台湾料理店でかねてから行きたかった店は、新橋にある「香味」です。今年で開店40年になるそうです。外観が周辺の店より異彩を放っているのでずっと気になっていました。今夜は、台湾料理店は初めてだという職場の人達を連れてきました。

- 1 木瓜牛奶、蘋果西打 (パパイヤミルク(左)とりんごサイダー(右))
- 2 白切雞 (蒸し鶏)
- 3 炸排骨 (骨付き豚リブロース唐揚げ)
- 4 花枝炒蒜菜 (ヤリイカと葉ニンニク炒め)
- 5 麻油腰花 (胡麻油の豚腎臓炒め)
- 6 沙茶牛肉 (青菜と牛肉炒め)
- 7 葡萄糕 (大根餅)
- 8 炒海瓜子(あさり炒め)と銀絲卷(台湾揚げパン)
- 9 麻婆豆腐
- 10 蝦仁炒蛋 (海老と卵炒め)
- 11 肉圓 (台湾豚肉くずもち)
- 12 四神湯(台湾風もつ薬膳煮込みスープ)
- 13 香腸高菜炒飯 (台湾ソーセージ高菜炒飯)
- 14 魯肉飯 (ルーローハン)
- 15 地瓜球 (台湾揚げもち)
- 16 鳳梨酥 (パイナップルケーキ)
- 17 花生湯圓 (台湾風白玉入りピーナッツスープ)
- 18 店舗情報
店内上部には赤い机に合わせて赤枠に書かれたメニュー短冊がずらり。こんなにメニューのある台湾料理店は初めてです。普通のメニュー本の他、分厚い「写真集」もあります。その下には台湾観光ポスターがぎっしり。この店の壁は何色かわかりません(笑)。



オーナーの河田康宗さんが「メニューは100種類あるよ!」と。店内は既に大賑わい。「休みの前日は予約しないと入れないからね~」とオーナーの奥さんで調理担当の碧さん。双子の息子さんと4人で運営しています。

着席後は康宗さんの飲み物の紹介から始まります。
台湾ビールを始め、台湾果汁ビール、台湾紹興酒も種類豊富で、ソフトドリンクにはなんと木瓜牛奶(パパイヤ牛乳)が!

これは台湾の屋台で搾りたてや、コンビニでも売っている定番ドリンクです。
好奇心を持ったEさんと、テンションが高まる私はそれを注文。絞ったパパイヤの味が牛乳にさらっとなじんでいるのがいいのです。
木瓜牛奶、蘋果西打 (パパイヤミルク(左)とりんごサイダー(右))

続いて、お通しはないから、その代わりにお勧めというこれ。
白切雞 (蒸し鶏)

康宗さんには「蒸し鶏は地鶏でないとおいしさが出ない」というこだわりがあります。青森の地鶏を使った温かい蒸し鶏は、Eさんが「プリップリでしっとり、なのに弾力と旨味がある」と言っているように、葱の香ばしさと、葱油が喉の通りをよくしてくれます。Uさんは「他の蒸し鶏は食べ飽きるけど、これはもっと食べたいと思った」そうです。
炸排骨 (骨付き豚リブロース唐揚げ)

揚げ物食べたいですよね! 台湾のとんかつは薄切りで、ほんのり八角が効いて香ばしい衣は、さつまいも粉も使いザクザクです。このカツを載せたご飯や麺も台湾の人気料理です。
花枝炒蒜菜 (ヤリイカと葉ニンニク炒め)

葉にんにくは成長すると実になってしまい、今しか食べられないそうです。
私も初めて見ました。ネギとニラのあいのこのような食感。葉からでも十分にんにくの味がします。
そして台湾はイカの炒め物がおいしいですね!どんな野菜にも合うし、私は台湾料理のイカセロリ炒めを食べて、自分でも作るようになったくらいです。
麻油腰花 (胡麻油の豚腎臓炒め)

月一回あるかないかのレア料理!食べると精が付くといい、女性が産後に毎日食べると、康宗さんが教えてくださいました。仕込みに1日かかるホルモンの”まめ”という部位は、豚レバーのような食感で全く臭味がなく、とても柔らかかったです。
沙茶牛肉 (青菜と牛肉炒め)

珍しい味付けの料理を食べてほしくて注文しました。台湾では定番の調味料「沙茶醬(サーチャージャン)」を使用しています。干しエビや魚介がメインの原料で少しざらつきがあり、これを食べると、口の中に一気に魚介の風味が広がります。

