上海で13年、人気の台湾ビストロ「Bon Bon Bistro Tokyo」はいま、神保町にある

今回はTDCにオーナーからオファーがあり、中村編集長とこちらの店を訪ねることになりました。

昨年秋にオープンした、神保町の大通りを一本入った静かな通りに佇む台湾ビストロ「Bon Bon Bistro Tokyo 鳳鳳(フォンフォン)亭」です。

「Bon Bon Bistro Tokyo」
店の外観

日本での台湾料理店と言えば、どこか家庭の延長でテレビがついていたり、ちょっと雑多な雰囲気でそれを現地らしさとしている店や、豆花等があるカフェ調のお店の印象が強いですが、こちらは大分違います。

店内は赤を基調とした、現代的で少しアート空間のような雰囲気に、洋楽レコードや小説も装飾の一部のように置いてあります。写真で切り取ると同じ店なのにそれぞれ違う店のようにも見えます。

「Bon Bon Bistro Tokyo」店内
レコードはオーナーセレクト、小説は店員セレクト

この赤は、中華の赤ではなく「おしゃれなイメージの赤」と教えてくれたのは、オーナーの蔡杰廷(ツァイ ジエティン)さん。

大学でデザインを専攻しただけあり、内装、照明、音楽等、全て隅々までこだわり抜いたものが揃っています。以前は、上海で日本の表参道のような場所で13年間ビストロ等を経営していたそうです。

グルメレビューサイト(日本の食べログに値する)で上海の台湾料理店部門で5年連続1位を獲得した経験もあり、それは中国でもトップクラスを意味します。

「Bon Bon Bistro Tokyo」オーナーの蔡さん
オーナーの蔡さん
「Bon Bon Bistro Tokyo」扇子に書かれた上海時代のお店のメニュー
扇子には上海時代のお店のメニューが書かれています。蔡さんのお母さんの字だそう。達筆!
「Bon Bon Bistro Tokyo」上海で経営していた店のおしゃれな内装
上海で経営していた店のおしゃれな内装。展示する画家の作品により、店内の雰囲気がその都度変わったという
「Bon Bon Bistro Tokyo」
上海の英字紙に店の紹介が掲載されたことも

蔡さんは台北出身で、建築家の父と料理が好きな母の間に生まれました。母の陳淑鳳(チェン・シューフォン)さんは色々なジャンルの料理が作れ、レシピの一部はYou Tubeにもあり、本を2冊出版した経験もあります。

陳淑鳳さんお姉さんが共同出版した本の表紙
陳淑鳳さんとそのお姉さんが共同出版した本の表紙。日本の料理にも精通しているそう

※陳淑鳳さんの料理動画

台湾は外食文化と言われますが、蔡さんは、週末以外は家でご飯を食べて育ったそうです。両親の「万巻の書を読み、千里の道を行け」という考えの基、幼少期から長期休暇によく海外に連れて行ってもらっていました。

そのアウトプットの影響もあり、大学以降はニュージーランドとカナダでデザインを専攻した後、横浜で日本語を学び、その後は父の仕事の手伝いや一般企業でも勤務。上海にも滞在したこともありました。

蔡さんは当時の上海で「本当においしいパイナップルケーキや台湾菓子がない。そんなにおいしいわけではないのに人気店になっている」ことに気づきました。

「自分ならもっと良いものができるはず」という思いから、2010年に母のレシピを基にアレンジした手作りパイナップルケーキ等を出すカフェ「MISS BON BON」を開業。

その後、差別化を図るために食事も出すビストロを、母の名前の「鳳」から取り「鳳鳳亭」も開業、2023年まで計13年お店を営んでいました。お客さんは中国人、台湾人、外国人が約3割ずつだったそうです。

そんな蔡さんが次のステップに日本を選んだのは「秩序や人々への配慮、日々の暮らしの細部を大切にする国で生活し、働いてみたいと思った」から。

また、本や古い町並みが好きなので神保町を選び、「古い文化が残り、静けさと賑わいが共存するこの街のリズムが気に入っている」そうです。

そんなBonBonでは、どんな料理がいただけるのでしょう。

まずは飲み物から。とにかくアルコールの種類が多いんです。

海外各地に在住・渡航歴のある蔡さんならではの各国からのアルコールが揃います。

ちなみに17時半~19時のHAPPY HOURでは、一部の飲み物をリーズナブルな価格で飲めます。これはビストロへのハードルが下がって行きやすくなりますね。

HAPPY HOURのメニュー

編集長は台湾ジンのソーダ割、私は冬瓜茶ウィスキーをいただいてみることに。

ジンもいくつか種類があり、今回は蔡さんお勧めの台湾のものです。黒い粒はカンボジアのブラックペッパーだそうです…! 何か斬新です。

ウィスキー
撮影のためにボトルを並べています。

冬瓜茶ウィスキーは小さいグラスに入っていました。ウィスキーは初めて飲みましたが、台湾の冬瓜茶は甘いですが、その甘さが5分の1くらいに抑えられ、思いのほか飲みやすかったです。

