高田馬場の「四川人家」で味わう張飛ゆかりの特産黒酢と涼粉

四川料理やパンダの生息地として有名な四川省は、三国志に関連する史跡が多いことでも知られています。

なかでも閬中(ろうちゅう/ランジョン)は、三国時代に蜀の猛将張飛が7年間治めた地でした。劉備に仕え、蜀の建国に貢献したものの、仲間の裏切りで命を落とした「張飛の墓」があることで有名です。またこの地は、保寧と呼ばれていた時期もあります。

今回は日本でも買える閬中ゆかりの特産品と名物料理を紹介します。

この町の特産品で最も有名なのが「張飛牛肉」という干し肉です(保寧干牛肉とも呼ばれます)。これは明末清初、この地に住む回族(イスラム教徒)の兄弟によって創案された一品です。肉の表面は黒ずんでいますが、中身は赤いので、顔が黒く劉備に忠誠(中国語で「紅心」といいます)を尽くした張飛を連想させることから、張飛牛肉と呼ばれるようになりました。

もうひとつの特産が「保寧醋」です。保寧醋も明末清初に完成した食用醋で、香りに特徴があります。老陳醋(山西省)、鎮江香醋(江蘇省)、永春老醋(福建省。同じ省内の「紅曲米醋」を挙げる説もあり)と合わせて「中国四大名醋」のひとつとして有名です。

※鎮江香醋についてはこちら。

このほか、清の乾隆年間(18世紀中・後期)に回族の小吃職人が生み出した饅頭「白糖蒸饃(バイタンジョンモー)」も有名です。饃(モー)は、小麦粉をこねて焼いたパンのような食品で、中国でよく食べられます。

日本のまんじゅうとは違い、具は入っていませんが、甘みとキンモクセイの香りがするのが特徴で、保存が利くことでも知られています。閬中で造られたものには赤い判が押されているので見ればすぐにわかります。

さて、閬中の料理は四川料理にしては辛さ控えめです。名物料理は、閬苑三絶(ランユエンサンジュエ)と川北涼粉(チュアンベイリャンフェン)です。

閬苑三絶は、先ほど述べた閬中の特産である保寧醋や張飛牛肉、白糖蒸饃を使ったスープ料理で、ほどよい酸っぱさと肉のうまみが食欲をそそります。上にのっている赤みの肉が張飛牛肉で、スープに浸かっているのが細かく千切られた白糖蒸饃です。現地のレストランではかなりのボリュームで出てきます。

川北涼粉は、南充発祥の小吃(シャオチー)です。

エンドウ豆を原料として固めたものを厚めの短冊切りにして醤油、酢、ラー油などを合わせたピリ辛ダレをかけて食べる一種の汁なし麺。のどごしがよく、特に夏場に好んで食べられる一品です。

閬苑三絶については、原料が入手困難なこともあり、東京ではまだ見かけたことはありませんが、涼粉が食べられる店はたくさんあります。基本的に四川料理の専門店であれば、川北涼粉またはそれに近い味の涼粉を注文できます。

たとえば、高田馬場にある四川料理店「四川人家」のメニューには「川北涼粉(480円)」があります。

同店の壁には「家的味道」と大きな字が書かれていて、四川の人たちがふだんの生活で食べている味を楽しめるという意味です。

それから、保寧醋は池袋の「友誼商店」のような都内の中華食材店でも販売されていますので、四川料理店では調理にふつうに使われています。中国の黒酢について興味のある人は、試しに購入してみてはいかがでしょうか。

最後に、閬中という町について簡単に紹介しましょう。

閬中は成都の北東約220km、四川盆地の北端に位置する嘉陵江(長江の支流。重慶で合流)沿いの町で、紀元前330年頃には小国の都が置かれたこともあり、山西省の平遥古城(世界遺産)、安徽省の徽州古城、雲南省の麗江古城(世界遺産)と合わせて「中国四大古城」のひとつに数えられます。

現在の閬中は、嘉陵江を挟んで南北に広がりますが、北は嘉陵江沿いを中心とする古城エリア、南は行政機関などが並ぶ新市街になっています。閬中は南充市の中心地から北へ約95km離れています。

見どころは古城エリアに集中していて、張飛を祀る漢桓侯祠や官吏登用試験の会場であった閬中貢院、明清代の行政機関であった川北道署などの史跡があります。

いちばんの見どころは、平屋造りの家屋を中心とした情緒ある古城の街並みです。東西1.5km、南北1kmほどの広さなので、古城エリアに宿を取り、散策するのがおすすめです。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

四川人家 

新宿区高田馬場3-12-11
03-5937-1572

※2022年春現在、同店は営業していないようです。

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