錦糸町「劉の店」で台湾の旅情をくすぐるレトロな駅弁を味わう

これは何だかわかりますか。海沿いを走る赤い車両の鉄道が描かれたレトロな絵が描かれたパッケージの右に「台鐵便當」と書かれています。そう、これは台湾鉄道で販売されている駅弁です。

よく見ると、品名は「傳統排骨便當」と書かれています。この駅弁は台湾高速鉄道、通称「台湾新幹線」の台南駅で購入したものです。

では、中身はどうなっているのか。「排骨(パイコー)」とあるように、台湾名物の骨付き豚バラ肉入りの弁当です(これは先ほどの写真とは別に、在来線の台南駅で購入した排骨便當です)。

ごはんの上にドーンと骨付きポークがのっており、その存在感に目を見張ります。周囲に高菜や煮玉子、さつま揚げ、干豆腐が詰め込まれています。この無骨さというか、大胆さがたまりませんね。

これが駅の売店です(2019年4月の写真)。排骨便當には大80元(約320円)と中60元(約240円)があります。このボリュームなのに、安いですね。

何より楽しいのは、台南駅では乗客たちがホームのベンチに座って列車を待つ合間、駅弁を食べていることです。

これやってみたい! すぐに駅構内の売店に駆け込み、台南駅特製の排骨便當を購入しました。そして、自分もベンチに座って地元の人たちと一緒に駅弁を食べたくなったのです。

「臺南」という繁体字の駅名表示は日本の旧字体っぽくて味がありますね。それにしても、台南の人たちはこの駅弁がホントに好きなのでしょう。電車に乗っても食べている人を見かけましたし、この女子学生さんも、ホームのベンチに腰かけて弁当をつついています。のどかだなあ。

台湾の駅弁は日本統治時代からあるといいます。こういう光景を思い出すたび、駅弁を食べるためだけにでも、台湾に行きたくなります。

さて、駅弁に欠かせないのが、地元の台湾ビールです。台湾ビールは日本のビールに比べるとコクやキレはそれほどないですが、さっぱりとしていて、台湾の食事に合っている気がします。そもそもこの南の島に遊びに来ていて、日本と同じような苦味はなくてもかまわな気がします。

台湾ビールも、日本統治時代から製造されています。台北に工場があり、1919(大正8)年に設立されています。当時は「高砂ビール」と名付けられましたが、戦後「臺灣啤酒」と改められました。

ちょっと面白いのが、台湾のご当地ビールです。これは現地のコンビニで見つけたのですが、マンゴー味やブドウ味、パイナップル味などのビールがあるのです。試しにブドウ味を飲んでみると、意外や甘さは控えめでおいしいです。昔のジュースのような口に残るベトツキ感もありません。果汁6.5%、アルコール2.8%というバランスがいいのかも。1本39元(約160円)でした。最近、都内の台湾料理店でもこのご当地ビールが飲める店があるようです。

コロナ禍で海外に行けないなか、旅の思い出にふけるのは楽しいものですが、東京で台湾鉄道の駅弁が食べられる店があります。JR錦糸町南口に近い台湾料理店「劉の店」です。

家庭的で落ち着いた店内には、オーナーの劉さんがシルクロードをはじめ、中国各地で撮影した写真がたくさん展示されていました。

メニューを見ると、「特製台湾鉄道弁当」(1210円)がありました。注文すると、出てきたのが2段重ねの、かつて台湾鉄道で使用されていたアルミ製の弁当箱でした。弁当の中身は、上段にメインの排骨や「茶雞蛋(チャージータン)」と呼ばれる煮タマゴ、高菜の漬物、インゲンなどの付け合わせが入っていて、下段にご飯と野菜の炒めものというもの。わかめスープが付きます。

台南駅で地元の人と一緒に食べた味を思い出しました。ああ、なんという幸せ。

これだけでも十分なボリュームなのですが、せっかく台湾料理店に来たということで、台南名物の担仔麺(タンツーミエン)も頼んでしまいました。淡いほんのりスープに肉ミソがかかった小碗入りの素朴麺です。パクチーがそっとのせられ、さわやかさを加えています。

都内には「劉の店」以外にも台湾鉄道の駅弁を食べられる店が増えているそうですが、最近の話題として、7月上旬、福岡にオープンした友誼商店の中華フードコート「友誼食府」でも食べられます。

同店は、池袋や立川にある中華食材店の同系列店ですが、店内に3つの食堂(中国朝ごはん、四川、台湾)が入店していて、なかでも人気は「台湾好吃」https://www.instagram.com/taiwanhoja/ という店だそうです。

同店で提供しているのがこの台湾駅弁です。この店の駅弁も2段重ねで、上段は煮タマゴやトマト入りの炒りタマゴ、厚揚げ、高菜、もやしなどがたくさん入っていてヘルシーです。

排骨や骨付きチキンなどのメインの具は下段に入っているのでご安心ください。このとおり。

この駅弁を発案したのは、店のオーナーの頼さんという台湾出身の人で、見た目もおいしそうですが、ボリューム満点です。


友誼商店の店長の游庭瑜さんは台湾出身で、インスタグラムを活用し、地元の福岡市民の集客に成功しているようです。
都内の友誼商店ではまだ見られないことが福岡では起きています。面白いですね。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

劉の店 

墨田区江東橋3-12-5
03-5600-2118

※同店は2022年春、常連客に惜しまれながら閉店しました。

友誼食府福岡店 

福岡市中央区清川1-14-13
092−791−8728
https://www.instagram.com/yuugifuk/

https://www.yuugi.jp/

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