予想を上回るたくさんの方にお申込みいただいた香港氷室(ホンコンカフェ)のイベント「WKWと香港のいまをつなぐ10のこと」が9月10日・24日と2回にわたって開催されました。
参加してくださった方、ご協力してくださった各方面の方に感謝を込めてご報告します。
今年の夏に入ったころ、香港氷室(ホンコンカフェ)のオーナー陸さんから東京ディープチャイナに連絡があり、イベントを企画してほしいとのとご相談をいただきました。ちょうどそのころ、香港の映画監督王家衛(ウォン・カーウァイ 以下WKW)の代表作5本が本人による4kリマスター版で全国公開されるというニュースが。そこで映画配給会社と香港氷室の橋渡しを東京ディープチャイナが引き受けることになったのが、今回のイベントの始まりでした。
8月19日から全国で公開中の「WKW 4k」は「恋する惑星(重慶森林)」「天使の涙(墮落天使)」「ブエノスアイレス(春光乍洩)」「花様年華」「2046」の5作品。
WKW4K ウォン・カーウァイ4K 5作品
これらは1994年から2000年にかけて世界中で大ヒットした映画で、当時を知る世代には実際に旅した香港の風景とも重なる思い出深いものばかりです。
私は当時、雑誌に映画の紹介記事を書いていたこともあって、どれも何度も見返した映画です。それが今回、監督自身の手による4kリマスターでどんなふうに生まれ変わったのか。当時を知る人にも知らない世代にも、この機会にWKWの映画の世界をより深く楽しんでもらえる企画を、と考えたのが香港氷室(ホンコンカフェ)のイベント「WKWと香港のいまをつなぐ10のこと」でした。
映画配給会社の方と相談し、イベント会場で映画のシーンの静止画を使う許可をいただき、どんなイベントにするか、打ち合わせを重ねました。
会場は学芸大学駅に近い「香港氷室(ホンコンカフェ)」(東京都目黒区鷹番)。
オーナーの陸さん・陳さんご夫婦は香港出身の若い世代です。そこで私は映画の中のいくつかのシーンから当時の香港を感じる場面や事柄を抜き出し、2022年のいまの香港とのつながりや移り変わりを現地の写真とともに紹介してもらうトークショー形式のイベントを作りました。
香港在住のお友達に現地の写真を手配したり、スライドをつくったり、忙しいながらも幸せな作業でした。そしてたくさんの方にお申込みいただいたおかげで抽選になってしまい、「同じ内容でもう一度やりたい」という陸さん夫婦の熱い希望で2回の開催になりました。
イベント1回目の9月10日はちょうど中秋節にあたり、会場の窓からもきれいな満月が見えたそうですが、私は全く余裕がなくて、満月を見たのは帰り道でした。そして2回目の9月24日は、台風が関東を直撃するかもしれないという日で、私は前日からドキドキ。幸いにも大きな影響なく開催できました。
2回にわたって行われたイベントをここでかいつまんで紹介します。
まず、イベント参加者に召しあがっていただいたのは小谷店長特製の楊枝甘露シェイク。楊枝甘露は香港の人気のスイーツで、香港氷室(ホンコンカフェ)でも夏の限定メニューとして大好評でした。これを今回のイベントではコロナ対策もあって、シェイクの形にしてくれたのでした。
「WKWと香港のいまをつなぐ10のこと」
のキーワード
- 【便利店】コンビニ
- 【重慶大厦】チョンキンマンション
- 【半山行人電梯】ヒルサイドエスカレーターとその周辺
- 【窗花】窓の鉄格子(てつごうし)
- 【街市】ストリートマーケット
- 【湯】スープ
- 【報紙】新聞
- 【飯盒】弁当箱
- 【的士】タクシー
- 【牌子】香港ブランド
映画の中の10 のシーンがいまの香港ではどうなっているのか、陳さんが広東語で説明し、陸さんが日本語に通訳するという形でトークが進められました。
10個のキーワードはどれも思い入れのあるものですが、なかでも現代のフレッシュな香港事情が興味深かったのが、「便利店(コンビニ)」と「的士(タクシー)」と「街市(ストリートマーケット)」でした。
