣椒の味付けは、ザ・貴州料理という感じがします。

筒 「干豆豉回锅肉(干し納豆のホイコーロー)」

この店、回鍋肉だけで3種類もありますが、今日は豆鼓で。豆鼓も黒大豆を発酵させたものです。

今回は特別に「灰豆腐」という、貴州でも一部でしか作らない貴重な豆腐も加えていただきました。お茶の茎を燃やして灰にしたものに豆腐を入れて一晩寝かせたものだそうです。

上の四角いのが灰豆腐
灰豆腐の紹介ポスター。明の時代からの伝統的な製法だという

豆鼓炒めは他の料理でも食べたことがあり、そこまで味の主張はなかったですが、これは唐辛子よりも納豆の匂いが勝ります。

干し納豆は柔らかく、口の中で辛さを和らげ、料理自体を食べやすい味にしています。灰豆腐は特に匂いはなく、がんもどきのような食感です。それぞれの食材が独立した食感の筍炒めと違い、食材が一体化して一つの料理になっている感じがします。

筒 「折耳根炒腊肉(ドクダミの根と干し肉の炒め物)」

白くて細いのがドクダミの根

でました、貴州と言えばドクダミ料理。ドクダミは千葉県の農家から取り寄せているそうです。

ドクダミの香りがすごいです。毎回思いますがこの匂いをかぐと、急に草むしりをした気分になります(笑) 歯ごたえのあるドクダミと、香ばしい干し肉の食感の組み合わせがハマる人には病みつきになる料理です。根が以前食べたものより細いですが、今シーズンは雨が少なかったため細いのだとか。辛さはドクダミに消されたか、そこまで感じません。

ローカル料理が好きで自分でも作るIさんは、「ドクダミ茶と異なり、ドクダミの香りを活かした料理で良い。春になったら作ってみたい」と意気込んでいました。

火鍋「酸湯魚」「豆鼓火鍋」

いよいよ火鍋の登場です!見た目はどっちがどっちかわかりません(笑)。飲んでみたら左が酸湯で右が豆鼓でした。

左が酸湯、右が豆鼓スープ
野菜 中に海老や豆腐もあります
鍋に入れる豚と鶏肉と干し納豆

具材を入れていただきます。

酸湯は、紅酸というミニトマトに、塩や香味野菜、蒸留酒を加えて発酵させた調味料でできたスープです。普通のトマトではなくミニトマトでないとダメだそうです。

熱さもあり結構辛みを感じますが、酸味と爽やかさもあります。この酸味と辛みが1:1で、これが再び飲みたくなってしまうのです。

自宅でトマト麹をつくっているというJさんは、「それに近いものを想像していたけど、全く別物で、酸味と辛みの2段構えが2度おいしくて得した感じ」と言います。

一方で豆鼓スープは鶏ガラベースに糟辣椒と豆鼓を加えてできているそうです。甘くはないですが、少しとろみのある分まろやかさも感じます。辛さはなく、酸湯よりもコクを感じます。このスープはメンバーからも好評で、私も何回も飲みました!

オプションでつけだれを頼みます。辛さありとなしが選べます。

辛さありの方は見るからに辛そうで、実際今日食べた中で一番辛かったです。ジリジリ来ます(笑)

辛さなしの方は、山椒が爽やかに香ります。

私は辛さなしの方がさっぱりシャキッと食べられて好みでした。

たれの材料は、辛さありの方に入る唐辛子を除けば、水納豆(大豆のゆで汁につけたもの)、山椒、醤油等で、醤油はいくつかブレンドしているそうです。唯一無二!

たれなしでもおいしいですが、たれをつけると具材の味に奥行きが増し、鍋を2種、たれも2種頼めば4倍楽しめるのでお勧めです!

この鍋セットの肉ですが、調理済みの肉だったのとメニュー写真に似ていて、注文していた「辣子鸡(ラーズージー)」と勘違いしてしまい、鶏は食べてしまいました…(^^;) でもこの判断、あながち間違ってはいなくて、この鍋に入れる鶏は辣子鸡と同じものだったんです! 貴州では味に深みが出るので、鍋に入れる肉は生肉ではなく調理された肉を入れるのが一般的だそうです。

でも、かろうじて残っていた豆鼓と豚肉は入れることができました。

食べていると本当の「辣子鸡」が来ました。

糍 「辣子鸡(鶏の唐辛子ペースト煮込み)」

辣子鸡(鶏の唐辛子ペースト煮込み)

なんと、見た目が想像と全然違います!「辣子鸡」と言えば、四川料理で有名な小さい鶏のから揚げがたくさんの輪切り唐辛子と合わせて出てくるものです。

小さい鶏のから揚げがたくさんの輪切り唐辛子

実は前夜に思いがけず四川料理店に行くことになり注文した辣子鸡はこれ

貴州の辣子鸡は日本語名からもわかるように、揚げるのではなく煮込むんですね!