カルディ等でも購入でき、炒め物に一さじ足すだけでいつもと違う味になりますよ。
葡萄糕 (大根餅)

1皿4切入りですが「1.5人前にもできますよ」とひろさん。「餅」と言っても粘り気はなく、大根と片栗粉等で蒸して焼いたもので、店によって味付けが違う料理の一つです。香味では大根も粗めの食感が残り、濃いめの味付けです。たれもありますが、そのままでも十分楽しめます。
さて、食べれば食べるほど「なぜ新橋?」という疑問が浮かびます。
私が思う台湾料理店は、大体ちょっと下町やあまりゴミゴミしていない場所にあるイメージです。
質問したところ、康宗さんがお店の歴史を快く教えてくださいました。
タクシー運転手をしていた河田さんの父正明さん。台湾帰国中で当時日本駐在員の蔡さんが、正明さんのタクシーでの日本人への観光案内が気に入り、日本に戻る際に正明さんに、東京で一緒に働かないかと打診。
そうして1860年代、正明さんは家族と共に来日。当時、新橋・有楽町エリアでパチンコ店や多くの飲食事業を展開していた蔡さんの元で、20年以上レストラン経営を学び、キャリアを積みました。
その後1986年に新橋に「香味」を開業。当初は正明さんと康宗さんの弟含め親族4人での経営でしたが、実はその中に康宗さんは入っていません。その頃、康宗さんは兵役訓練のため台中に祖父母と残り、訓練後、夢だった建築家の道に進んでいました。


しかし、90年代前半のバブル崩壊により、正明さんの事業も低迷。正明さん以外は台湾に帰ります。
そこで康宗さんに声がかかり、建築業界も低迷していたため、2001年、熟考の末に碧さんと一緒に店を継承することに。
全く畑の違う業界に、康宗さんはとても大変だったそうです。ある時、客とトラブルがきっかけで「謙虚な姿勢で料理を紹介することが不可欠」と奮起し、メニューを徹底的に研究、季節ごとの台湾料理も学び始めました。
台湾の味を変えずに、日本人の好みに合わせる工夫も始め、現地では脂身が多い方が好まれる魯肉飯(ルーローハン)は、赤身を好む日本人向け赤身の割合を増やしたそうです。
コロナ禍では持ち帰り弁当に力を入れ、時短営業時には台湾に行けない、”台湾ロス”の人たちがここでご飯を食べ、台湾に思いを馳せていたといいます。「家族がいたから乗り越えられた」と碧さん。
持ち帰り弁当は今も人気です。
食材買い付けと装飾等、店内管理担当の康宗さん。接客・食材・調理法…多方面からお店のことを考え、常に工夫しています。だから私達は本当にブレない台湾料理を食べられるんですね。
では続けて料理紹介をしていきますよ~。
炒海瓜子(あさり炒め)と銀絲卷(台湾揚げパン)
一番楽しみにしていました!
挨拶に伺った時、碧さんが言っていたお勧めのもの。先日 TOKIOの松岡さんも番組取材で絶賛したほど。
あさりは北海道産の大粒を使用。まずは貝とスープをいただきます。緑の葉はなんと台湾バジル!少量でも存在感のある味です。スープは塩、醤油、バジルの味がわかり、複雑ですがコクがあります。
現地では炒め物の部類なので汁を飲む人はいないそうですが、私はこのスープを気に入って飲みました。
そしておいしそうなこんがりきつね色のパン! 切れ目にはなんと線が!

「絲」は青椒肉絲の「絲」でおなじみの「細切り」。そうか、中に「絲」があるという意味だったんですね!
そのままでも外カリで「甘めでおいしい」とIさん、「中がふわふわで感動!」とSさん。
康宗さんの閃きという、スープにつけてフレンチ風に食べるのがおススメとのことで、浸してみます。スープの色が洋風にない色なので不思議な気分です。パンに隙間もあるので、味も染み込みやすく、Sさんは「じゅわ~と染みて食感が変わるのが面白かったです」。そのおいしさに思わずニコニコしてしまいます。
麻婆豆腐

Uさんは麻婆豆腐があると必ず頼みます。見た目もさっきまでの料理と違い、味もちょっと尖っていて、これを食べたら、「あ、これまで食べてきたものは『台湾料理なんだ』」と気づかせてくれた料理でした。香辛料の効いたピリ辛の味つけです。
蝦仁炒蛋 (海老と卵炒め)

