-

金萬福エビマヨに合う「唐宋紹禮」って何? 南方急行「黄酒ペアリング会」の結果発表!

TDCでは、これまで中国酒の魅力について何度かお伝えしてきました。

金萬福エビマヨに合う「唐宋紹禮」って何? 南方急行「黄酒ペアリング会」の結果発表!

この記事は、上海在住の萩原晶子さんが書いてくれた紹興酒の本場、紹興にある咸亨酒店の本店を訪ねたレポートです。ご存知の人も多いかと思いますが、咸亨酒店は1894年創業という歴史のある店で、魯迅の小説『孔乙己』にも出てくる老舗です。

この老舗居酒屋で体験できるのは、甕入りの紹興酒を量り売りして飲めることです。

*糯米(もちごめ)や黍米(きび)などの穀物を主原料とした中国の醸造酒の総称は「黄酒」と呼ばれていますが、本稿では、まぎらわしいので日本で一般名称となっている「紹興酒」とさせてください。本来紹興酒は、浙江省紹興市産で、鑑湖の湧水を使用するものと定められています。

実は、それと同じ体験が日本でできる店があるんです。

新宿御苑前の中国南方家庭料理店「南方急行」
新宿御苑前の中国南方家庭料理店「南方急行」です。同店では、複数の紹興酒を甕(かめ)から量り売りで提供しています。

南方急行の紹介記事

日本の中華料理店、これはガチ中華の店も含めて、たいてい紹興酒は置いてありますが、複数の銘柄が置かれている店は少なく、あっても同じ銘柄の何年ものかの違いで値段が違うくらいで、銘柄そのものを飲み比べすることはできません。だから、多くの人は「まあこのへんで適当に飲むしかないな」という消極的な選択肢で紹興酒を飲むしかなかったのです。

紹興酒の数々

ところが、南方急行では、料理に合わせた飲み比べができるのです。これ、ガチ中華界にとっても画期的なことではないでしょうか。なにしろ一口に紹興酒といっても、銘柄によって驚くほど味わいが異なるからです。

同店で提供している紹興酒の数々を厳選してくれたのは、中国酒探求家で『黄酒入門』(誠文堂新光社 2023)の著者である、donさんこと門倉郷史さんです。

『黄酒入門』(誠文堂新光社 2023)

ガチ中華の料理のバラエティは驚くほど豊かで、「中華といえば紹興酒」という認識も定着しているはずなのに、日本人のほとんどが多様な銘柄を味で選んだり、料理とのペアリングについて考えたりしてこなかったことは残念というほかありません。

とはいえ、そんなにいろんな銘柄があること多くの人は知らなかったのですから、仕方がありません。そこに登場してきたのが、門倉さんの「黄酒入門」。まさに「こういう本がほしかったのだ!」と思ったものでした。

紹興酒ペアリング会の様子
黄酒の各種銘柄の違いを解説する門倉さん

さて、7月8日の夜、門倉さんの提案で、南方急行で提供している甕入りも含めた8種の極上紹興酒と料理のペアリングを決めるための試食会があり、11名の中国酒好きが参加しました。

南方急行の人気メニューと相性の合う紹興酒はどれなのか。みんなで料理を味わいながら、飲み比べするという、とってもゼイタクな集まりでした。

以下、その結果発表です。

  1. 山の民レモン鶏★白塔(甕出し)
  2. 黄金麻婆豆腐★百吉納奶
  3. 炒めポテサラ★越王台18年善醸酒
  4. 金萬福エビマヨ★唐宋紹禮(甕出し)
  5. 角春雨の醤油炒め★王宝和(甕出し)
  6. 海苔と豚肉の炒め物★金朱鷺黒米酒
  7. 汁ハンバーグ★即墨老酒
  8. 発酵トマトと牛肉スープ★西塘本酒

それぞれの料理と銘柄について紹介しますね。紹興酒の解説は門倉さんによるものです。お酒というものは、人によって感じ方が違うものですが、試飲会参加者のユニークなコメントも添えておきます。

