「ディープチャイナ第1回秘密の食事会」を渋谷の陳家私菜で開催しました

7月30日(土)渋谷の「陳家私菜」(東京都渋谷区神南)で「ディープチャイナ第1回秘密の食事会」がありました。

事後報告になってしまいましたが、この食事会を企画していた6月頃は、広く告知しようと思っていたのですが、7月に入って感染者が急増しました。そこで、今回はSNSに投稿いただいているみなさんなど限られた方にお声かけするのにとどめました。次回こそは、広くみなさんにお声かけして開催したいと思っています。

「秘密の食事会」では、なるべく珍しい料理を体験していただくために、事前にオーナーとメニューの中身を相談しています。はたしてどんな料理が供されたのか。研究会のメンバーで、立教大学観光学部の江上ふくさんが報告してくれました。


陳家私菜は、赤坂、五反田、秋葉原、有楽町、新宿など都内に7店舗を展開する本格中華・四川料理店です。

オーナーはこちら、陳龐湧(Chin ban yu)さん。

陳龐湧(Chin ban yu)さん


「本物の中国料理を食べてほしい」という想いから、日本では手に入らない香辛料やこだわり抜いた食材を使用しており、根強いファンが多い四川料理の人気店です。

「幻の激辛中華G1グランプリ」での受賞もそうですが、今年5月に開催された四川フェスで提供された「頂点麻婆豆腐」の人気はダントツでした。

「幻の激辛中華G1グランプリ」での受賞

店舗の内装は高級感や清潔感があり、落ち着いた雰囲気です。

店舗の内装

今回のコースメニューのテーマは 「四川省各地の地方料理」。

四川料理で私が知っているのはよだれ鶏や麻婆豆腐など。
花椒の痺れとトウガラシの辛さを合わせた麻辣が特徴とされるのが四川料理のイメージですが、地方によって特色あるさまざまな料理があるというのです。一体どんなものなのでしょう。

※四川省の面積は48.5万㎢と、日本(37.8万㎢)よりも大きいのですから、当然といえます。

コースメニューはこちら、全11品。

コースメニュー

順番に料理をご紹介します!

まずは前菜の3品から。

本場四川卤水盛り合わせ


本場四川卤水盛り合わせ

こちらは中華風の煮物です。
「卤水(ルーシュイ)」という、ほのかに香辛料の香るタレが豚タン、ハチノス、タマゴなどに浸み込んでいます。とっても上品な味わいです。

本場成都夫妻肺片


本場成都夫妻肺片

成都を代表する冷菜、「夫妻肺片(フーチンヘイピェン)」。
牛タンやハチノス、心臓、レバーなどの内臓系を煮込み、いったん鍋から取り出したあと、花椒や八角、トウガラシなどで和えた料理です。

パクチーとピーナッツがいいアクセントになり、意外にも上品な味わいです。

四川皇帝よだれ鶏


四川皇帝よだれ鶏

中国語でよだれ鶏は「口水鶏(コウシュイジー)」と書きます。
料理名によだれというのは驚きますが、「大量の花椒で麻痺した口からよだれが出るほどの状態になる」という由来があります。

上にはピーナッツがたっぷりかかっており、よく混ぜてからいただきます。

正宗四川楽山豆瓣東坡肉


正宗四川楽山豆瓣東坡肉

四川省楽山は大仏で有名な観光地。
その地の豆板醤を使った四川風「東坡肉(トンポーロウ)」です。

もともと東方の浙江料理として知られる豚の角煮ですが、四川風に味つけされた一品だそうです。こだわりの四元豚を使用し、クタクタに煮込まれて旨味が凝縮されています。

日本の豚の角煮とは異なる、ローストビーフを何層にも重ねたような見た目です。
私たちの間で「豚の置物がかわいい」と話題に上りました!

