徐々にロックダウンの解除が進んでいる上海(2022年5月中旬現在)。
この約1カ月半の間に、私の家には大量の配給品(無料)が約20回届きました。
日本では上海のロックダウン下における食糧不足が報道されていますが、地域差までは報道されていません。
私が住む徐匯区は偶然配給量がトップだったそうで、2位の閔行区との差がなんと2倍。
食糧不足などを訴える声を集めた動画『四月之声』(Youtubeで視聴可能)もリアルな話ですが、一方で食材が大量に届いていた地域があることも事実なのです。
配給に地域差が生まれる理由はふたつ。
ひとつは区や街道(区の下に位置する地域政府)のトップに力があり、供給側とつながりがあること。配給される調味料や日用品のメーカーが区によって違うことから、トップとメーカーのつながりは区によってバラバラのようです。
ふたつ目は、老幹部がたくさん住む地域かどうか。徐匯区のなかでも天平街道と、私が住む湖南街道は特に多いそうで、配給品の量が注目されました。
配給の内容は、主に野菜のセット、米、乾麺、乾物類、卵、牛乳、豆腐類、肉類、加工肉、饅頭、ちまき、調味料各種、油など。これらが4〜5日に一度届く感じです。
ほかにトイレットペーパー、洗剤、石鹸、歯磨き粉、マスクなどの日用品も来ていました。
足りない食材は「美団買菜」で早朝予約。私は一般的な小区(団地やマンション)住まいではないため、団購(グループ購入)は人数が集まらず、あまり使っていませんでした。
また、食べきれないもの、苦手で食べられないものは、近所の人にあげたり交換したりしながら使い切る工夫もしていました。
配られる食材類は、上海の一般家庭で普段から使われているものがメイン。使い方を調べると、お店の料理ともまた違うディープ過ぎる中華の世界を知ることができます。
私が作っていたものは和食や洋食中心でしたが、現地料理でしか使えないものもあり、「百度」で料理動画を検索しつつ初めて作ってみたものも。
今回はそんな「自作配給料理」をご紹介したいと思います。
まずは「葱油拌麺(ツォンヨウバンミェン)」。
上海を代表する麺料理で、まぜそばの一種です。ネギを焦がした油と老抽(たまり醤油)、生抽(醤油)、砂糖を和えるだけなのですが、意外に奥が深い。
「2(砂糖)、3(老抽)、5(生抽)、6(ネギ油)の比率」というものがあるそうで、何回か作ってもまだ「これ」という味に至っていません。
あとは、配給で来た生抽のおいしさも初めて知りました。日本の醤油よりやや甘口で、これと味覇(買い置き)でラーメンのスープを作ると失敗がないです。
配給品の中には、「お店で食べるのは好きだけど、家では使ったことがない食材」がたくさんありました。
その代表格・鴨血(鴨の血豆腐)と香干(干し豆腐)は、「毛鴨血(マオヤーシュエ)」に。
ニンニクとショウガに、買い置きの藤椒油と「眉州東坡」の福辣醤(豆板醤に似た辣油)で炒めたら、本格的な味に仕上がりました。
「眉州東坡」は、北京発の四川料理店。店頭やECで売られている四川系調味料は使い勝手抜群です。常備していてよかった……。
香腸(中国式ソーセージ)も、自分では買ったことがない食材。
これが使われている料理としてパッと思いついたのが「煲仔飯(バオザイファン)」です。ちょうど配給で届いたブロッコリーとその葉っぱを入れて作ってみました。
土鍋で半分まで米を炊き、具材をのせ、生抽、オイスターソース、砂糖、ごま油をまぜたタレをまわしかけて追い炊きするだけ。
思ったよりも簡単。おこげもできて大成功でした。
配給で届いた米は計15キロ。ロックダウン解除後も「煲仔飯」はコツコツ作り続けると思います。
骨付きの豚肉は「そのうちスープに」と冷凍して放っておいたのですが、日に日に気温が上がってスープの気分ではない気候に。
ビールも気軽に買えるようになってきたので、「蒜香骨(スァンシャングー)」を作ってみました。ローカル食堂によくある、豚スペアリブの唐揚げです。
下味は、ニンニクのみじん切り(すりおろさないのがポイント)、黄酒、生抽。鶏にも応用できそう。
日本の唐揚げより香ばしい風味に仕上がります。
そのほか、腊肉(四川式燻製肉)、醤肉(醤油漬けにして干した豚バラ肉)、豆沙包(あんまん)、挂麺(中華乾麺)なども、配給がきっかけで買わず嫌いしていたことを反省した食材でした。
乾物(白キクラゲ、百合根、黄花菜、キノコ類)や午餐肉(スパム)など、日持ちするものは放置中。
使い方を調べながら徐々に使っていく予定ですが、日常が戻ったら、まずは普通の居酒屋で酒かな、しばらく料理はしないだろうな、とも思っている日々です。