部位も骨付き骨なし色々な部位があり、唐辛子とこの骨も協力していい味になっていくんだろうなと想像します。旨辛でがっつり食べるのにいいおかずです(ちなみに辛さレベルがこの店の最大ですが、構えすぎていたのか激辛とは感じませんでした)。

料理する際、唐辛子調味料は好みで使い分けるそうですが、辣子鸡だけは糍粑辣椒でないとダメだそうです。

筒 「炒洋芋粑粑(発酵野菜入りポテサラ炒め)」

なんとポテサラが黒い…!そして飾りが唐辛子粉です
刻んだからし菜、ササゲ等色々なものが入っている。日本のポテサラと違い温かい

中国ではマッシュポテトを炒めるという調理法があります。放課後、学校の前に現れる屋台で小腹を空かせたこどもたちがおやつや軽食によく食べるそうです。髙橋さんは屋台のより母の作る味が好きで、この料理はもちろん、他の料理も母の味を受け継いで出しています。

ポテトが黒くなるのは、からし菜を発酵させて塩漬けした「梅菜(塩菜)」を使っているからと、実際に見せてくださいました。

試食するとしょっぱいです。

でもポテサラに入るとそこまで塩味は感じなくなります。他にもササゲ(長いインゲン)等も入り、栄養バランスもよさそうです。見た目は日本のポテサラとは全く違いますが、味に派手さのない落ち着いた味は共通している感じがします。

一通り食べたところで、〆のご飯を注文。麦入りご飯です。

髙橋さんは「貴州料理はとにかくごはんに合うので、ご飯をたくさん食べても太りにくいように、糖質の少ない麦も入れている」とのこと。この気遣いに身だけでなく心も温まります。

酸湯の具とスープをのせたご飯

入れる前に皮も身もしまっていた豚肉は、熱でリラックスしたかのように広がり、そのまま食べた時と食感が全く違いました。

豆鼓スープに入れた肉を、ご飯の上に載せる

豆鼓スープはご飯と合わせると、家で納豆ご飯を食べているかのようです。スープに入れる前に味見した豆鼓は、硬めの甘くない干し納豆でしたが、スープに入れると少しとろみがでてきました。

店長の言う通りどんどん食べられます!私はご飯には豆鼓スープが合うと感じました。Kさんは「あと3杯はいける!」と言っていました(笑)

貴州と日本食は何か共通点があるように思いました。

貴州料理は、唐辛子が四川や湖南のような目立つ豪快な使い方ではなく、散りばめられているように使われ、ある意味上品に見えました。今まで見たり食べたりした中華料理とは全く異なり、また一つ中華料理の幅広さを知りました。

今日も本当にお腹パンパンなのですが、もたれていることはありません。発酵すると酸味や発酵ならではの旨味も出てくるので、後に引かず、もたれずにいられるのだと思いました。また、料理に使う油の量がとても少ないです。中国でも最近の健康志向により、四川料理より貴州料理の方がヘルシーで人気があると髙橋さん。

Kさんは、「どの料理もお酒に合うが、ビールよりも老酒や白酒に合う」と言っていました。「やっぱり火鍋はみんなで囲むのがいいですね」とKuさん。

この日、都心では雪が降り、今冬過去最低気温になっていたんです。こんな日に火鍋を食べられるなんて最高でした!

数日後、私は豆鼓鍋がすでに恋しくなって、久しぶりにみそ汁に納豆を入れました。

髙橋さんは今回の取材で色々と詳しく教えてくださり、心から貴州料理の良さを伝えていると感じました。ありがとうございます!

……とここで終わりのはずですが、2026年3月24日に移転オープンしたので、ささやかながら花束を持ってお祝いに伺いました!移転先は最寄り駅の新小岩駅にもっと近くなりました。

外から見た看板。2Fにあります
入口

店内は以前よりも広々としています。

移転前の倍の席数だそうです

「個室もできたよ!」と見せてくださいました…!  2部屋あります。

個室もゆったり

新しいお店は今以上に賑やかになりそうな予感です!

貴州料理、ぜひ体験してみてくださいね!

                                                                                                                      (aokinapple)

店舗情報

貴州火鍋

貴州火鍋

葛飾区新小岩1-43-1
第2東ビル 2F A室

Writer
記事を書いてくれた人

ライターaokinappleさん
aokinapple

プロフィール

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