会場にいた松永悠さんは「東坡肉というのは、元々宋の時代の大文豪であり、政治家でもある蘇軾(雅号「蘇東坂」)が考案したという言い伝えがある有名な料理です。四川風にアレンジしたとはいえ、ただ辛くなっただけじゃなく、各種スパイスにより複雑で深みのある味になっていました。この中華風煮豚が絶妙に形を保ちつつ、口に入れるとホロホロと崩れていく食感がたまりません。他のメンバーがいなければ、この一皿私が全部いただきたいくらいでした」と話していました。

四川塩幇菜ネギモツ包み揚げ


四川塩幇菜ネギモツ包み揚げ

一見するとちくわにネギを挟んだ和食にも見えますが、その正体はモツでした。
モツにこんな調理法があるとは!
カリっとした食感で、箸が進みます。

陳さんのお話では、四川料理には大きく3つの流派があり、この料理は四川省南部、自貢の「塩幇菜」のひとつだそうです。

「まずは何も付けずに食べてほしい」とのこと。
その後は、3種類の自家製調味料、辣醤(ラージャン) ・香辣醤(シャンラージャン)・五香来(ウーシャンフェン)を付けて味わいます。

そのまま食べても美味しく、調味料を付けると2度も3度も美味しさが楽しめます。

松永さんは話します。「本日の特等賞はこちら! こんなの、食べたことがない!! 丁寧に下処理して揚げることで、モツが香ばしく、サクッとした食感に。中に甘いネギが入り、用意された3種類のソースか香辛料と合わせれば。まさに感動体験」

老成都水煮白身魚


老成都水煮白身魚

「水煮白身魚(シュイジューバイシェンユィ)」は、もともと四川省の東に位置する重慶を中心としたエリア「下河帮」を代表する料理。

白身魚をモヤシなどと一緒に花椒やトウガラシが大量に入った油で白身魚を煮た料理です。
存在感を示すトウガラシと生の花椒のコントラスト。
これぞ四川料理!という高揚感があります。

「まずはスープを飲んで」ほしいとのこと。
いかにも辛そうな見た目から恐る恐るスープを口に含んでみると、あれ、全く辛くありません。肉や魚の旨味が凝縮された優しい味わいで、新鮮な油を使っていることが感じられます。

トウガラシに埋もれて見えませんが、この料理のメインは白身魚。
魚も煮崩れしていないのに柔らかく、ふわふわという言葉が合います。

初めて食べる人には見た目とのギャップが楽しい一品です。

松永さんによると「中国のレストランでこの料理を食べるとき、洗面器大の容器に入れられ運ばれてきます。インパクト最大級! 一度真っ赤に染まった料理をお披露目したのち、店員さんが容器を一度下げ、中にうじゃうじゃ浮いている唐辛子と花椒などを取り除いてから再登場。これでガツガツ食べられるんです。辛みの中に深みあって、決して辛いの一言で片付けられないので、印象に残る一品だと思います」とのこと。

昔の伝統四川エビチリ炒め


昔の伝統四川エビチリ炒め

日本のエビチリではよくケチャップを使用するため、見た目はオレンジ色で甘辛仕立てですが、本場四川のエビチリはほんのり茶色っぽさがありました。

ぷりぷりのエビに感動すること間違いなし。

日本の中華料理は本場のもの異なり、名前は同じでも、もはや別の料理と感じる一品でした。

重慶田舎紅油水餃子


重慶田舎紅油水餃子

重慶の料理は四川省よりもっと激辛と言われています。

水餃子に辣油や豆板醬などをかけた激辛味と聞いていましたが、この時点ですでに口全体が痺れていたからでしょうか。辛さよりもむしろモチモチの皮で包まれた肉の旨さが体に染みる、優しい味わいでした。

名物頂天石焼麻婆豆腐


陳家私菜の銘品、麻婆豆腐!

