梁餐泊「アートと美食」の饗宴~満洲族サマン映画 & 中国東北料理の宴

梁餐泊「アートと美食」の饗宴~満洲族サマン映画 & 中国東北料理の宴

東京ディープチャイナ研究会代表の中村から、みなさまにガチ中華の食事会を兼ねた映画の上映会のお知らせがあります。

これはただの上映会ではありません。

あの味坊集団の梁宝璋さんの別邸「梁餐泊」で開催されるスペシャル企画です。

上映されるのは、遼寧省出身で満洲族の血を引く金大偉監督作品『天空のサマン』(2023)

中国にシャーマンがいることをご存知ですか? 中国東北地方に暮らす少数民族である満洲族の精神文化を象徴するのは、サマン(薩満=シャーマン)という存在です。

満洲族のサマン(薩満=シャーマン)

金監督は、彼らの神秘的な宗教儀式を10年以上の年月をかけて撮影してきました。長時間の収録映像を編集し、音楽家でもある金監督自らがBGMも制作しています。あとで紹介しますが、彼は映像や音楽以外にも、美術作品も手掛けるなど、多彩な芸術活動を行う、まさにシャーマンの生まれ変わりのような人なのです。

今回の企画は、まず映画『天空のサマン』(2023)の上映をしたのち、同じく中国東北出身である梁宝璋さんの味坊が供する東北料理の宴を楽しむという、限りなく豪華な内容です。

まず会場となる梁餐泊の話から始めましょう(写真/佐藤憲一)。

会場の梁餐泊

梁餐泊は、茨城県つくばみらい市にある味坊の自社農園の近くにある梁さんの別邸です。

梁餐泊からの景色

これまでぼくは何度も梁餐泊を訪ねる機会がありました。地元の地主から古民家を購入し、1年以上かけて改装したもので、梁さんは自らのアトリエ兼「美食とアート」の拠点にする考えでした。

1年以上かけて改装したアトリエ兼「美食とアート」の拠点

当初から梁さんはここで美術展をやることを想定して、古民家を改装したそうです。「ワークショップやトークイベントなどもできたらいいよね」とぼくらは話していたのです。

梁さんはここで静かに絵を描いて過ごしたいそうです
中国の借景のような窓

この窓のつくりを見て、ぼくはすぐ「中国の借景ですね」と言ったら、梁さんはそのとおりだと言いました。自分で設計したそうです。ちなみに借景とは、外部の風景を絵画に見立てて、額縁のように空間を開け、風景を取り込むという中国の庭園建築の伝統的なデザイン手法です。

展示スペースの天井

展示スペースの上部だけ天井が見える構造に改装されています。また展示用のさまざまなライトアップも用意されています。

壁に照射されるライト

壁に照射される発光ライトは美術作品向け専用の機材を採用しているそうです。

梁餐泊ってどんなところ?

詳しくはこちら

味坊集団の梁さんが茨城の農村につくった「美食とアート」の拠点を訪ねる
https://forbesjapan.com/articles/detail/87475

なんて素敵なアイデアを梁さんは胸に秘めていたことか。梁餐泊が完成に至る過程を眺めていくうちに、ぼくはどうしても彼と一緒にやってみたい企画がありました。

それが同じ中国東北地方出身の金大偉監督の映画作品を上映し、味坊の料理をいただくという企画でした。今回それが実現します。

次に、金大偉監督についてご紹介します。

実は金監督はぼくより歳がひとつ下で、20代の頃東京で知り合いました。彼は当時テレビ局のディレクターをしていました。その後、局を辞めて、フリーランスで音楽やアート、映像作品の制作を始めます(ちなみに彼は多摩美の出身です)。

彼が来日したのは中学生の頃で、当時は日本語をうまく話せず苦労したそうです。

ところが、彼は次第に日本の学校生活に慣れ、高校時代はロック少年になったそう。文化祭でステージに立ってボーカルを担当していたというのです。両親ともに画家という芸術一家に生まれた金監督にとっては自然のことだったのでしょうが、ちょっぴり驚くようなエピソードです。

