春節が近くなると、まわりの中国人と旅行の話をする機会が増えます。
国内で行きたい場所としてよく出てくる地名は阿那亜、海南島、景徳鎮。スノーボードやアイスクライミング好きたちには、雪山のある新疆が人気。車持ちたちには川西環線(四川省の高山地域にあるハイウェイ)のようなドライブルートも定番の旅先になっているそうです。
でも、いろいろ聞いた上でやっぱり人気があると思うのは、気候がよくて異国情緒を味わえる雲南省。それと比例して、上海市内ではますます雲南料理店の人気が高まってきていると感じます。
今回ご紹介する『柴米多』は、雲南旅行をアウトドア(登山、キャンプ)、バックパッカー旅行などで楽しんでいる層に人気のお店。本店は雲南省の大理にあり、上海以外では杭州の『天目里』に店舗が。ほか、蘇州市内に自家有機農場があります。
数年前からブームの「銅鍋米線」を紹介した記事でもちらっと取り上げています。
『柴米多』の魅力は、ただのレストランではないところ。ローカル市場の2階という立地も攻めてますが、都会の人に雲南省の体にやさしい食べ物を紹介するというコンセプトで経営しており、手作り雑貨、調味料の販売のほか、Zineの発行やイベント開催も手掛けています。
上海店は、「バックパッカーが集う宿の食堂みたいな、和気あいあいとした雰囲気」を目指しているといい、雲南省を旅したくなったら「大理市の本店へ、現地の友達を訪ねて行く感覚で来ていいよ」というスタンスなんだそう。
そんな話をしてくれた『柴米多』の共同オーナーの1人・潘さんは、2022年の春、なんと偶然私が住む部屋の隣りの部屋(民泊だった)に滞在していて、2か月間一緒にロックダウン生活をしていたという間柄。
お店で出せなくなった自社農場産の野菜をもらったり、とてもお世話になりました。
それでは以下、『柴米多』の人気メニューをご紹介していきたいと思います。
多分、このページの読者の方がイメージする雲南料理とは随分違うと思います。でも、これが雲南省の人が国内の都市部・上海の人たちに紹介したい料理で、上海人のニーズにもぴったりハマっている料理なのです。
まずは冷菜から。
「景颇薄荷鬼鶏(ジンポーボーフーグイジー)」(68元)です。
ほぐし烏骨鶏系の料理は定番ですが、雲南省の香り野菜「大芫荽(ダーヤンスイ)」を和えてあるのがポイント。「大芫荽」は大香菜とも呼ばれる葉っぱの細い野菜なのですが、香菜の風味をさらに豊かにしたような味で、個人的に大ハマり中。クセのある野菜が好きな人にぜひ食べてほしい一皿です。
雲南省といえば手作り豆腐。「石屏包浆豆腐(シーピンバオジャンドウフー)」(38元)は、雲南省南部の石屏の名物だそう。外はカリカリ、中はトロトロの揚げ豆腐です。なぜこんなにトロトロなのかというと、石屏の天然の地下水が凝固剤になっているからなのだそう。いつか本場で食べてみたいです。
「野樹花天麩羅(イエシューホアティエンフールオ)」(38元)は、植物に寄生するキノコの一種「野樹花」の天ぷら。海抜2500m以上の、自然豊かな場所にしか生えていないキノコだそう。見た目は海藻風。食感は軽い花びらみたいでした。ビールが進むやつです。
『柴米多』は、お馴染み「小圃」のナチュラルワインも揃うお店。ワインとともに頼みたいのが「黒松露野生菌薄餅(ヘイソンルーイエションジュンボービン)」(118元)です。
今や雲南省を代表する食材とも言える黒トリュフ。これをたっぷり使ったピザです。トッピングのハム類も、自家農場で有機カボチャを飼料に育てた豚を使っているというこだわりぶりです。
締めはやっぱり銅鍋米線「雲南小鍋米線(ユンナンシャオグオミーシェン)」(38元)で。味噌系ピリ辛スープにニラ、ひき肉、もやし、トマトがたっぷり。米線というか、全麺類のジャンルでいちばん好きかも、と思うおいしさです。
今日のビールは「松嘎啤酒」(38元)。雲南省の迪慶チベット族自治州で作られているクラフトビールです。以前このページで大理市雲龍の塩を使って作ったビール「諾鄧井塩」を紹介しましたが、雲南省は個性的なクラフトビールがたくさんある地域。代表格は老舗の「香格里拉啤酒」でしょうか。
最近、仕事で雲南省出身の人に合う機会が増えています。しかも、キュレーター、デザイナー、スタイリストなど、第一線で働くクリエイターに多い気が。市内の雲南料理店のセンスを見ても、どこも唸らせられるものばかりです。
上海のここ数年の流行やトレンド(ナチュラル、シンプル、素朴な感じ)は、もしかしたら雲南省の人たちが持ち込んだものかも、とも。なので引き続き、上海の流行を知るには雲南省の動向も要チェック。今後も新しいタイプの雲南料理店は増えそうです。
(萩原晶子)
店舗情報
柴米多
上海市徐匯区烏魯木斉中路318号烏中市集2階
営業時間
11:00-14:30 17:00-22:00