今年5月、中野セントラルパークで開催された「四川フェス」には「麻婆豆腐」をキーワードに11店が集結しましたが、その中で陳家私菜が4年連続売り上げナンバーワンの人気ぶり。

豆板醤のふるさと四川省成都市郫都区(旧郫県)産の郫県豆瓣を使った石焼麻婆豆腐で、こだわりの一品だそうです。

ねっとりしたソースとつるっとした豆腐が絡み合います。
石焼用の器でグツグツ煮え立った麻婆豆腐が各テーブルに届くと「おー、来たぞ来たぞ」という歓声があがりました。

汁無自家製麻婆刀削麺


汁無自家製麻婆刀削麺

メインディッシュのラストを飾るのは、陳家私菜で人気メニューの「刀削麺」。
汁なしでコシがあるため、フィットチーネのスパゲティーのよう。

ピーナッツが利いてマイルドな味わいです。

最後はデザートで締めます。

自家製花椒杏仁豆腐


自家製花椒杏仁豆腐

デザートには、杏仁豆腐。

甘い杏仁豆腐だろうと思いながらスプーンを口に運んだらビックリ。
口の中に花椒の風味が広がりました。

中国ではスイーツに花椒のフレイバーをよく使うそうです。本心をいえば、デザートくらいは優しくスィートな感じで終わりたかった気もしましたが、そうはいかないのが、この「秘密の食事会」です。

最初から最後まで、これまで私が口にしたことのない四川料理づくしでした!

全11品食べ終わって感じるのは、陳家私菜の食材や香辛料へのこだわりです。陳家私菜の料理はどれをとっても辛味だけでなく、複雑な香辛料が引き出す食材の旨味が存分に感じられます。

複雑な香辛料

そして、四川料理と一言でいっても、そこにはさまざまな料理があるということを知りました。この会には、中華料理に詳しい方々が集まっていると聞いていましたが、「これは初めて食べる!」という声も多く聞かれました。

そして、今回のメニューのラインナップでお酒が進まないわけがありません。

夏の暑さと四川料理の痺れでお酒も飲む手が止まりません!
しかもこの日は、青島ビール、白酒に中国ワインまで、お酒もより取り見取りでした。

実は、私は翌朝、吐く息から白酒の匂いがしたのに、自分でも驚いてしまいました。

ところで、今回は第1回ということは、2回目もあるということでしょうか?

今回参加できなかった方は、ぜひ次回にご参加ください!

撮影/山端拓哉

店舗情報

陳家私菜 渋谷店

渋谷区神南1-16-3
ブルーヴァールビル B1F
03-3464-8801
https://chin-z.com/

Writer
記事を書いてくれた人

江上ふく

プロフィール

代表から少し長めの追加の話

江上さん、もちろん2回目もありますよ。次回は10月8日(土)を予定しています。お店やメニューの内容が決まったら、このサイトでも告知します。

さて、今回の「ディープチャイナ第1回秘密の食事会」では、都内の「ガチ中華」のオーナーのみなさんも招待していました。

おなじみ味坊グループの梁宝璋さんと専務の林強さんです。

また蒸気石鍋&海鮮という新しいメニューで「ガチ中華」を盛り上げている食彩雲南の牟明輝さんや共同経営者でもある張さんもいらっしゃいました。

食彩雲南の牟明輝さんや共同経営者でもある張さん

実は、食事会にはたくさんの協賛会社がありました。まず青島ビールなどインポートビールの輸入販売会社の池光エンタープライズさんです。

青島ビール

そして、今回の食事会のもうひとつの目玉といえるのが中国ワイン。輸入販売会社パンダワインの青山宗典さんです。

輸入販売会社パンダワインの青山宗典さん
用意してもらった銘柄

今回用意してもらった銘柄を紹介します。

2013 YANG YANG INTERNATIONAL WINERY(左)

  • 寧夏陽陽国際酒庄 希望小売価格:3,200(税込)
  • 産地:中国寧夏省賀蘭山東麓
  • ブドウ品種:蛇龍珠(シャーロンジュウ) 100%
  • 中国の地ブドウシャーロンジュウ、自根ブドウの持つスパイスのニュアンス。

2015 Chatau YIZON(中)

  • 美好 希望小売価格:3,520(税込)
  • 産地:中国寧夏省賀蘭山東麓
  • ブドウ品種:カベルネ=ソーヴィニョン 100%
  • 中国大使館御用達の逸品、果実味と甘味のある味わい。

