「日本人の好みに寄せていない」という「ガチ中華」が少しずつ世間に広まりつつあるようです。
今年4月に研究会を立ち上げ、日々メンバーと都内に急増する「ガチ中華」を訪ね歩いてきた私たちにとってもうれしいことです。
では、ここでいう「日本人の好みに寄せていない」というのはどういう意味でしょうか?
そもそも「ガチ中華」とは何か? それは海を渡って日本に来た中国語圏の人たちが経営し、調理している料理のことです。

これらの店では、オーナーや調理人はもちろんのこと、配膳するスタッフ、さらにはお酒や食材を納入する業者もその一部は、中国語圏の人たちです。

彼らが提供する料理は、これまで多くの日本人が親しんできた中華料理とは相当違います。それは「日本人の好みに寄せていない」というよりも、彼ら自身が故郷を懐かしみ、自分たちの好みの味を求めるまま提供するようになったのにすぎません。

逆に言えば、これまで私たちが親しんできた中華料理というのは、中国各地から伝播した後、日本で現地化されたものだったのです。その最たるものは、もはや国民食であることを誰もが疑うことのないラーメンでしょう。
ですから「ガチ中華」は私たちに未知なる味覚を提供しているといえます。コロナ禍で海外に行けないなか、日本にいながら海外旅行先でグルメを楽しむのと同じような体験ができるということでもあります。
その最先端の舞台となっているのが東京です。おそらくですが、東京は世界の非中国語圏の都市の中で最もバラエティ豊かな「ガチ中華」が味わえる場所なのではないかと思います。
ところで、今日東京に生まれている「ガチ中華」には、大きくふたつの特徴があります。
ひとつは、これまで比較的知られてきた中国の四大料理(北京、上海、広東、四川)以外の珍しい地方料理が味わえるようになったこと。
最近、都内に急増している中国西北地方の羊料理や麺、小吃などがそうです。四川とは辛さの異なる湖南料理の店も現れています。

もうひとつは、中国語圏の最新の外食トレンドが次々と東京に持ち込まれていることです。

中国には日本のサイゼリヤや吉野家のような外食チェーンがたくさんあり、現地で人気のブランドが東京に出店しているからです。これらのチェーンは昔ながらの中華料理店のイメージを大きく塗り替えてくれるでしょう。
これまで現地でしか味わえなかった新しい食の体験が日本にいながら楽しめるようになったのです。これは時代がもたらした新しい食のシーンの到来といえるでしょう。
当研究会では、こうした新しい食のシーンを「東京ディープチャイナ」と呼んでいます。
では、「ガチ中華」はどこで食べられるのでしょうか?
それは日々当研究会のメンバーが食レポしてくれている店であり、まずは本サイトを詳細にチェックしていただければと思います。

さらに今年6月、当研究会では『攻略! 東京ディープチャイナ~海外旅行に行かなくても食べられる本場の中華全154品』(産学社刊)というささやかな案内書を上梓しています。
同書では、都内の「ガチ中華」を4つの人気のジャンル(麻辣、羊、麺、小吃)や中国四大料理とそれ以外の注目の地方料理に分類し、それぞれの主な料理説明+それが食べられる店を紹介しています。
この本があれば、自分の興味のあるジャンルや地方料理の店を見つけ、そこでどのような料理が食べられるのか、すぐわかる構成になっています。誰でも気軽に「ガチ中華」を体験できるように、すべての料理を写真入りで解説しています。
どのジャンルの、またどの地方料理の店に行っても、この本の写真を見せながら指さし注文できる共通メニューとして活用してもらえることを想定しています。
同書で紹介している店については、近々本サイトでもGoogleMapで一覧できるようにしたいと思っていますので、しばしお待ちください。
最後に余談ですが、当研究会では、「ガチ中華」のことを「ディープ中華」あるいは「ディープチャイナ」と呼んでいます。いくつかの理由があるからですが、呼び方自体は人それぞれ自由でいいと思います。
理由をひとことだけいうと、「ガチ中華」という呼び方にすると、誰がそれを「ガチ」かどうか認定するんだろう? という話が出てきます。考えすぎかもしれませんが、その種のことから少し距離を置いておきたい。ちょっと面倒な話だと思ったからです。
中国由来の料理が世界に伝播し、現地化してきた長い歴史を考えるとき、本場にこだわることはあって当然だと思う反面、その実態はさまざまで、時代とともに変化していくなか、なにも自分たちが「ガチ」かどうかを認定しなければならないことでもないのではと思ったりします。
要は、これまで自分たちが親しんできた味とは異なる食の世界があることの発見が大事。人ぞれぞれの個人的な感覚で「おいしい」とか「まずい」とか「口に合う」とか「合わない」とか、「ハマった」とか、きっといろいろあるはずで、そのあいまいな感じを表現するのに、なんだかよくわからないけど「ディープだな~」というのがちょうどいいかなと。
そんな思いで「ディープ中華」あるいは「ディープチャイナ」と呼んでいるのです。
■東京ディープチャイナ「ガチ中華」よくある質問
https://deep-china.tokyo/faq
(東京ディープチャイナ研究会)