紹興酒ペアリング会の様子
紹興酒ペアリング会の様子

山の民レモン鶏★白塔(甕出し)あるいは百吉納奶

山の民レモン鶏と白塔(甕出し)あるいは百吉納奶

中国語で「手撕柠檬鸡」。茹でた鶏肉とパクチーやレモンが和えたエスニック感漂う雲南らしいメニュー。夏にぴったりな酸味と爽やかさが味わえる一品。

白塔は、伝統製法を守りながら、甕入りとしては珍しいノンカラメル。味わいに奥行きはあるが、ライトで爽快。中華食材店などでもよく置かれています。

ここでは、いきなり議論が分かれました。料理の酸味に合う紹興酒はどれかというのが議論の焦点でした。

「百吉納奶は酸っぱさと甘さが喧嘩しない」「百吉納奶は爽やかな酸味で調和性がある」
「西塘本酒もワインっぽいので合う」
「初心者には白塔が合うのでは」

この先もそうですが、今回のペアリングはあくまで当日集まった11名の人たちが決めた暫定的なものであることをお断りしておきます。

黄金麻婆豆腐★百吉納奶

黄金麻婆豆腐と百吉納奶

金萬福さんが日本で創案したメニューのひとつ。御年72歳とは思えないほどのパワフルさで、その元気さには脱帽です。香港出身の金さんならではの、真っ赤な四川風とは一味違う、酸味もともなう味わいです。

百吉納奶は、いわば世界的にも稀なるミルクワインです。内モンゴルの草原を彷彿とさせる青草の爽やかさとミルキー感。パクチー等のハーブを使った料理と合います。

「百吉納奶の甘みと酸味が黄金麻婆豆腐のカボチャの甘み、麻婆の辛味と合う」
「百吉納奶の酸味と甘さが調和する」
「西塘本酒のドライな感じが合う」

という声も。

炒めポテサラ★越王台18年善醸酒

炒めポテサラと越王台18年善醸酒

中国語で「老奶洋芋」。名前の通り、炒めたポテトサラダです。「ポテサラだけど、温かい?」と最初は驚きましたが、なかなかにイケる味。ポテサラ・ジャガイモの食感を残しつつも、焼かれたことで香ばしさが加味されています。オイリー感はありませんが、トウガラシや山椒が追加されたことで、ポテトチップスのようなジャンキーさも生まれて面白い味です。

越王台18年善醸酒は、濃厚でコクがありながら、味はしつこくなく、親しみのある味わいです。本来、しっかりした辛みのある料理や肉料理と合う。「善醸酒」というのは、仕込み水に紹興酒を使用するのが特徴。

実はこの料理に合う紹興酒については、意見が大きく分かれました。

「芋の料理に紹興酒は合わないかも」
「意外にピリ辛味なので、ドラゴンハイボールにすると合いそう」

金萬福エビマヨ★唐宋紹禮(甕出し)

金萬福エビマヨと唐宋紹禮(甕出し)

おなじみ金萬福さんのエビマヨ。エビを二度揚げすることでパリッとした食感が残るんです。さらにマヨネーズに練乳を入れる発想は驚き! 箸が止まらない理由に納得です。

唐宋紹禮は、実をいうと、横浜中華街の老舗店が「本物の紹興酒」を日本に伝えるべく立ち上げたブランドです。爽やかな酸味としっかりした旨味が特徴。

「辛口の唐宋紹禮が合う」
「唐宋紹禮の辛口が油を切る」
「エビマヨはノンカラメルこそ合う」
「マヨの風味が良い。脂味が金朱鷺黒米酒のポリフェノールで切れる」

という声も。

角春雨の醤油炒め★王宝和(甕出し)

角春雨の醤油炒めと王宝和(甕出し)

中国語で「家庭炒凉粉」。緑豆のでんぷんから作られた角春雨は口の中でとろけるような食感。角春雨はほんのり豆の風味と甘味がある程度ですが、味付けが醤油とニンニクでしっかりしているので、全体として調和が取れており、箸が進みます。

王宝和は、約300年の歴史を誇るメーカー。刺激的で際立つ酸のなかに果実味も感じられ、飲み口もいい。

「角春雨のユニークな食感と甘辛のちょいピリを王宝和の甘口が整える」
「すっきり味の王宝和は、実はどの料理とも合う」
「王宝和は紅焼(中華風醤油味)と合う。王道の味」
「百吉納奶の乳感が春雨の食感と合う。料理のコクと酒の酸のバランスが良い」