2017 Fei Tsui (右)

  • 長和翡翠酒庄 希望小売価格:7,800円(税込)
  • 産地:中国寧夏省賀蘭山東麓
  • ブドウ品種:カベルネ=ソーヴィニョン 100%
  • サクラアワーゴールドメダル獲得。ベリー系の濃厚な香りと力強さ。

青山さんによると「ご提供した中国ワインは、四川料理に合わせた中国固有の地ブドウ蛇龍珠(シャーロンジュウ)とカベルネソーヴィニョンを2アイテムにさせていただきました。お客様の反応は蛇龍珠が良かったように思えました。中国ワインがいかに中華に合うかご理解していただけたと感じた」そうです。

会場にいた放送作家の島津秀泰さんは「ガチ中華には中国ワインがよく合う。特に四川料理のような濃厚な味わいには、強めの酒がしっくりくるものだなと身を以って知った」と話していました。

中国ワイン

松永さんも「中国ワインといわれてもピンとこない人も多いかもしれませんが、ドイツの植民地だった山東省の青島など、実は上質なワインを作るのにピッタリな場所があるんです。今日飲んだのは、シルクロードにある砂漠地域で作ったもの。温度差が激しく、雨量も少ないため、フランスなどに負けないくらいワイン作りに適しているので、フランス資本もどんどん入っているとか。ほどよく濃厚な味わいで飲みやすく、万人ウケするワインだと思いました」と話していました。

最後は「ガチ中華には白酒!」、日和商事の小野寺晃さんです。

同社は「一般社団法人 日本中国白酒協会」を設立し、白酒の普及に取り組んでいます。

今回の食事会のために、さまざまな白酒を提供いただきました。

さまざまな白酒

左から以下の銘柄です。

また若者向けの飲みやすい「江小白」もご用意いただきました。

なかでも人気が高かったのは、同社が今年3月から輸入を始めた「沱牌六粮(だはいろくりょう)」という銘柄だったようです。

沱牌六粮(だはいろくりょう)

ウラジオストク出身のアレックスさんは「料理が強いぶん、ぼくはこの銀色の白酒(沱牌六粮)がすごく料理に合って美味しく、感動しました」と話していました。

松永さんも「子供の頃から大人たちが美味しいと飲んでいるのを見ていた汾酒(ふんしゅ)を久々に口にして幸せでした。甘くて濃厚、四川料理に100%合います」といいます。

小野寺晃さんによると「沱牌六粮は、四川省遂宁市射洪県沱牌鎮で造られています。この地では古くは明代から酒造りが行われていました。沱牌六粮その伝統を受け継ぐお酒です。

名前の六粮は原料の穀物に、高粱、トウモロコシ、小麦、糯米、米、大麦の六種類が使われていることに由来します。濃香型の白酒でフルーティな香りが特徴です。沱牌の沱牌曲酒は1989年に第五回全国酒評酒会で金賞を獲得し、『中国名酒』と称されています」。

また、この楽し気なパッケージの白酒は「果立方(ぐぅりーふぁん)」といいます。

「果立方は、重慶の白酒メーカ江小白が出しているブランドです。高粱酒ベースに果汁を配合した低アルコールのフルーツフレーバーのお酒です。誕生した背景には中国の若者の低アルコール志向があります。現在、味のラインナップは桃、白ブドウ、フルーツMIX味の3種類です。ドン・キホーテさんやビックカメラさんの一部店舗でお買い求めできます」

以上がぼくからの追加の話です。

来場したみなさんはとても喜んでいただけたようで、うれしく思います。先ほどちょこっと触れましたが、次回は10月8日(土)を予定しています。詳細が決まったら、今回は広く告知します(さすがにもうこの頃はコロナも収束していることを願いつつ)。

※第2回食事会の概要が決まりました。こちらをご覧ください。

https://www.facebook.com/groups/tokyodeepchinasociety/permalink/490733426147042

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