池袋のガチすぎる店「大宝麻辣誘惑」「小城故事」「太陽城」「山和故里」知ってる?

いまや「ガチ中華の聖地」といわれる池袋に「ガチ中華」が現れたのは、2000年前後からです。

池袋の最長老といっていい東北料理店「永利」がオープンしたのは1999年12月のこと。

その後、ポツポツと店が現れてくるのですが、2000年代の早い時期にオープンした店のひとつが、今回最初に紹介する「大宝麻辣誘惑(タイホウマーラーユウワク)」という東北&四川料理の店です。

実はこの店、2013年までは「大宝」(現在もその名前は残っています)という、いかにも中国人がつけそうな店名で、現在とは違う人がオーナーでした。

麻辣誘惑(マーラーユウワク)

池袋西口(北)出口を出て、線路沿いを歩いて約5分。華やかなにぎわいのある東池袋とは違い、線路を超えた北池袋のやけに昭和的ともいうべき場末感がうつろに漂うロケーションに位置しています。

店内は中国に実在していそうな食堂のリアルな雰囲気で、料理の味もガチそのもの。当時から火鍋をはじめ日本にはない東北料理や四川料理を提供していて、知る人ぞ知るディープなスポットだったのです。

たとえば、こんなことがありました。

中国の旧正月である春節前夜、この店には中国の若い留学生や会社員が集まっていました。彼らはケーブルテレビで中国版紅白歌合戦を観ながら、大みそかの宴を過ごしていたのです。

当時、東京ではこの日が中国の人にとって特別であることを知る人は少なかったと思います。訪日観光客もまだ来ていない時代でした。そんな彼らと一緒に酒を酌み交わしているとき、なぜか癒しを感じたことを思い出します。

現在のオーナーは王爽さんという遼寧省瀋陽出身の女性です。実をいうと、彼女は今回紹介するガチな4店(「麻辣誘惑」「小城故事」「太陽城」「山和故里」)と最近中華スイーツのお店(後で紹介します)をオープンさせたばかりのやり手のオーナーです。

現在のシェフは、王さんと同郷の遼寧省瀋陽出身の陳守営さんです。

麻辣誘惑シェフ陳守営さん

陳さんの手になる料理を紹介しましょう。

四川料理の人気メニューで白身魚を大量のトウガラシと油で煮た「水煮魚」や「口水鶏(よだれ鶏)」。
四川料理の人気メニューで白身魚を大量のトウガラシと油で煮た「水煮魚」や「口水鶏(よだれ鶏)」。
海鮮を真っ赤な激辛スープで野菜と一緒に四角い大鍋で煮込んだ「麻辣海鮮」。ビールやご飯が止まりません。
海鮮を真っ赤な激辛スープで野菜と一緒に四角い大鍋で煮込んだ「麻辣海鮮」。ビールやご飯が止まりません。

2店目の「小城故事(しょうじょうこじ)」はもともと「大宝2号店」でした。店の看板に「錦州小串」という文字が見えますが、これは遼寧省錦州という渤海に面した海沿いの町の名物である串焼き「焼烤(シャオカオ)」のことで、この店が中華BBQの店だとわかります。

小城故事

おすすめは羊肉から海鮮まで特製スパイスがかかった串焼き料理。

特製スパイスがかかった串焼き料理

王さんがこの店を前オーナーから引き継いだのは2015年のことですが、彼女は思い切って内装を新しくしました。

小城故事:中国っぽいLEDの電飾で飾られた不思議な空間
これは店の2階ですが、いまどきの中国っぽいLEDの電飾で飾られた不思議な空間です。

「若者向けの店にしたかったのです」と王さんは話します。

その理由はあとで説明しますが、実はこの店、昼下がりの閑散時に訪ねると、1階の厨房のあるフロアでスタッフの女性がテーブルに羊肉を山盛り載せて、夜の営業の前に串を刺していたりするのどかな光景が見られます。中国の現地の食堂を訪ねたときのような愛すべきガチな風景です。

この店のシェフは麻辣の本場、重慶出身の黎永兵さんです。

小城故事シェフ黎永兵さん

最近の「ガチ中華」の店では小籠包から炒め物までなんでもありの店が多いですが、この店で本場の四川料理が味わえるのは、シェフが重慶出身だから。現地と同じ味にしてほしいと一言伝えるとガチな味になります。

小城故事の料理

ですから、この店では具材の種類が豊富な串焼きをメインに掲げながらも、実は「酸菜魚」のような四川の人気料理も楽しめるのです。確かに店の雰囲気はガチすぎると感じるかもしれませんが、穴場というべき店ではないでしょうか。 

