皆さん、台湾料理といえば何を思い浮かべますか? 魯肉飯? 牛肉麺?
実は、千葉県浦安市にある台湾料理店「富安茶楼(ふーあんちゃろう、以下富安)」では、台湾南北の魯肉飯((ルーローファン)台湾南方では肉燥飯(ローザオファン)と呼ぶ)の食べ比べや、台湾ではわりと見かけるガチョウ肉を食べられると情報を得て、今回、昼間は台湾料理は初めてというドイツ人の友達と、夜は私の仲間5人とで色々と食べてきました!


台湾在住で一時帰国中のOさんは椅子に座り「このテーブルと椅子、台湾そのものだね!」と驚き。そう、店内は台湾の飲食店の内装によく似ていて、居心地のよさそうな雰囲気です。


「ここはかつて祖父母が経営していた牛乳屋を2人で改装して作ったんです」と教えてくださったのはオーナーの野寺春夏(はるを)さん。


今回参加したIさんは浦安在住歴30年以上。牛乳屋の外観を覚えているそうです。実は昼間の店舗外観の写真を撮った時に「『雪印』入っちゃうな~」と思いながら撮ったのですが、すごく大切な意味があって、シンボルとしてあえて残してあったのですね!
これは納得です。「牛乳屋の頃はこの付近は田んぼだったと聞いています」と春夏さん。浦安というと埋立地のイメージですが、この店あたりまでは埋立地ではないそうです。
実は春夏さんには「本業」があって、それはなんと模型製作設計。ミニチュア鉄道模型で有名なNゲージを自らデザインして作ってしまう才能の持ち主なのです…!作品を快く見せてくださいました。これは台湾で走る「台湾鐡道」略して「台鐵」です。もう廃盤の車種とのことですが、これと同系統の電車は乗ったことがある人ならば、見るとテンションが上がります!
Nゲージが好きな方は、好きなことにハマるととことん追求しそうなイメージがありますが、この店内の雰囲気や装飾もそれが現れているように感じます。
では注文していきましょう。
富安の特徴の一つは、春夏さんの旅の中でおいしいと思ったお酒を台湾産だけで100種類もそろえていること!「色々選べて楽しい」と楽し気に話すKさん。

冷蔵保管しないものはカウンター等にある
その中でも、Iさんが好きでお勧めだというこれ。
バックスキン IPA(度数7%)

この製造会社は、台湾で有名なウィスキーブランド「カラバン」も手掛けています。ドイツの伝統製法で造られているそうで、グラスに注ぐと何か爽やかな香りがします。実は度数が7%ですが、吞みやすい舌触りですっきりした感じでした!
Jさんは自家製ライムシロップソーダを注文。私はそのジュースも飲みましたが、ちょうどいい甘さと酸味加減でとてもおいしかったです。自家製果実シロップは、春夏さんが友人に梅をもらったことが始まりで、その後コロナ禍になり、家でお酒を飲む用に色々な果実を漬けてみておいしいと思ったものをお店に出しているそうです。

この他に、数種類から選べる台湾茶やミルクティーもありました。
料理はこの中から選びます。

限定メニューやおススメは奥のボードから。

水蓮菜(すいれんさい)炒め

私は初体験ですが、台湾ではよく食べられていて、蓮根と同じで水中で育つ野菜だそうです。
水蓮菜炒めを準備していたところがちらりと見えたので、その現物を見せていただきました。とても長い!

こんなに細くて、穴も空いているのにシャキシャキの食感!同じ穴の空いた空心菜とは全然違います。これだけで箸が止まらない…。
そして入っていた種のある実。春夏さんが見せてくださいました。

「樹子粒(シュー ズ リョウ)」、日本語では破布子(はぶし)と言うそうです。食べると塩気のあるオリーブのような味がしました。野菜炒めや蒸し魚に定番で使うもので、この料理のよいアクセントになっていました。Jさん曰く、この実があるかないかで料理の印象が全然違うと言います。
空心菜炒め

定番料理ですね♪「空心菜は育ちすぎると硬くなってしまうけど、ここのは食べ頃でとても柔らかくておいしかった!」と台湾渡航歴の多いJさん。
大根餅

これはお店によって見た目と味が少しずつ違います。富安のは外側の薄い衣がパリッとしていて、中のほわほわの大根と2つの食感を楽しめます。ドイツ人の友達は「ハッシュポテトみたい!」と。
確かに私もそんな風に感じたことがあります!醤油ベースの味がついていますが、ここでは更に「油膏」という台湾ならではの甘いとろみ醤油がかかっています。
生マコモダケ

炒めたのは食べたことがありますが、生では初めて食べます。食感はエリンギをもう少し固くして、控えめにシャキシャキする食感です。何も味がないので台湾マヨネーズか台湾胡椒をかけて食べます。台湾マヨネーズは甘くて日本のものより白く、台湾胡椒は通常複数のスパイスで作られていて、これらは食べると台湾を感じるものの一つです。
そろそろ2杯目を飲みたくなったOさん。
最近紹興酒のおいしさに目覚めてハマっているので、台湾紹興酒を注文。
台湾陳年紹興酒(10年、度数16.5%)

Iさん曰く、中国の紹興酒は甘くて、台湾のものは甘味が少ないといいます。
少し飲んでみると、渋みがあるとまでは言わずとも濃厚な味わい。実は先日中国の10年紹興酒も試飲したのですが、確かに台湾のものは甘さは少ないように感じました。
台湾ソーセージ

