華流歴ドラ『月に咲く花の如く』に出てくる酸湯餃子は女性好みの味

コロナ禍で在宅時間が増えたので、中国語の勉強をしようと中国の歴史ドラマ(以下、華流歴ドラ)を見始めました。

華流歴ドラは大作だと80話以上、小作でも36話もあります。脚本は、山あり谷ありの連続! そして何よりも魅力的なのは登場人物。キャラが濃いだけでなく、誰かに陥れられたり、やり返したりする中で成長していきます。華流歴ドラは成長の物語! 気がつくと、はまっていました。

私のいちおしは、中国では2017年に放送され、中国版エミー賞と言われる飛天賞を受賞した『月に咲く花の如く(那年花開月正圓)』です。日本の衛星放送でも何度も放送され、いまもアンコール放送を待つファンが多い作品です。

この作品は、陝西省西安に近い泾阳(ジンヤン)を舞台にした商人もの。皇帝の寵愛を競う後宮ものは筋が読めますが、商人ものは全く予想がつかない展開にドキドキです。

孫麗さん演じる周瑩は、清朝末期に実在した女性商人です。

※孫麗さんは、日本でも話題になった中国版大奥「宮廷の諍い女」の主演女優です。

https://www.ch-ginga.jp/detail/isakaime/

主人公の周瑩は、傾いた嫁ぎ先を立て直し、西太后にも面会するほどの女傑です。ドラマでは大道芸人の娘という設定で、町一番の富豪「呉家東院」の若旦那様に嫁ぎます。新婚間もなく、夫は毒殺され、呉家東院も王族の権力闘争に巻き込まれ、没落します。ドラマの周瑩は、史実と同じように呉家東院を立て直していきます。

陝西省西安と泾阳の距離はバスで約1時間。西安に非常に近いのでドラマには西安の名物料理がバンバン登場します。

油溌麺(ヨウポーミェン)、肉夹馍(ロウジャーモウ)、水盆羊肉(シュイペンヤンロウ)、臊子麺(サオズミェン)など。どれもチャイニーズ中華の西安の麺料理を出すお店で普通に食べられるものばかり。忙しい周瑩が食べるシーンは、味わうというよりかっこむ感じです。

展開に大きく関係するなつめ入りのおはぎに似た「甑糕(ゼンガオ)」以外の名物料理は、どれも一瞬で終わってしまいます。

ネタばれになるので、詳しく書けませんが、この甑糕は周瑩と夫の呉聘との甘い新婚生活を意味しています。

甘く煮たなつめが入ったおはぎですが、西安で食べたところ、周瑩が言うほど、甘くなかったような…。実は、これも西安の朝ごはんのひとつです。

ドラマの展開にはそれほど関係がないのですが、紹介したい料理があります。

すごく美味しいのに、ビャンビャン麺人気の影に隠れてしまっているのがもったいなくて。それが「酸湯餃子(スワンタンジャオズ)」です。

ある日の周瑩のお昼ごはんは、その酸湯餃子(スワンタンジャオズ)でした。黒酢入りの辛くて酸っぱいスープで食べる餃子です。中国西北部の人は、もともと辛くて酸っぱい味が好きですが、酸湯餃子は、どちらかと言うと女性が好きな餃子という気がします。西安の食堂でも女性が食べている姿をよく見かけました。

お酢って、やはり健康にも美容にもアンテナをはっている女性が好きな調味料だと思います。陝西省第2の都市である宝鶏の手前に岐山という県があります。ここは美味しい黒酢で有名なところ。陝西省の人が麺や餃子を食べる時に欠かせない黒酢も岐山産のものです。

さて、酸湯餃子の肉は羊でも豚肉でもオッケー。野菜は葱、韮、いんげんなどなど。塩、ごま油、醤油で餃子の餡に味をつけたら、中国北部らしい、ぽてっと分厚い皮で包まれています。

おもしろいのは酸っぱいスープの作り方です。餃子をゆでている間に準備できるぐらい簡単。味精(中国版味の素)、鶏精(鶏のスープの素)、乾燥小エビ、塩、香菜、葱、醤油、黒酢をどんぶりに入れ、そこにフライパンで熱した辣油をジャ~ッと注ぎ、香ばしい香りを立たせます。

あとは餃子のゆで汁を加えるだけ。そこにゆであがった餃子を入れれば、酸湯餃子のできあがり。焼き餃子の重さはなく、水餃子よりもスパイシー。黒酢がきいた、さっぱりスープに入っているので厚い皮の餃子でも意外とたくさん食べられますよ。

お店で食べる酸湯餃子は、冷凍と違い、「手工(ショウコン)」と呼ばれる手作り。一口大に切った生地を細めの綿棒であっと言う間に丸く形作っていきます。

ぷくっとかわいい餃子。お店によって包み方が違います。皮の両端からひだをよせるところもあれば、そのままバチッと押さえてくっつけるだけのところもあります。

普通は、酸湯餃子だけでおなかいっぱいになりますが、辛くて酸っぱいスープをもっと楽しみたいという人は、馍(モウ)と呼ばれる素焼きのパンをちぎっていれるのもありです。

酸湯餃子は、ディープ中華の陝西省の料理や西安の麺を出すお店では、定番中の定番。大阪日本橋の「西安麺荘」では、油溌麺やラグメンと並ぶ人気料理のひとつ。道頓堀に近い「馍道(マイドウ)」でも食べられます。

また陝西省のお隣の甘粛省も酸湯水餃をよく食べるところです。難波の蘭州拉麺のお店では扱っていないのですが、東京の蘭州拉麺のお店で幅広いメニューを用意しているところなら、食べられると思います。

周瑩も食べた西安の定番料理、酸湯餃子は、水餃子が好きで、酸っぱくてスパイシーな味が好きな人におすすめです。

これは「西安麺荘」のメニューです。酸湯餃子は、酸湯水餃(スワンタンシュイジャオ)とも言います。

<シンプルBOX 5,000円シリーズ>DVD-BOX 1~3

発売元:エスピーオー/コンテンツセブン
販売元:エスピーオー 価格:各5,500円(税込)

店舗情報

西安麺荘 

大阪市中央区日本橋1-3-17
06-4256-1412
不定休

馍道(マイドウ)

大阪市中央区道頓堀1-1-9
豊栄ビル4階
06-7710-6758
無休

Writer
記事を書いてくれた人

浜井 幸子

プロフィール

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