「今日の海老は大きい」としきりに勧める康宗さん。
食材は食材ごとに独自のルートがあり、海鮮は大きいものを選ぶのだそう。中華鍋の火力は強く、注文して速攻で出てきました。康宗さんの言う通り、海老がプリプリで甘味があります!卵もふわふわで、優しい鶏ガラの味わいを感じました。中華系料理の卵ってホントにおいしい。
肉圓 (台湾豚肉くずもち)
日本ではこのメニューがある店は数えるほどではないでしょうか。出てきた大きな肉まんのような形に「『くず餅』とあったから四角かと思った」とKさん。
甘辛のたれがかかった厚いでん粉ゼリーの中に、小さい豚の角切り。現地で食べた時はあまり好きではなかったのですが、これは癖がなくて食べやすいです、と伝えると「タレを独自で食べやすく工夫をしているから」と嬉しそうな康宗さん。パクチーと一緒に食べると味にしまりが出ます。
Kさんは「食感も硬いのかとかと思ったらプルンプルンで、デザートかと思ったけど、おかずとして成り立っていてとても美味しかった」とのこと。
四神湯(台湾風もつ薬膳煮込みスープ)

子のスープは作らない日もあるそうで、注文できて幸運です。以前台湾で飲んだ時に、歩き疲れた身体に染み入ったのを覚えています。口に入れた瞬間、色々な薬膳の混ざった味を感じ、目が開きました。台南で食べた味と全く一緒だったからです!
これが日本で飲めるとは…! 他にハスの実やハト麦等も入りなのも現地さながら。コロナ禍にここでお客さんが台湾ロスした心を埋めていたのも納得です。
香腸高菜炒飯 (台湾ソーセージ高菜炒飯)

中には台湾ソーセージも入っています。今回ソーセージを注文していないので、みんなにソーセージだけで食べてもらい、日本との違いを感じてもらいました。「ご飯の中に入っているとわからないけど、そのまま食べると甘い」とUさん。ご飯も油のりが絶妙で、パラパラしてとてもおいしかったです!
魯肉飯 (ルーローハン)

日本人の中でももうおなじみですよね! お店や家庭で味が全然違います。
香味のはしっかり味がついた肉、たれもご飯にしみて、もういっぱい食べているのに、本当にご飯が進みました。小中大と3サイズから選べるのもいいです。先述の通り赤身多めですが、台湾人で希望したら脂身を多くできるそうです。
デザートも種類が豊富でした!
地瓜球 (台湾揚げもち)

「さつまいもボール」と訳されていることが多いです。
このメニューを見て飛びついた私は、良さを力説しました(笑)。「日本のイベントだと作り置きが多いけど、現地では揚げたてが普通。揚げたてが食べられるなら絶対食べた方がいい」と。「それは食べるしかないでしょ」とEさん。もちもちの甘いさつまいも味。あ~幸せ。
鳳梨酥 (パイナップルケーキ)
なんとトースターで温めてくれます。あったかいと、より生地のバター感を感じられて甘味が増しますね。この食べ方、正解。パイナップルケーキは以前の食べ比べの記事もあるので、ぜひ読んでください。
花生湯圓 (台湾風白玉入りピーナッツスープ)
最後はこちら。これも台湾ならではです。
温冷が選べ、ホットで注文。こされたピーナッツスープの中に柔らかいピーナッツと黒胡麻餡入り白玉が入っています。何人かが「お汁粉みたい」と。確かにお汁粉のこしあんと小豆の対比になりますね。最後に優しい味のスープで良い食べ納めでした。
新橋の中の”リトル台湾”、でもメニューの種類が多くて台湾を思い出す味ばかりで、それが脳内にスケール大きく広がる感じです。お勧め料理を詳しく話してくださり、康宗さんの台湾愛もとても伝わってきました。(私もみんなに色々解説したので、彼らはダブルの解説を楽しんだと言ってくれました(照))
「食材を変えても、味は決して変えてはならない。本当においしい料理を作ることは、しっかりとした良い建物を建てることと同じ」と言い、建築家という異業種もしっかり今に活かされていることで、日本の台湾ファン、香味ファンを裏切らないのだと感じました。康宗さんの背中はとても素敵な後ろ姿です。
(aokinapple)
店舗情報
香味

港区新橋3-16-19
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