ただし、学生の頃の彼は自分の出自や民族について、あまり考えたりしなかったようです。そんな金監督が、なぜ『天空のサマン』のような作品が撮ることになったのか。

転機は2007年でした。その年の夏、彼は出身地の中国遼寧省撫順市を訪れました。数年前から自分が満洲族の血を引く人間であることを意識するようになり、故郷を訪ねて満洲文化の痕跡を探したそうです。

ところが、現地では何も見つからなくてショックを受けたといいます。当時、彼は「気づくのが遅すぎだ」と話していました。

その翌年から毎年のように金監督は中国東北地方各地を訪ねました。当地で知り合った満洲学の研究者らの情報提供や支援があり、どこそこに満洲語の話者やサマンがいると聞くと、現地をくまなく訪ねることにしたのです。

中国東北地方各地を訪ねる金監督

彼は現地で撮影活動をしていた当時について「自分の民族的アイデンティティーに関わる使命という面もあるが、目に見えない先祖の力に守られて、果たさなければならない天命のようなものがあった」と語ります。

詳しくは、以前ぼくが彼について書いた次のコラムをお読みください。

「もう時間がない」消滅寸前の満洲シャーマンのいまを追ったロードムービー
https://forbesjapan.com/articles/detail/64790

そして、金大偉監督の作品に賭ける思いについては、自身のYouTubeチャンネルで話をしています。こちらもぜひどうぞ。

消滅寸前の満洲シャーマン 〜映画『天空のサマン』について① 〜. 金 大偉文化アートチャンネルNo.0038

天空のサマン

「天空のサマン」紹介

映画『ラストエンペラー』で知られる中国最後の王朝 清帝国を築いた満洲族。彼らの信仰はサマン教(シャーマニズム)。天と人をつなぎ 霊性を重んじる伝統と言葉が、今 滅びようとしている。時空を越え伝わる人間の叡智、失われようとしている祈りの文化。民族のアイデンティティーを求め巡りゆくロードムービー! 

作品情報
監督・構成・撮影・音楽:金 大偉
2023年度作品/日本/118分
使用言語:満洲語、中国語/字幕:日本語 企画製作、配給:TAII Project
予告編
https://www.youtube.com/watch?v=u0LkaZ3sIbI
映画オフィシャルサイト
https://www.shaman-heaven.com/
金大偉 略歴
中国生まれ。父は満洲族の中国人、母は日本人。来日後、独自の技法と多彩なイメージによって音楽、映像、美術などの世界を統合的に表現。様々な要素を融合した斬新な作品を創出。主な映像作品は『花の億土へ』(2013)『ロスト・マンチュリア・サマン』(2016)『大地よ』(2023)『天空のサマン』(2023)など。
金大偉サイト http://kintaii.com

最後にぼく(中村)のことも少しお話します。

いまぼくはガチ中華を楽しむSNSコミュニティの代表をしていますが、本業は編集者であり、もの書きです。

いくつかの専門領域がありますが、そのひとつが中国東北地方やウラジオストクなどの極東の現地事情について書くことです。

地球の歩き方 中国東北編

「地球の歩き方」中国東北編の編集を始めるようになったのは、勤めていた出版社を辞め、独立した2000年代前半のことでした。友人たちがこの仕事をしていて、フリーとなったぼくは彼らを手伝うことになったのです

なぜ極東のようなエリアに関心を持つようになったかというと、ぼくの祖父母や親戚筋の多くの人たちが、戦前、満洲(現在の中国東北地方)で暮らしていたことがあります。

その話を祖母からよく聞いていたので、子供の頃からいつか訪ねてみたいと考えていたのですが、それが実現したのが大学生のときで、1980年代半ばのことでした。当時、中国は改革開放の時代を迎えていました。

それだけなら、ただの学生時代の旅行体験で終わったかもしれません。その後、ぼくの人生のひとつの転機になったのは、大学卒業後の同じ80年代後半、いまでいう「新華僑」と呼ばれる中国籍の人たちが数多く来日するようになったことです。ぼくが現地で知り合った人たちも含まれていました。