これはウィスキーの中でも甘い、バーボンウィスキーを使い、甘い冬瓜茶に一番合うそうです。冬瓜茶とは違う甘さがまたポイントだそう。上海のバーにもあるそうです。

他にも、スパイスの陳皮をのせたハイボールや、金木犀を散らした華やかな見た目の物もありました。

陳皮をバーナーで焦がしてハイボールに入れるところ
カウンターにいると色々な方法でドリンクをつくる場面が見られて楽しい。写真は陳皮をバーナーで焦がしてハイボールに入れるところ
台湾茶
台湾茶にはこの急須と器を使う。急須がかわいい

あるグラスには「大吉(※吉の字は、上の部分が『士』ではなく『土』の漢字)」と「大利」と書かれており、「大利」は中国語で縁起のいい言葉だと店員さんが教えてくれました。

「大吉(つちよし)」も日本の「大吉」と同じく縁起のいい言葉
「大吉(吉の字は、つちよし)」も日本の「大吉」と同じく縁起のいい言葉

もう飲み物だけでこんなにも色々な視点で紹介できてしまうのですが、料理にも BonBonの魅力が全方向から表されています。料理によって全く違うテイストのお皿にも注目しながら読んでみてください。

お通し

今回は麻辣スナック。蔡さんがその時々に中国や台湾、香港のものをチョイスしているそうです。

このマットも素敵なデザインです。箸置きはピーナツで、上海の店時代には本物のピーナツを置いて、それもおつまみとして食べてもらっていたそうです。ナイスアイディア!

食事は定番と週替わりメニューがあり、全て手作りです。

メニュー表
こちらも陳さんの書
weekly メニューは手書きで
weekly メニューは手書きで

滷味:ルーウェイ(台湾風煮込み)

滷味:ルーウェイ(台湾風煮込み)
豆腐、手羽先、エリンギ
エリンギ串
エリンギ串 写真:松永悠さん提供

台湾でお酒のあては、まずこれといっても過言ではない、屋台でもおなじみの煮込みです。

和風の器ですが、味はしっかり台湾。八角がいい感じで香ります。食べてしまえば匂いはさほど感じないので、苦手な人でも大丈夫です。

個性的なのは、このかわいい串。食べてみらエリンギでした! コリコリな食感がたまりません。台湾人はエリンギが大好きで、スーパーでもエリンギの茎だけたんまり入って売っています。

エリンギ
台湾のスーパーで。マシュマロじゃなくてエリンギです(笑)

酥炸花枝丸揚げイカ団子

酥炸花枝丸揚げイカ団子
編集長セレクト。台湾定番の練り物です。

大きい団子は弾力があり、噛めば噛むほどイカの旨味がでて食べごたえ抜群。

緑の葉は台湾バジルです。西洋バジルと風味も香りも大分違いますが、素揚げしたものは更に香ばしいです。最初はイカだけで食べて、2口目はバジルと一緒に食べてみてください。

あとこのお皿、よく見ると奥側だけ少し下に曲がっているんです。色も品があります。

からすみ餅

からすみ餅
正面
からすみ餅 横から
横から。お餅にからすみをまぶし、それを薄く切った大根で巻いている

赤と金の縁のお皿の上に上品にのった料理です。

赤いテーブルに赤いお皿が本当に映えます。からすみは台湾の名産で、お土産に持ち帰る人も多いです。ボラの卵を塩漬けにして干したもので、たらこのようなプチプチ感があります。

台湾では大根やにんにく等と一緒に食べるのが定番だそうです。お餅は必然的に噛むので、からすみのプチプチも自然に感じやすくなり、塩味も絶妙で見た目と食感の両方で楽しめる一品です。

鹽酥雞:イェンスージー(台湾風唐揚げ)

