火鍋だけじゃない!中国外食チェーンが東京進出する理由とは

「東京ディープチャイナ」という新しい食のシーンの特徴として、珍しい中国の地方料理が味わえるようになったことと、中国の外食の最新トレンドが体験できるようになったということは、すでにお話しました。

第1回の記事はこちら

今回は最新トレンドの話をしましょう。
いま都内には中国の外食チェーンが次々とフランチャイズ出店しています。
それはマックやKFCのようなグローバルチェーンではなく、日本でいう吉野家やサイゼリアのようなローカルチェーンの中国版のことです。
コロナ禍で、昨年の日本の外食チェーンの売上は過去最高の落ち込みと報じられているのにもかかわらず、出店が続いているのは驚きといえます。

中国で本格的な外食チェーンが生まれたのは、2000年代に入ってからといっていいでしょう。
現在、中国の3大外食チェーンといわれるのは、福建省が拠点の「沙县小吃(シャーシェンシャオチー)」、山東省の「楊銘宇黄燜鶏米飯(ヨウメイウファンメンジーミイファン)」、甘粛省の「蘭州牛肉麺(ランジョウニュウロウミエン)」です。

これらは中国全土に5000店舗規模の展開をしている巨大チェーンで、アメリカやオーストラリアなどでの海外出店も始まっています。そして、すでに都内にも出店しています。

中国の外食チェーンの日本への出店が始まったのは、2000年代後半でした。最も早かったのは、オペレーションが比較的簡単だったモンゴル火鍋の「小尾羊(ショウエイヤン)」や「小肥羊(ショウフェイヤン)」で、少し遅れて、きめ細かいサービスが売りの「海底撈火鍋(カイテイロウヒナベ)」が2015年9月に池袋に出店しています。

これらの中華火鍋チェーンは、すでにそれぞれ複数店舗を展開しており、直営店だけでなく、フランチャイズ店も生まれています。

小尾羊 蒙古火鍋しゃぶしゃぶ

直営店

銀座、新大久保

加盟店

上野店 巣鴨店 綾瀬店 六本木店 大井町店など

中国火鍋専門店 小肥羊

渋谷店 六本木店 新宿店 新宿西口店 池袋店 銀座店 品川店 豊洲店 上野公園店など 

海底撈火鍋

池袋店 新宿店 町田店など

そして、2018年頃から新しい中国各地の外食チェーンの出店が始まりました。先ほどの3大チェーンでいうと、福建省の地元ローカルフードの「沙县小吃」(2018年6月)と鶏の土鍋で有名な「楊銘宇黄燜鶏米飯」(2019年12月)が、ともに高田馬場に出店しました。

沙县小吃 

新宿区高田馬場2-8-6

楊銘宇黄燜鶏米飯 

新宿区高田馬場2-14-8 2F

蘭州牛肉麺は、中国留学経験のある日本人オーナーが2017年8月、数ある蘭州牛肉麺チェーンのひとつ「馬子禄(マーズルー)」を神保町に開店し、人気を博したこともあり、すでに都内各地に多くの中国系オーナーたちが別ブランドで出店させています。

薩斐蘭州牛肉麺

(サフェイランジョウニュウロウミエン)

豊島区池袋2丁目13-8

耶曼牛肉麺

(イェマンニュウロウミエン)

新大久保店 小岩店

これらの店は、中国に本社がある外食企業から商標やノウハウを提供され、日本在住のオーナーたちがフランチャイズ経営しているケースが多そうです。ですから、多くの日本在住の中国の人たちは、地元で見たことがある店も多く、懐かしさを感じていることでしょう。

なかでもここ数年、特に増えているのが、ひとり用火鍋ともいうべき麻辣燙(マーラータン)のチェーンです。

麻辣燙は、シャープなシビれが際立つ中華山椒の花椒(ホワジャオ)とトウガラシの辛さをベースに、数種類の漢方スパイスを使ったスープに、自分で選んだ具材と麺を入れて煮た激辛ラーメンといっていいでしょう。
スープは5段階くらいの辛さから選べるヘルシー料理ということで、中国の若い女性に人気です。

それゆえ都内のチャイニーズ中華の多くの店でも、麻辣燙を提供するようになりました。中国の2大麻辣燙チェーンもすでに都内に出店しています。

そのひとつが「張亮麻辣烫(ジャンリャンマーラータン)」で、すでに複数店舗出店しています。もうひとつは「楊國福麻辣烫(ヤングオフーマーラータン)」です。こちらは2019年12月の池袋店が初出店で、2021年2月上野御徒町に2号店ができたばかりです。

張亮麻辣烫

池袋店、高田馬場店 新大久保店、大久保店、竹ノ塚店 八王子店、西川口店など

楊國福麻辣烫

豊島区東池袋1-13-12 JETビル

日本に留学し、卒業後も働く若い中国人が増えたことから、彼らの好みに合わせたジャンク系のチェーンも急増しています。

たとえば、鴨の首肉の燻製である鴨脖(ヤーボゥ)のチェーンで、「小魏鴨脖店(シャオエイヤーボゥディエン)」です。

これらの店では中国の若者たちの姿を多く見かけます。ほかにもまだあるのですが、今回はここまで。それぞれの店でどんな料理が食べられるかについては、今後店ごとに紹介していくことにしたいと思います。

【追記】

実はこの記事を配信した2021年3月当初、鴨脖の「周黒鴨大夫人」を中国の外食チェーンのひとつとして紹介していましたが、そうではないことを最近、知りましたので、いったん記事から削除させていただきました。

朝日新聞デジタル2017年8月16日の「中国の有名チェーンと同名の店、実は無関係 埼玉・川口」で指摘されていたようです。要するに、現在都内とその近郊に数店舗を出店している「周黒鴨大夫人」は中国の「周黒鴨」が日本に出店したチェーン店ではなく、日本で独自に立ち上げられたチェーン店だということです。

ご存知の方も多いかもしれませんが、こういう事例は中国では多々あり、今回は中国人オーナーが中国企業のブランドを無断で使ったという話です。中国側からの指摘により、現在同チェーンは「周黒鴨の日本出店1号店」という言い方はしていないようです。それでも、いま店に行くと、多くの中国の若者たちが食事を楽しんでいる光景は変わっていません。(2022年2月20日)

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

小魏鴨脖店2号店

豊島区西池袋1-24-9
新大久保店 日暮里店 上野アメ横店など

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