「便利店(コンビニ)」は映画では若き金城武が缶詰を探す「恋する惑星」冒頭の印象的なシーンの舞台でした。2022年の香港の写真もまったく同じ場所の同じサークルKの写真を紹介してくれました。そしてコンビニでも売られていて、香港カフェのメニューにも使われている即席麺「出前一丁」香港版についても詳しく解説。次のお土産はこれ、と思った人もいよたうです。
「的士(タクシー)」は映画「花様年華」の切ない帰り道でおなじみ。そして現代の香港と言えば、ちょうど2022年7月に料金が改訂されたばかり。現代の香港のタクシーはアプリでの配車が主流になりつつあるそうで、ここには書けないグレーゾーンのお話も聞けました。
「街市(ストリートマーケット)」は香港では少なくなっているとはいえ、現代でも味わい深い風景です。写真でも紹介された北角の街市はなくならないでほしいです。一方、参加者もスタッフも実際にはまだ行っていない今年出来たばかりの新しい形の「中環街市(セントラルマーケット)」も紹介してくれました。ビルのモールの中に市場が集約されていくのがいまの時代かもしれません。
会場には、広東語を勉強している方や映画の舞台になった時代の香港を知らないどころか、生の広東語を初めて聞いたという若い世代の参加者もいて、感想ももらっています。
私は、王家衛の映画を最近初めて観ました。最初に観た『花様年華』が特に印象に残っています。
私にとって香港は行ったことも見たいこともない場所です。しかし、映画の中の香港はどこか懐かしく、古き良き時代だなと素直に感じる、不思議な感覚がしました。
そのことは、私たち若い世代が憧れ、夢想する、今はもう無きレトロを映画に見出すことができたからだと思います。
興味深いと感じたのは、人々の生活の描写です。屋台料理を持ち帰るために使っている入れ物はなんだろう? 飲んでいるスープはどんな味? この豚肉の料理はなんで名前なのだろう? 興味が尽きませんでした。
イベントはそれらの興味関心をより増幅し、香港の生活や文化に親しめるとても良い機会でした。
― 二ノ宮彩実 ―
「以前は若者に人気の気軽な観光地だった香港も、いまでは少し行きづらくなってしまったように感じたので、リアルな香港のいまを感じることができて、興味深くお話聞いておりました!
私の場合、『ブエノスアイレス』で王家衛を知り、『天使の涙』で圧倒されました。
私が思う王家衛作品の面白いところは、豊かな色彩表現と生々しい人間模様です。
― 山田一衣 ―
また今回、旗袍専門店「Qpao」で店長をしている平山茅さんとその友人が1930年代の上海をイメージした旗袍を身に付けて、参加されていました。
旗袍専門店「Qpao」
「WKW 4k」はまだまだ公開が続きます。映画公開期間中は映画の半券を持って香港カフェに行ってみてください。半券提示で現代の香港で人気のドリンクをプレゼントしています。
香港氷室(ホンコンカフェ)では、今後も現代の香港を伝えるイベントを開催していきます。10月は「香港のラジオ事情」がテーマだそうです。香港カフェではいつも店内に香港のラジオ放送が流れていて、リアルな香港を知るチャンスになりそうです。詳細はまた追ってお知らせしますね。
毎週火曜日と水曜日は、陸さん陳さんがお店にいる「広東語デー」です。もちろん日本語でも大丈夫ですし、広東語の初心者もガンガン話したい方もこの機会に話してみてください。
大歓迎ですよ。
最後に香港氷室オーナーの陸さんからのメッセージです。
この度は『W.K.W.と香港の今をつなぐ10のこと』へご参加していただき、誠にありがとうございました。
今回は東京ディープチャイナさんに協力していただいて、初めて行うイベントで、まだまだ至らないところが多いですが、たくさんの香港迷にご参加いただき、本当に感無量です。
香港冰室の目標のひとつとしては、日本↔香港への架け橋の役割を果たし、香港や広東語が好き、香港や広東語のことをもっと語りたい方々のコミュニティを作ろうと思っておりますので、今後もこのようなイベントも行います。引き続きよろしくお願い申し上げます。
店舗情報
香港冰室(香港カフェ)
目黒区鷹番2-15-11 産伸ビル2F
03-6303-0646
http://hongkongcafejp.com/