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氷のスープから温める上野のモンゴル火鍋「冰煮羊炉」は仲良しオーナーの店

今回は内モンゴル自治区(以下内モンゴル)出身の方が経営する、何やら「氷を使った火鍋」があるそうで食べに来ました。氷…?

場所は上野の「SAINUU 冰煮羊炉(セイヌー ビンジュウヤンロウ)(以下冰煮羊炉 )」。

「冰煮羊炉」看板
看板は青ベース。同じ中華料理店でも違う雰囲気

「セイヌー」とはモンゴル語でこんにちは。「日本でお店を出すのにちょうどいい名前かな」と教えてくださったのは、オーナーの一人サルーラさん。内モンゴル出身でモンゴル族です。名前のイメージよりも内モンゴルのモンゴル族は意外と少なく17%だそうです。ここで内モンゴルの地理を確認しておきましょう。

サルーラさんがお店にあるマグネットを使って内モンゴルの地理を詳しく教えてくださいました。

お店にある内モンゴルの地理のマグネット
首都は中央部のフフホト(呼和浩特)。現在サルーラさんはフフホトが拠点ですが、生まれてから14歳までいたつうりょう(通遼)はモンゴル族が多い地域だそう

主食についてもう一人のオーナー、ナリソさんに聞くと、内モンゴルは中国の北側にあるので麺も米も何でも食べるとのことです。

ではお店に入ります。

席までの導線にモンゴル語の文字と民族衣装を着た女性が描かれた大きな額。引き込まれます。

モンゴルのカレンダー

モンゴルのカレンダーも。

モンゴルのカレンダー
もうこれだけで博物館に来ているみたい

6名で予約し、店内唯一の正方形のお席に案内してくださいました。

「冰煮羊炉」店内

ここは入口側の席で、店内は奥行きがある

「冰煮羊炉」店内

お皿も日本では見かけない配色でインパクトが強いです。

「冰煮羊炉」のお皿
箸が置きやすいように凹みがある…!

火鍋のメニューはいくつもありますが、氷を使った火鍋は1つだけなので「冰煮羊ビンジュウヤンロウ(ラムのスペアリブと羊后足肉)」を注文しましょう。

肉は既に入っているので、女性が多いのもあり、具材は野菜やきのこモリモリでオーダー(女性強し(笑))。前菜も頼みました。

飲み物が来たのでカンパーイ!

ビール、ジョッキがめちゃくちゃ冷えてます…!中華系の店では珍しいです。

ビールジョッキ

鍋の到着です!黄金に輝く鍋の中に、透き通った大量の氷ときれいな赤身羊肉‥!色合いがとても映えます。この氷は水だけでできています。

「氷を使った火鍋」

サルーラさん自ら調味料を入れてくださいました。火鍋屋で目の前で調味料を入れるところは見たことがなく、こういったパフォーマンスもテンションが上がります。

入れた粉が生姜と知って驚き、ヨーグルトを見て感心、紹興酒を見てなるほどと、さすが中国、という感じの声があがり一同興味津々

入れたのは棗、サンザシ、陳皮などの薬膳、葱、生姜の粉、ヨーグルト、そして紹興酒。

棗、サンザシ、陳皮などの薬膳、葱、生姜の粉、ヨーグルト、そして紹興酒
調味料たち

ヨーグルトは胃腸に良く、ヨーグルトに限らず内モンゴル人は乳製品をよく食べるそうです。牛から作るヨーグルトが一番食べられていて、現地では鍋に固形のヨーグルトを入れることもあるそう。

火を入れて煮込んでいきます。静かにゆっくりと氷が溶けていくその様子もまた神秘的。

氷を使った火鍋の様子
氷から液体に変化

……そもそもなぜ氷を煮る? その答えがとても意外でしたが、すごく理にかなっていました。

インスタ映え向けの新しい料理法かと思いきや「内モンゴルは冬とても寒くて水を出しても凍ってしまうので。ならば氷からあっためちゃえ」という発想なんだそうです。すごい、すごすぎる…。

煮込んでいる間に前菜をいただきます(メニューの日本語訳は店内表記を記載)。

拌黄瓜(ニンニクのキュウリ)

拌黄瓜(ニンニクのキュウリ)

定番ですね。きゅうりのひと切れが小さめで、刻みニンニクの大きさとバランスがよくて食べやすい一品。

老醋花生(黒酢ピーナツ和物)

老醋花生(黒酢ピーナツ和物)