付け合わせはいくつかありますが、富安では黒胡椒とパクチーが添えられています。
台湾のソーセージは基本甘いですが、富安のは少し甘さ控えめに感じました。(それでも黒胡椒よりソーセージの味が勝つイメージ)。パクチーが大丈夫なら、一緒に食べるとソーセージと相性抜群です!
これまで出てきたものは、台湾屋台や熱炒(ルーチャオ:日本の居酒屋)で出てくるものばかり。鉄道模型製作が本業の春夏さんがなぜ台湾料理店を?気になりますよね。
開業のきっかけは、コロナ禍真っ只中の時に旅行に行けなくなり、現地の人が作るアジア料理の動画を見ながら作り始めたこと。元々旅行好きでアジアの旅先で色々なお酒を飲むのが好きだった春夏さん。特に好きな台湾は40回以上行っており、何と市区町村全て行ったことのある強者。
今も台湾に行っては現地で厨房を見せていただいたり、オーナーにインタビューしたりしてブラッシュアップしているそうです。
最初は酒の卸売りを考えていましたが、「酒があるなら料理も一緒に出したい」とアジアの屋台料理を中心に独学で料理を学びました。その間「起業塾」に通った時に智恵さんと出会います。智恵さんの実家は富山県のラーメン屋で、何かお店を開きたいと思っていたところ、春夏さんの開業計画に興味を持ったそうです。
その後2人は結婚、2022年4月にアジア屋台料理店として富安を開業。富山の富と、浦安の浦を取った店名です。
「この頃はまだコロナも流行る回数が多く、マスクを外すのが少し照れくさい時期だったね」と智恵さん。外食もタイミングを見計らうような頃、写真家の春夏さんの父が撮った料理写真を載せたチラシを作り、一軒一軒のポストにチラシを投函して集客を図ろうともしましたが、効果はイマイチ。転機は開店して少しした頃に掲載された地域のフリーペーパー「浦安に住みたい」。この地域誌は読む方が多く、徐々に人気に。
当初はアジアの色々な軽食を出していましたが、だんだん台湾料理に絞っていき、現在は一部のアジア料理の人気メニュー以外は「台湾屋台と熱炒の間」として営んでいるのだそうです。

ではここからは富安の特に推しの料理を紹介していきます!
わんたん
昼の注文時に「わんたんは一番人気ですがいかがですか?」と聞かれて注文し、夜も注文。
一番人気だったので今も看板メニューの一つ。香港のワンタン同様の調味料「大地魚粉」も使用しているそう。 Iさんが「そのままでも味がついてる」とおいしそうに食べます。そのままでもいいですが、好みで2種類の酢と自家製辣椒でも食べられます。

台湾の酢だけ、中国の黒酢を想像して味見すると日本の酢と同じくらい酸っぱかったので驚きましたが、何か爽やかと思ったらフェンネル(茴香)が入っていました!

バクテー

春夏さんが台湾でよく食べる味を再現したというバクテー。バクテーもアジアの地域でテイストが違いますが、春夏さん曰くマレーシア系の味に近いとのこと。実はこれは隠れた一品だと思っていて、スパイスの味のバランスが良く、ほんのり癒される味でメンバーにも人気の一品でした。
鵝肉(アーロウ:ガチョウ肉)
塩ゆでして低温熟成したというガチョウ肉はとてもきれいな薄いピンク色です。日本の台湾料理店ではまだここでしか見たことがない貴重な料理です。
少し弾力がありつつもしっとりとした食感で、針生姜や台湾バジルを挟んで生姜味噌のソースでいただきます。このソースも店によって味が違いますが、このソースは日本人が好きな落ち着く味です。
魯肉飯(ルーローファン)


きました、南北の魯肉飯。どちらの味も捨てがたいので両方メニューにしたという春夏さん。メニューの中でも特に味を追求したそう。台湾南部には北部にはない美食が多くあり、いつもそちらを食べてしまい、実は南部の魯肉飯は食べたことがない私。
でも南北一口ずつ食べれば、食べたことがない人も違いがわかります。北は八角がわかる味で、南は甘い味付けです。私とJさんはやっぱり北派でした。
自家製アイス


豊富な種類も富安での楽しさの一つ。
頼んだ5種類の中でも、KさんJさん私が特に印象に残ったのが紅烏龍と擂茶。紅烏龍は台湾産茶葉、擂茶は台湾の客家民族に伝わる茶葉や複数の雑穀や豆をすりつぶしたお茶で、その材料を使用しています。
栄養価が高く、一杯飲むとおなかがたまり、一食をこのお茶で置き換えることもできる昔ながらの健康食です。どちらもお茶の味がはっきりわかり、お茶好きにはたまりません。また、個性的な味だったのは金柑アイス。クリームチーズのような塩気と酸味がありましたが、これは台湾の金柑ジャムを入れているそうです。面白い発想!
あの”おうち時間”が多くてネガティブに捉えられていたコロナ禍がバネになり、お店の開業やメニューにつながっていく軌跡を知って、とてもポジティブさを感じました。人生て何があるかわからないですね。
この夜は木曜日でしたが、小さな店内は常連さんや家族連れも来て賑わっていました。この住宅街に富安がオープンして4年、牛乳屋さんの名残を残したあかりの灯る店には、地域の方が気軽に来やすい台湾屋台がありました。
春夏さんは台湾や電車のことを気さくに、話せば話すほど詳しく教えてくださる方で、智恵さんはとても明るい方です。行った際にはぜひお2人にも話しかけてみてほしいと思います。
(aokinapple)
店舗情報
富安茶楼

千葉県浦安市猫実1-15-1
Writer
記事を書いてくれた人