鹽酥雞:イェンスージー(台湾風唐揚げ)
和食居酒屋でも出て来そうなスタイル

これも屋台の定番で、台湾で私の大好きな食べ物の一つです。

揚げたては絶品でした! 台湾の味そのものです! 台湾の塩胡椒で味付けしています。台湾の胡椒というと、基本的に複数のスパイスを混ぜたものをいいます。少し甘味もある組み合わせなのですが、それがまたおいしいのです。

手工肉圓(手作りバーワン)

手工肉圓(手作りバーワン)
手工肉圓(手作りバーワン)
写真は蔡さん提供
手工肉圓(手作りバーワン)
肉はあらびき

日本で食べられるところが少ないバーワンがここでも食べられます。庶民的な食べ物ですが、高さのある器に盛り付けられると宮廷料理みたいです…!

厚めでめ弾力がある生地に、中身は肉、筍、椎茸が入り、あっさりした味です。

注文してから台湾伝統家電、電鍋で20分蒸してから提供されます。目の前で蒸してくれるのを待つ時間も楽しいですね。

電鍋
電鍋はBonBonではインテリアの一つ 
電鍋の中
普段は滷肉飯を保温しているが、注文が入ると入れ替える

塔香茄子(茄子のバジル炒め)

塔香茄子(茄子のバジル炒め)

野菜が食べたかったのと、茄子と台湾バジルの組合せは初めて見たので注文しました。

何かアヒージョにも出て来そうな器です。三杯鶏という料理の色にも似ていますが、こちらはお酒を使わず、台湾醤油と胡麻油を中心に味付けしていて、台湾の家庭料理だそうです。

見た目は濃いですが、味は少し甘めです。とろとろの茄子に味が染み込んでバジルがいいアクセントになります。白いご飯にこのソースをかけたら実はおいしかったです。

滷肉飯:ルーローハン(魯肉飯)

滷肉飯:ルーローハン(魯肉飯)
上品に盛り付けられている
滷肉飯:ルーローハン(魯肉飯)
器の色はその時によって違う

八角が程よく香る、締めの滷肉飯です。

これを楽しみにしていました! しかもご飯を赤い器で食べるのは初めてで自分で買うのは想像つかないですが、これを見るとすごいおしゃれですよね。しかも滷肉の色と合う! 

汁は少な目で、台中の味がベースだそうです。滷肉飯は汁だくが売りのイメージもありますが、味がとても洗練されていて、肉と肉の味で真向勝負している感じです。ちょうどいい肉の大きさと甘すぎない味付け。これはランチでも食べられるというので職場が近い人が羨ましいですね。

オレオと黒糖ナッツの春巻き カメルーン白胡椒

オレオと黒糖ナッツの春巻き カメルーン白胡椒
週間メニューなので、その週によってメニューは違う

最後にデザートです。

迷いましたが見慣れないものにしました。でもこれこそが今日の料理の中で蔡さんの真骨頂が表れたものではないでしょうか。

目の前で白胡椒を振って出してくださいます。

カリっと揚げた春巻きを食べると、バナナペーストも入っていました! メニュー名だけでも意外な組み合わせなのに、バナナも入るなんて! でも、温かいバナナと黒糖の甘味にサクッとオレオ、ナッツの食感のアクセント。

甘いだけではなく、胡椒の味も薄い膜のようにわかり、五感で楽しめます。たくさん試作したようで、それ以上に新しい組み合わせに挑戦したいとのこと。蔡さんのアイディアとセンスが、お酒に、料理に、器にも全てに活かされてBonBonができていると改めて感じました。

蔡さんは「ディテール」を大事にしていると何度も言っていました。中国語で「美食(おいしい食べ物)」には味だけではなく、色や香りの意味も含まれていると教えてくださいました。だからこそ店内の細かい部分までを大切にしていると言います。

「変化の速い東京だからこそ、少し立ち止まって、ゆっくり食事をし、お酒や会話を楽しむ場を作りたいと思っています。お店に入った瞬間から、BonBonらしい空気感や時間そのものを感じてほしいです」と話し、女性1人でも気軽に入れるお店も目指しています。

皆さんにも素敵な台湾料理とこの空間を、ぜひ味わいに行っていただきたいと思います。

(aokinapple)

店舗情報

Bon Bon Bistro Tokyo 鳳鳳亭

千代田区神田神保町1-54-6

https://www.instagram.com/bonbonbistro_tokyo

Writer
記事を書いてくれた人

ライターaokinappleさん
aokinapple

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