初めて見ました。黒酢とピーナツがこんなに合うなんて、みんなびっくり。ピーナツの食感はそのままに、中国の黒酢は砂糖が予め入っているので甘酸っぱさでボリボリ食べられてしまいます。

豚丸腸

豚丸腸

一口食べたら口内は一気に異国の卤味(煮込み)です。ちょうどいい感じの煮込み具合と甘さでホルモンの弾力も程よくあり、鍋スープの味とメリハリもあったので頼んでよかったです。Kさんは「ビールと相性抜群!」

スープが沸騰したので店員さんが灰汁を取り、黙々と一人分ずつスープを取り分けました。

豚丸腸の出汁

出されるがままに飲んでみると、何と言うか滋味深い味。塩胡椒、ヨーグルトからくる少しのまろやかさ、そして羊からの出汁。でも羊臭さはありません。

ここから野菜やきのこ等を入れていきます。

どれもとっても新鮮で、しめじは大きく、特に椎茸は肉厚!

それから筍等も入れました。

左から海老団子、揚げ湯葉、筍
左から海老団子、揚げ湯葉、筍

話に夢中でタレを作り忘れていましたが作りましょう。

調味料

おススメタレの配合が書いてあり「これがあるとありがたい…!」とUさん。

火鍋のタレの作り方
丸いボウルの左上:白ネギ、自家製辣椒、ゴマ
丸いボウルの左上:白ネギ、自家製辣椒、ゴマ
丸いボウルの左上:白ネギ、自家製辣椒、ゴマ
左下:青ネギ、味の素、自家製ラー油。奥には香油、山椒なども。
左上:砕きピーナツ、刻みニンニク、ごまだれ
左下:塩漬け豆腐(腐乳)。韮ソース、オイスターソース
左上:砕きピーナツ、刻みニンニク、ごまだれ
左下:塩漬け豆腐(腐乳)。韮ソース、オイスターソース

私は最近ごまだれベースが好きなのでこんな感じです。

ごまだれ、青ネギ、ニンニク、香油、パクチー、自家製ラー油。
ごまだれ、青ネギ、ニンニク、香油、パクチー、自家製ラー油。

Uさんはタレの配合表を見てつくりました。赤色のは塩漬け豆腐。これは塩気の他に辛味もあります。

火鍋のタレ
たれの境目に縁がなくアートのようにも見える…

さて、食べごろになってきました!

食べごろになった火鍋

その前にスープをもう一度飲んでみます。さっきより濃い色です。

火鍋のスープ

最初とは大分違い、野菜ときのこの旨味がよく出て、コクが増しています!

実は現地ではもっと脂が多いスープだそう。日本人の好みに合うように薬膳の配合等を何度も試作したサルーラさんはいいます。このスープの味付けだともう少し年配層が好むかなと思ってましたが、青年層にも人気で嬉しい悲鳴。長い日本の生活経験がスープの味やキンキンに冷えたビールジョッキのおもてなしにつながっているんですね。

このお店の開業経緯をサルーラさんにお聞きしました。

サルーラさんとナリソさんは約25年前の2000年頃、日本へ留学を仲介する日本語学校で出会い、初日から意気投合。サルーラさんは19歳で神戸に留学。日本語はモンゴル語と文法語順が同じで覚えやすかったとか。留学中はナリソさんと一緒に住んでいました。

大学で観光学を学び、卒業後は中国の大学で7年間観光学を教えていました。友達と食事に行き、その店の味付けやサービスの話になった時「私ならこうするかな」とよく思っていたといいます。

観光学という視点で飲食業やおもてなしにも興味があったサルーラさんは2017年、内モンゴルでモンゴル料理店を開業。

日本でも開業したく、2023年から計画を始め、その際に卒業後もずっと日本在住のナリソさんに声をかけ、共同経営で会社を立ち上げ。2025年10月に冰煮羊炉をオープン。

お店の場所は友人の友人から「新宿に自分の店を移転したいから店舗が空く」という紹介がきっかけで決まりました。ガチ中華店の多い池袋の物件も見ましたが、サルーラさんは落ち着きと自然のある上野が好きなのでちょうどよかったのです。アメ横方面の喧騒からも離れた不忍池に近く少し静かで、この店内の空間も落ち着きます。