店に入ると、自分が東京にいることを忘れてしまいそうになるのが、3店目の「太陽城(たいようじょう)」です。

太陽城

東京に住む中国の人たちに聞くと、池袋で断然盛り上がっている「ガチ中華」といえばここ。2019年8月にオープンしたこの店の人気の理由は「焼烤」、すなわち中華BBQの串焼きです。

先ほど海沿いの町、錦州の名物といいましたが、この地に限らず、中国の夏にビーチ沿いの屋台でビールと一緒によく食べられているのが「焼烤」です。中国の若者が大好きなのは当然で、ここは串焼きの種類がやたらと豊富で、カラオケも楽しめることから、週末は予約が必要です。夕刻になると、店の前には行列ができています(だから、王さんは「小城故事」でも「焼烤」を売りにしたいと考えているのです)。

太陽城店内:開放感あふれる店内では中国ポップスが流れています。
開放感あふれる店内では中国ポップスが流れています。

シェフは遼寧省開原出身の朱厚斌さんです。

太陽城シェフ朱厚斌さん

カキやホタテの貝焼きにイイダコやイカ、そして中華食材の定番カエルまで各種BBQは特製ダレに付けて食べます。

太陽城の料理

4店目は薬膳スープが選べる火鍋屋「山和故里(さんわこり)」です。

山和故里

ここは、以前は「小尾羊(シャオウェイヤン)」という中国の蒙古火鍋チェーンだったのですが、2020年12月、王さんは共同経営者の佐藤氷心さんと一緒に同じ業態でありながらも、スープの種類が違う中華火鍋の店としてオープンしました。

スープが違うというのは、蒙古火鍋の基本が麻辣スープではなく、羊スープをベースとした火鍋だったということです。実はこの「小尾羊」は日本初出店の中国外食チェーンとして知られ、最初の出店は2008年の新大久保店でした(同じ時期に同業態の「小肥羊」も日本出店しています)。

店内は広く、落ち着いた雰囲気の個室もあります。

50種類以上の多様な食材が楽しめる本格薬膳スープ火鍋です。羊や牛をはじめタコやイカの海鮮、鴨の血、スパムや野菜に加え、自分で鍋に落として食べるエビや鶏のつみれが特に絶品です。

スープはキノコやトマト、もつ鍋、鶏白湯、花椒たっぷりの麻辣味まで10種類以上あり、1色から4色まで選べます。

山和故里の料理

タレの種類もなんと30種類あり、組み合わせによる味変が思う存分楽しめるのが魅力です

そのうえ、この店では鍋の隣で焼肉までできます。火鍋と焼肉が両方食べられる店は池袋でもここだけではないでしょうか。

店長は黒龍江省ハルビン出身の史広艶さんです。日本語をきちんと話す方なので安心です。

山和故里の店長史広艶さん

さて、王さんがこれまで池袋に出店してきた「ガチ中華」は、東京に住む中国の人たちには支持されていますが、一般の日本の人にはちょっとディープすぎると感じたかもしれません。実際、それぞれの店の日本語対応は、スタッフにもよるのですが、ちょっと心もとない店が多いのは確かです。

それだけ池袋は都内各地から中国の人たちが「ガチ中華」を食べに来る町として有名なのです。そのぶん、経営的にはそれほど日本人客を相手にしなくても成り立つ面があったのだと思います。

でも、王さんは話します。「これだけ池袋に中国人経営の店が増えてしまうと、中国人頼みの商売だけでは難しいところがあります。日本のお客様にもぜひご来店いただきたいと思っています」。

そんな王さんは、8月上旬、平和通りにある太陽城の隣に中華スイーツ屋の「Filomena(フィロメーナ)」をオープンさせました。

Filomena(フィロメーナ)

店内で焼き上げた各種中華スイーツをはじめケーキやエッグタルト、コーヒー、タピオカが楽しめるカフェです。

王爽さんが店を案内してくれました。

Filomena(フィロメーナ)のスイーツをもったスタッフさん

「ガチ中華」のオーナーたちは常に私たちの想像を超えた新しいスタイルの店を池袋に創出しています。ぜひ訪ねてみてください。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

大宝麻辣誘惑

麻辣誘惑

豊島区西池袋1-44-10 花鳥風月ビル1F・2F
03-3971-5668

小城故事

小城故事

豊島区池袋2-43-2 FINOビル
03-5955-1550

太陽城

太陽城

豊島区池袋2-49-10
03-5985-6668

山和故里

山和故里

豊島区池袋2-7-3 ロビービル 2F
03-5911-2289

フィロメ―ナ(中華スイーツ)

フィロメ―ナ(中華スイーツ)

豊島区池袋2-49-14
03-6907-3742

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