彼らはぼくと同世代であり、当時の中国の境遇や社会事情を少し知っていたので、最初はずいぶん驚きました。なぜって、彼らはそれまでの人生をいったん捨て、一から日本で始めることになったからです。なんて勇気があるんだ! ぼくはそう思いました。

金監督の家族の来日は、もう少し時期が早いのですが、彼も同じといえます。

それからいろんなことがあって……、ここではとても書き切れませんが、金監督や梁さんとの出会いは、ぼくにとってとても重要な出来事になりました。

ぼくは学生時代に始まった満洲の旅を、卒業して以降も続け、彼らが生まれた土地に足しげく訪れていた、ちょっと変わり者の日本人だったからです。自分の一族、あるいは日本の近現代史の主要な舞台であった満洲の今日の姿を知っておきたいという思いがありました。

とまあ、そんな事情で今回の企画を発案したところ、金さんも梁さんも喜んで賛同してくれて、よしやろうという話になったのです。

今年3月、2人の顔合わせを兼ねて、金さんと梁餐泊を訪ねました。そのときのことを、いつもぼくの街歩きやイベントでアシスタントをしてくれるTDCライターの文香さんが次のように投稿しています。

「日本家屋の骨格はそのままに、日本人の発想だけではなかなか辿り着かない大胆さが重ねられており、建築としても非常に興味深い空間でした。

室内には会食用のテーブルやピアノ、外には調理用の釜戸や鉄鍋、バーベキューができるスペースがありました。また古民家の周囲には味坊集団の畑や、羊等の材料の倉庫があり一つの村のようでした。

この日集まったのは、中村代表の東北地方出身の芸術関係のご友人である映画監督の金大偉さん、高斉環画伯の娘さん、そしてつくば繋がりのTDCライターという、なんとも不思議で面白い顔ぶれ。目的はただ滞在することではなく、『ここを拠点にどんな表現ができるか』を考えることでした。

映画監督の金大偉さんと味坊集団の梁宝璋さん

美味しい東北料理を囲みながら、金さんの作品を投影したり、ピアノを演奏したり、展示について語り合ったり。

梁さんも中国の東北地方出身で、美術を学ばれた経歴の持ち主。お三方の話は料理や芸術の話にとどまらず、文化や民族の話、自身らのルーツへと広がっていきました。それぞれが異なる背景、経歴を持ちながらも、どこかで重なり合っている、そんな感覚のある時間でした」

ぜひこの上映会にご来場ください。上映後は、ぼくと金監督、梁さんのトークも考えています。

現代を生きる満州族サマン映画上映&中国東北料理の宴in梁餐泊
日時
2026年8月2日(日)11時から
場所
梁餐泊
茨城県つくばみらい市中平柳587(最寄り駅はつくばエクスプレス守谷駅)

※集合場所 つくばエクスプレス守谷駅 中央東口1階 *当日は9時半から30分おきに3回に分けて、守谷駅からの送迎を予定しています。
参加費用
10000円(映画チャージ2000円 味坊料理8000円)
スケジュール(予定)
11:00~ 「天空のサマン」上映(118分)
13:00~  映画に関するトークイベント
    (金大偉監督×梁宝璋×中村正人)
13:30~ 東北料理の宴
    (主なメニューは、味坊農園でとれた無農薬野菜を使った豪華フルコース東北料理とドリンク飲み放題)
主催
 東京ディープチャイナ研究会
お申込み
お申込みはこちらからお願いします。
https://lifeescort-mail.com/p/r/xoWLVami

最後に、味坊農園のとれたての野菜を使った料理の数々を紹介します。みなさん、ご一緒に食事も楽しみましょう。

(東京ディープチャイナ研究会・中村正人)

梁餐泊「アートと美食」の饗宴~満洲族サマン映画 & 中国東北料理の宴
最新情報をチェックしよう!