近頃巷に急増中のディープ中華、メニューの選び方入門編

これほど多くの本場の中華が東京にあふれる時代、どうしたら自分好みのおいしいものにありつけるのでしょうか?

必ずしも有名店でなくても、おいしい店はたくさんあります。ただし、中国語圏のオーナーが営むディープ中華の店は、これまで私たちが慣れ親しんできた町中華とは、メニューの中身が相当違います。

彼らは来日して以来、日本人の口に合わせた料理を提供しようと努めてきました。ランチの定食や食べ放題メニューなどがそうです。でも、これは本場の中華とはいえません。むしろ、いま注目されているのは、そういう定番以外の「ニューウェイブ中華」と呼ぶべき料理です。

最近になって都内で働く中国系の人たちが増えたことや、中国の外食産業の急速な発展とバラエティ化にディープ中華のオーナーたちが影響され、次々と新しい味覚を提供し始めました。それがディープ中華が登場した背景で、いままさに東京で花開かせようとしているのです。

このたび当研究会が企画制作した「攻略!東京ディープチャイナ~海外旅行に行かなくても食べられる本場の中華全154品」(産学社)という案内書では、ディープ中華の魅力を紹介しています。

以下、この本の使い方を通じて、私たちにとって未知なるディープ中華の味わい方をなるべく解説したいと思います。

当初、この本を企画するうえでいちばん重要だと考えたのは、ディープ中華のメニューの中身をいかにわかりやすく伝えるかということでした。これらの店でどんな料理が食べられるのか。それを知ることからすべては始まると思ったからです。

ディープ中華の店のテーブルに置かれたメニューを開くと、たくさんの料理の写真が並んでいます。同書では、このメニュー(中国語で「菜単」といいます)にならい、実際に都内で食べた料理の写真を並べて簡単な説明を付けました。

さらに知ってほしいと考えたのは、中国各地の地方料理の大まかな見取り図です。中国は広く、各地方によって特徴的な味つけや食材の異なるいくつかの系統があるからです。

ざっくりと東西南北の4つに分け、北から時計回りでいうと、華北・西北(しょっぱい/羊肉、粉食)、華東(甘い/海鮮)、華南(さっぱり/「机以外の四つ足は食べる」というほど多彩)、西南(辛くて痺れる/川魚)です。一般に中国の四大料理(北京、上海、広東、四川)といわれる分類がこれです。

実際にはもっと細かい系統に分かれるのですが、そういう違いを知ったうえで、実際のお店のメニューと同書を照らし合わせながら、料理を選んでみることをおすすめします。

同書では、以下のようなジャンルと地方に分けて料理を分類しています。

【ジャンル】麻辣/羊料理/麺/小吃

【地方】四川/東北/華北・西北/湖南/雲南・貴州/上海/香港・広東/福建/台湾

どのジャンルや地方料理が自分の口に合うかは、人それぞれです。正解はありません。

都内のディープ中華の店では、特定の地方料理だけでなく、複数の地方料理をメニューに載せているところが大半です。なかでも必ず入っているのが四川料理。東北の店でも上海の店でもそうです。いろいろ食べられるほうが客も喜ぶからでしょうし、店側も人気の四川料理は外せないようです。

おかげで、ディープ中華の店のメニューのなんと分厚いこと! 一軒の店でこんなにたくさんの料理をつくれるのかと驚いてしまうほどです。

たとえ、同書の紹介する料理とまったく同じものがメニューになくても、頼むと鷹揚につくってくれるのが、ディープ中華の調理人です。でも、そのためには自分が何を食べたいか、イメージをつかんでおかなければなりません。その下準備として「東京ディープチャイナ」本を活用してみてください。

これまで日本人の口に合わせた定番メニューばかりつくってきた彼らにすれば、日本人がこういうものを食べたいと意思表示してくれるのはうれしいのです。

たいていのディープ中華の店は外もそうですが、店内の壁にも大量の料理写真を貼り出しています。彼らがそこまでするのは、逆をいえば、自分たちの料理が日本人に知られていないことを自覚し、もっと知ってほしいと考えている表れともいえるかもしれません。

でも、これらの料理こそ、本当は日本人に食べてほしい、その店のおすすめ料理といえます。

ちなみに中国語でおすすめ料理のことを「推荐菜(トゥイジエンツァイ)」「特色菜(トゥスーツァイ)」といいます。注文のとき、日本語でいいので「おすすめ料理は何ですか?」と尋ねてみてください。

またこれらの店では、新作メニューをつくるのにも積極的で、黒板などに「上新菜了(新作メニュー)」と書かれていることが多いので、要チェックです。

さて、中華はもともと大勢でワイワイ言いながら食べるもの。せめて3~4人のグループで行かないと、本当はいろいろ食べられないところがあるのですが、ひとりでもニューウェイブ中華を体験できる方法があります。

ひとつの方法は、定食を選ばないで、メニューの中からディープ中華のメイン料理を一品+小吃という組み合わせで注文することです。

ここでいう小吃は、主食代わりに小籠包や中華風ネギ入りパンケーキの葱油餅(ツォンヨウビン)などの素朴な粉モノ料理を指します。もし一品の料理がひとりでは多すぎたら、お持ち帰り(中国語で「打包(ダーバオ)」といいます)してもらいましょう。ディープ中華の店では、デリバリーも盛んなので、気軽に料理を詰めるパックとビニール袋を用意してくれます。

そして、もうひとつの方法は、特色あるランチメニューを出す店を探すことです。一般に中華の定食メニューは酢豚やホイコーロー(回鍋肉)、チンジャオロース(青椒肉絲)のような定番メニューの店が多いなか、最近は魅力的な定食メニューを出す店が現れています。

たとえば、池袋の四川料理店「蜀一蜀二」(豊島区西池袋1-38-3 b-toss池袋8F)では、ランチメニューに水煮肉片(シュイジューロウピエン 牛肉の四川風煮込み)や酸菜魚(スアンツァイユィ 白身魚の酸菜鍋)など、夜ならメインの一品となる料理がランチになっていて、しかも1000円以内で食べられます。

また新大久保の中国朝鮮族料理店「延吉香」(新宿区百人町2-2-1 REMAX新大久保ビルB1F)では、葱爆羊肉(ツォンバオヤンロウ ラム肉のネギ炒め)が800円のランチで食べられます。

ひとりでも、このような特色のあるランチメニューのある店を探せば、ディープ中華が楽しめるのです。

今後、面白いランチメニューの店を見つけたら、報告したいと思います。                           

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

四川料理店「蜀一蜀二」豊島区西池袋1-38-3 b-toss池袋8F
中国朝鮮族料理店「延吉香」新宿区百人町2-2-1 REMAX新大久保ビルB1F
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