という声も。

海苔と豚肉の炒め物★金朱鷺黒米酒

海苔と豚肉の炒め物と金朱鷺黒米酒

中国語で「炒紫菜猪肉」。見た目は”のり佃煮”だが、口に運ぶと全く異なる味わい。シンプルな塩味の味つけですが、海苔の旨みに豚肉の脂が加わり奥深い味わい。海苔の食感はシャッキっと感と滑らかさのバランスが絶妙。ごはんと一緒にいただく一品です。

金朱鷺黒米酒は、陝西省の古代米を使用。爽やかでフルーティな味わい。肉や海鮮、野菜など、どんな料理にも合う。

「金朱鷺黒米酒は口のなかで甘みが増し、料理の味の奥深さを引き出す」
「金朱鷺黒米酒はコクがあり、この料理とペアリングするべし」
「海苔は日本酒っぽいものが合うので、白塔。海苔の風味を邪魔しない」「王宝和のうまみが海苔の甘みを底上げする」

という声も。

汁ハンバーグ 100g★即墨老酒

汁ハンバーグ 100gと即墨老酒

中国語で「清炖狮子头」。優しい鶏ベースのスープと、口の中でふわりとほどける肉団子が疲れた体に沁みる、まさに”ご自愛メニュー”。握り拳大の肉団子というインパクトのある見た目に反して食感も味つけも優しい。江蘇省揚州の代表的な料理。

即墨老酒は、山東省青島産の原料を使ったスモーキーフレイバーで、個性あふれる唯一無二の味わい。発酵、スパイス系の肉料理にちびちび合わせて飲むのが乙。

「スープものはマリアージュが難しい。食べて飲むのではなく、飲んでから食べる」
「即墨老酒を先に飲んでから、残った香りと肉を迎えたい」
「即墨老酒は上品な味わい。自分の好きなものがマッチしたイメージ」
「スープが塩味なので王宝和が合う」

という声も。

発酵トマトと牛肉スープ★西塘本酒

発酵トマトと牛肉スープと西塘本酒

中国語で「酸湯牛肉」。貴州風の牛肉入りトマトスープです。酸味とほんのりしたトマトの甘みが味わえます。

西塘本酒は、日本もろみ造りに似た段仕込み、うるち米を使うなど日本酒に近い製法が特徴。黄金の酒色が美しく、味わいもレモンのような柑橘系の酸味と米由来のやわらかな甘みが融合している。

「西塘本酒は甘味があってワインぽいので、トマトスープと合う」
「西塘本酒は白ワインの位置付けに近い」
「日本酒好きな人は西塘本酒も合う」
「王宝和が料理の味を膨らませる。酸×酸」「「即墨老酒の焦げ感が肉にマッチ。トマトの酸と甘みも合う」

という声も。

さて、いかがでしたでしょうか。実際に南方急行に足を運んで、各種銘柄を乃井比べしつつ、ご自身の料理とのペアリングを探してみてください。

門倉郷史さん

最後に、門倉さんからのメッセージです。

“南方家庭料理×中国地酒の会”を始めました!

「もっとカジュアルに中国酒を楽しんでほしい」
「中国酒に興味のある人たち同士で繋がりたい」

そんな思いもあって、4月から南方急行さんを借りて、同店の中国家庭料理と甕出し紹興酒6種、そして各地の中国地酒を飲み比べしながらワイワイ楽しみましょう。

門倉郷史さんとムーさん

ただ飲んで食べるだけでなく、登場する中国酒たちの理解も深まるようオリジナルのレジュメも作成してお渡しするので、参加するほど中国酒への造詣も深まっていくことでしょう。

これからも中国酒好き・興味のある人たちとの繋がりを広げていきたいと思っています。

金さんとムーさん

最後に南方急行で飲める紹興酒のリストを紹介しておきましょう。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

南方急行

南方急行

新宿区新宿1-3-8 Ykb新宿御苑B1
03-6380-6558

最新情報をチェックしよう!