最初は中国版TikTokでお店の紹介を始めましたが、日本人で通りがかった人、ランチを食べに来た人も興味を持ち、現在お客さんの割合は日中半々といいます。

サルーラさんは内モンゴルの自分のお店のマネジメントもあるため、フフホトと東京を頻繁に行き来しています。忙しい印象ですが、もう日本に大分慣れていて日本に戻ってくると安心するんだとか。ちなみに東京-フフホトは乗り継ぎで24時間かかるそうです。なので日本のお店は主にナリソさんが担っています。

気になっていた看板の色について「モンゴル文化で青色は青空と尊敬を表す色で、モンゴル族が大事にしている色だから」と入口脇にある「モンゴルの5色の旗」を見せながらサルーラさんが説明してくださいました。

この布は馬乳酒を渡す時に馬乳酒の下に敷いて使うものだという

羊肉も食べ頃です。

足の肉は脂身がなくしまっています。

一方スペアリブの方は少し脂身があり、足肉よりも柔らかいです。自家製辣椒につけるととても合います!辣椒は激辛とありましたが、そこまで心配するほどではなく、いくつか薬味がブレンドされているので実は辛いだけではなく甘さもあります。

野菜もスープの旨味を吸ってパクチーをのせたごまだれと良く合いました。Jさんごまだれに黒酢を入れたらあっさりと、また粉山椒を足したらパンチも効いて、これもまた良かったそうです。

もう一品、ラムしゃぶも注文しました。

ラムしゃぶ

ラムしゃぶ
鍋に沿って置けるお皿の形も合理的

モモの部分です。少し厚みがありますが、短時間で煮えて赤身が消えればすぐに食べられます。私は適度な柔らかさで口になじみやすくて気に入りました。

これら全ての羊肉ですが本当に臭味がなくて、羊ではないのでは?!と思うくらいです。内モンゴルの羊は輸入できないので、味が一番近いニュージーランド産を使用しているとナリソさん。羊の臭味は氷から温める故に消えるのだといいます。以前食べた羊がとても臭味が強くて食べられなかったというCさんですが「ここの羊は本当に食べやすい!」と言っていました。

ここで、焼売と餃子もきました。

ラム肉焼売

よく見る焼売より少し大きめで、すっごく薄い皮の中に肉汁と羊肉とニンニク、玉ねぎが入っていました。黒酢につけて食べましたが、大きい小籠包を食べているような感覚です。「羊に臭味がなく甘みがある!」とMさん。肉汁がこぼれたので黒酢と一緒に飲むととてもおいしいスープです。

SAINUU羊肉蒸餃(羊肉蒸し餃子)

ぽよんぽよんの生地の中に、こちらもあふれ出る肉汁と刻んだ人参。人参が餃子全体の甘味を出していて、羊の味も焼売よりも濃く感じました。Uさんが「日本ではまず食べない味」と言っています。生地もソフトでツルツル、肉と一緒に食べやすいです。

そして一番仕上がった状態のスープでご飯を入れ、雑炊にして締めます。

羊肉蒸餃のスープ

最後までスープを味わい尽くしました~!振り返って、Kさんは「辛いのは若干苦手だけど、塩味で安心して食べられた」。Mさんは「羊肉の固定概念を払拭してくれてとってもおいしかった!」と言っていました。

この日は売切でしたが、ヨーグルトのデザートもあり、後日食べさせていただきました。

ヨーグルトのデザート
ハートの入れ物の見た目にグッときます。食器のデザインて大事だなと思います

レーズンとスナックの他、かかった黄緑のフレークは青梅を乾燥させて伸ばし、砕いたものとナリソさん。内モンゴルならではの食べ物だそう。貴重な物が食べられました。

内モンゴルのラム肉焼売は知名度が高いですが「冰煮羊炉」の火鍋は中国国内でもまだあまり知名度がなく、中国人がこの店に来て初めてこの料理を知ることが多いそうです。面白い現象ですね。そういえば先日、日本で活躍する中国人漫画家の方も日本で同じ体験をしたと言っていました。

帰り道、私達の指からは羊の匂いがしました。それは今までにない火鍋の体験とモンゴル文化も知ることができた充実した時間を思い起こさせてくれました。「人を喜ばせるのが好き」と言っていたサルーラさん。その想いをしっかり受け取って帰りました。サルーラさんは今後お店を増やしたいとのことです。東京に来たらぜひ体験してほしい火鍋の一つなので、皆さんもぜひ行ってみてください!

(aokinapple)

店舗情報

冰煮羊炉

冰煮羊炉

台東区上野2-12-23 上野ユーワンビル3F

Writer
記事を書いてくれた人

ライターaokinappleさん
aokinapple

プロフィール

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