池袋で江南の美食をいただく 友誼食府-その5上海料理–

池袋西口(北)にある中華フードコート「友誼食府」の4回目は、上海料理です。

上海といえば、経済成長した中国の代表的な都市で、市内を流れる黄浦江沿いに並び立つ摩天楼のイメージを誰もが思い浮かべることでしょう。でも、上海にはもうひとつの顔があります。それは、古き良き江南地方のイメージを伝える水郷のイメージです。食文化の観点からいえば、中国で最も豊かな地方とされる江南、すなわち長江下流域の風光明媚な土地から生まれたのが上海料理です。

味の特徴は、今日の「麻辣(マーラー)」ブームとは対極にある、甘くて濃い醤油味といえます。日本人の口に合う料理です。

ところが、上海料理というのはちょっと微妙な存在でもあります。上海料理は日本では「中国を代表する料理のひとつ」と思われがちですが、実情は少し違うのです。なぜなら、上海は19世紀半ばに生まれた歴史の新しい都市で、この地方のグルメ文化を代表するにはちょっと苦しい立場にあるからです。

上海料理の事情についてはこちら

さらにもうひとつの事実があります。

日本における上海料理は、いまや絶滅危惧種となりつつある中国地方料理の代表であることです。それはどういうことか。実をいうと、「上海」という看板を掲げる店はたくさんあるけれど、本格的な上海料理を出す店はとても少ないのです。その理由については、別の機会にお話しすることにしましょう。

ちょっと能書きが長すぎたでしょうか。
では、いまや稀少となった本場の上海料理はどこで出合えるのか。
そのひとつが、池袋の中華フードコート「友誼食府」の中にある「大沪邨(ダーウツン)」です。

「上海料理」と大きく書かれたメニューの中から主な料理を紹介しましょう。

左上からまず「豆腐脳(ドウフナオ)」と呼ばれる醤油ベースのあんかけ豆腐スープ。これは上海料理というより、広く中国全土で朝食となっているものです。お酒を飲みすぎた翌朝には胃を休めるといわれます。

「三黄鶏(サンホアジー)」は骨付き蒸し鶏で、四川では「白斬鶏(バイジャンジー)」といいますが、上海では鶏の皮の色が黄色みがかっているので、こう呼ばれます。一羽の鶏を丸ごと蒸して、骨ごと豪快に切り分け、ショウガ入り醤油ダレでいただく、さっぱりした冷菜です。

「盐水鸭/塩水鴨(イエンシュイヤー)」は、ここでは「揚州風アヒル」と書いてありますが、一般的には「南京ダック」と呼ばれる南京名物の塩味の淡白な鴨料理です。

「酸菜魚(スアンツァイユィ)」は「白身魚と高菜の野生山椒香り」とありますが、一般的には四川料理として有名です。白身魚を発酵させた高菜の酸菜(サンツァイ)や花椒(ホワジャオ=中華山椒)などで味つけた酸っぱ辛いスープで煮込んだ料理です。最近では上海でも人気料理なので、この店でも出しているのでしょう。テイクアウトもできます。

このさつま揚げみたいなのは、「四喜烤夫(シーシーカオフゥ)」というお麩(ふ)の醤油煮です。中国ではお麩は精進料理の代表的な食材のひとつですが、「四喜」というのは、シイタケやキクラゲ、ピーナッツ、黄花菜(ゆりの花)の4つの食材を使うという意味です。柔らかく煮込んだお麩は、ハッカクやシナモン(桂皮)の香りがして、口に甘い料理です。

そして、上海風汁入りワンタンの「餛飩(フントゥン)」です。細かく刻んだ豚肉や野菜などを混ぜたあんを小麦粉の皮で包み、いったん茹でてからスープに入れる小吃(シャオチ―)で、地域によって具材の中身や形状が違い、上海風は大ぶりなのが特徴です。

「肉粽(ロウソン)」はチマキのことで、中国では毎年旧暦の5月5日に食べる風習があります。もち米とお肉のみのシンプルなチマキがいちばん人気だそうですが、「咸蛋黄肉粽(シェンジータンホワロウソン)」とあるのは、塩漬けタマゴ入りです。

このシンプルな汁なし麺は、一般に「葱油拌麺(ツォンヨウバンミエン)」といいます。「上海風ネギ油そば」と書かれていますが、実際に上海や江蘇省でよく食べられています。

鍋に油を入れ、ネギやショウガ、塩などと加熱し、焦がし油をつくり、器に茹でた細麺を入れたあと、最後に焦がし油をかけます。黒く焦げたネギが香ばしく、素朴だけど食欲をそそる麺です。

「小籠湯包(シャオロンタンバオ)」は、上海名物の小籠包を少し大きめにして、甘みのあるスープが中にたっぷり入っているのが特徴です。食べるとき、れんげの上にのせて、箸で皮を破ってスープを少しずつ飲んでから食べるようにしないと、いきなり食らいつくとスープが熱くてやけどしてしまうので、注意してください。

もうひとつのメニューを見ていきましょう。

ここには、上海風の焼売や地元名物の「上海蟹売黄(シャンハイシエマイホワン)」、一般的には「蟹売黄酥餅(シエマイホワンスービン)」と呼ばれる甘じょっぱいあん入りのパイがあります。

月餅も甘いあん入りや肉入りがあります。

一品料理としては、スペアリブの黒酢炒めである「糖醋小排(タンツーシャオパイ)」があります。骨付き豚を小さく切り、ショウガと炒め、たまり醤油や黒酢、砂糖、料理酒、水などを加えて汁がなくなるまで煮込みます。やわらかくジューシーなスペアリブの甘みはクセになるおいしさで、上海の味覚を代表する料理といえます。

こちらは見た目が似ていますが、「熏鱼(シュンユィ)」という揚げ魚の甘露煮。燻製した魚を揚げて、甘辛いタレに漬け込んだ料理です。上海でよく使われる鎮江香醋(ジャンゴンヒョンチョウ)という黒酢が隠し味です。

ここはフードコートなので、調理できる料理は限られます。本格的な上海料理を味わいたければ、「大沪邨(ダーウツン)」の本店を訪ねてください。友誼食府から徒歩3分くらいの近所にあります。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

大沪邨

豊島区西池袋1-37-15 西形ビル3F
03-6907-0767

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